NATO事務総長、ロシアの戦争支える中国に「経済的代償」検討すべきと

スミ・ソマスカンダ、ティファニー・ワートハイマー BBCニュース

米ワシントン訪問中の北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長はBBCに対して、ウクライナに対するロシアの戦争を中国が支援し続けるならば、中国がどのような「経済的代償」を払うべきか、欧米諸国は検討すべきだと述べた。

ストルテンベルグ事務総長は、中国がロシアの戦争遂行を支援しながら、同時に欧州諸国との正常な関係を維持しようとしており、両方の「いいとこどりをしようとしている」とBBCの単独取材で述べた。

「こんなことは長期的にはうまくいかない」と、ストルテンベルグ氏は述べた。

事務総長は「中国が提供する超小型電子部品(マイクロエレクトロニクス)は、ウクライナで使うミサイルや武器をロシアが作るうえで不可欠」なものだが、「同時に中国は、欧州とNATO同盟諸国との正常な経済関係を維持しようとしている」と指摘。

ロシアを支援する中国にNATO加盟国はどう対応するのか質問されると、制裁の可能性について「話し合いを続けている」と事務総長は答え、「もし中国が行動の仕方を変えないのなら、いずれかの時点で、何らかの経済的代償を、私たちは検討すべき」だと述べた。

ストルテンベルグ氏は「ロシアは現在、各地の権威主義的な独裁指導者との関係を強めている」として、イラン、中国、北朝鮮との関係強化を指摘した。事務総長によると、北朝鮮はロシアに砲弾を送り、その見返りにロシアは北朝鮮のミサイルと核開発計画のため、先端技術を提供したという。

「つまり、ウクライナに対するロシアの侵略戦争を、北朝鮮が手助けしている」のだと、事務総長は述べた。

中国のロシア支援についてはすでにアメリカ政府が5月、中国と香港を拠点にする約20社を対象にした制裁を発表した。

中国はロシアとの経済関係について、人命を奪う武器を売却しているわけではないと主張し、「軍民両用技術の輸出は法や規制に沿って、慎重に取り組んでいる」と説明している。

欧米からの制裁が相次ぐなか、ロシアは中国、北朝鮮との関係を深めている。ウラジーミル・プーチン大統領は5月の中国訪問に続き、18日には北朝鮮を訪れる。

核兵器を持つ軍事同盟

ジョー・バイデン米大統領との会談に先立ち、ストルテンベルグ氏はまた、国防費を国内総生産(GDP)比2%以上にするというNATO目標を、加盟31カ国のうち20カ国以上が2024年に達成する見通しだと明らかにした。

「これはヨーロッパにとってもアメリカにとっても良いことだ。

ストルテンベルグ氏はさらに、ロシアや中国の脅威拡大への抑止力としてNATOが配備可能な核弾頭の増加を検討しているかもしれないと、16日付の英紙テレグラフで示唆したことについて、説明した。

この発言については、ロシア政府のドミトリー・ペスコフ報道官が「緊張をいっそう激化させる以外の何物でもない」と批判している。

こうした批判に対して事務総長は、自分の発言は、NATOが核兵器を持つ軍事同盟であって、ひとつの加盟国への攻撃は「同盟全体からの反応を引き起こす」という「一般論」を示したものに過ぎないと述べた。

「NATOの目的は戦争を戦うことではなく、戦争を防ぐことにある」と、ストルテンベルグ事務総長は話した。

(英語記事 China should pay for propping up Putin's war - Nato chief

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