『ガールズバンドクライ』はみんなが“中指”を立ててきた物語 第11話の神回に泣いた

毎週、「ほとんどの作品を観ている」アニメライター・はるのおとによる週刊連載「【アニメ】神回・オブ・ザ・ウィーク」。6月10日から6月16日に放送された分から注目の“神回”をピックアップ!(編集部)

アニメの視聴環境的には、好きな作品を好きな時間に観られる配信で楽しむ人のほうが多いのでしょうが、リアルタイムでの視聴もたまにはいいもの。父の日の晩に『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』でパウロとお母さんがあんなことになった(戦闘の緊張感もすごかった)と思っていたら、『じいさんばあさん若返る』最終回でも夫婦があんなことになり、その直後に僧侶枠で『夫婦交歓~戻れない夜~』が再放送されるんだから、巡り合わせというのはすごいなあと。

というわけで、今回はいよいよ春アニメが最終回を迎えつつあるなかで輝いた神回を紹介します。

●残り2話、何するんだ……と思わされる最終回感『ガルクラ』第11話

もう当連載では殿堂入り扱いで触れないようにしようと思っていましたが、トゲナシトゲアリがフェスに出演する『ガールズバンドクライ』第11話「世界のまん中」はさすがにすごかった。MV的な演出を交えたライブシーンや番組としての定型崩し(アイキャッチがもう)をはじめ、触れたいことはたくさんあるのですが、ここでは“触れなさ”について。

これまでトゲナシトゲアリメンバーのうち、主人公の仁菜はもちろん、桃香や智の過去や葛藤からの成長は描かれてきました。そしてこの話の中ではすばるが祖母に秘密を打ち明けたことを仁菜に報告したり、これまで台詞の端々で感じられてきたルパの過去がほんの少しの回想で描かれたりと、説明し過ぎず、でもしっかりと感じることができたのです。

それが極まっていたのがライバルバンドであるダイヤモンドダストのライブ。これまでアイドルバンドと扱われてきたものの今回披露した新曲はかなり硬派な曲で、フロントマンのヒナも従来からのメンバーも「アイドルバンドで終わらない」という意思をしっかり持っていたんだと、そこに至るまでの過程はさほど描かれていなくても一発でわかってしまうようなパフォーマンス。『ガルクラ』って仁菜だけでなく、みんなが“中指”を立ててきたお話だったんだな~と感じ入りました。泣けた。

●ク・イック ク・イック♪『魔王学院の不適合者II』第21話

本当は『ガルクラ』のライブがすごかったという話を延々と書きたいのですが、やはりこちらのライブにも触れざるをえません。『魔王学院の不適合者II ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』第21話「魔王讃美歌第6番『隣人』」では、大体クライマックス的ないいところで主人公のアノス様を強烈に支持するアノス・ファンユニオンの面々が合唱するというのが恒例行事になっていますが、今回もそれ。色々あって聖歌隊として歌唱することになるものの、賛美歌とは名ばかりで彼女たちが歌うのは以下のようなノリノリな曲。

このノリが周囲に伝播していく様子は「彼女たちがフェスに出ていてもトゲナシトゲアリくらいに爪痕を残せただろうな」と思わされるものでしたし、Bパートで未来を限定する力を持つ未来神ナフタをアノス様が「極獄界滅灰燼魔砲(エギル・グローネ・アングドロア)」というすごい名前の魔法で倒すさまなど“らしさ”満点。「『魔王学院の不適合者』を観たことがない」という人でも、その面白さの8割くらいは感じられそうな充実の1話でした。

●最終回に向けて期待値爆上げ中『アストロノオト』第11話

最後はやや特殊ですが。あすトろ荘というアパートを舞台に料理人の拓己と大家のミラ(宇宙人)を中心としたラブコメが展開されていた『アストロノオト』。しかし最終話目前のこのエピソードの終盤で、いきなりあすトろ荘がロボットに変形し、それに搭乗した拓己とミラが、地球を攻撃しようとする宇宙人を迎え撃つことに!……途中で視聴をやめた人は「?」となるかもしれませんが、実際そうなので仕方ない。

それで本作、キービジュアルに「最終話で全部いただきます。」というキャッチコピーがあり、放送前から公式で「最終話では……。まだネタバレで言えませんが、ラブコメ作品、いやアニメ作品の中でも今までほかに類をみないとんでもない結末となっております」というメッセージがあるなど、ものすごい煽りようでした。このままロボットアニメ路線に舵を切るのか、それともさらなる超展開が待っているのか。次回の連載で触れられるような神回の放送に期待が高まります。
(文=はるのおと)

© 株式会社blueprint