重病の子どもと家族を支援へ 東北初こどもホスピス設立を目指す仙台市のNPO法人

小児がんなどの重い病気の子どもに遊びや学びの機会を提供し、家族も支援するこどもホスピスを東北で初めて仙台市に設立しようと取り組むNPO法人です。

元看護士や子どもを亡くした遺族などで作るNPO法人、宮城こどもホスピスプロジェクトは仙台市でのこどもホスピス設立に向けて活動しています。
宮城こどもホスピスプロジェクト名古屋祐子理事「こういう子たちが地域に当たり前にいることができるし、地域の人たちも何の違和感もなく一緒に過ごせる場所だったらそれは理想」

【画像】東北初の設立を目指す

こどもホスピスは、患者の看取りの場ではなく治療や療養中心の生活を送る子どもとその家族が楽しく豊かに生きる場所を提供する施設です。病院に併設しない形のこどもホスピスは、国内では大阪市と横浜市の2カ所だけです。

2021年に横浜市に開設したこどもホスピス、うみとそらのおうちは1日単位で利用できて日帰りの利用で自由に遊べるほか寝泊まりできる部屋や家族風呂などもあります。開設以来2年半で延べ1500人以上が利用してきました。

先天性の心疾患を抱える原チカさん(17)は、幼い頃から入退院を繰り返し今は通信制の高校に通っています。病院と家で過ごす時間が多くこれまでは人と話す機会が少なかったチカさんにとって、普段言えない気持ちを吐き出せる貴重な場になっていると母親の孝美さんは感じています。
母親原孝美さん「高校生なりに葛藤があったり自分の不安だったり、でも親に言うと心配するし、でもその気持ちを話したいという時に、スタッフさんと話して聞いてもらったりっていうこともさせていただいただいています」

ここでは、看護師や保育士の資格を持つスタッフや遺族など10人が利用者をサポートしています。先天性の心疾患を抱える吉田桃さん(18)は、料理が大好きです。
スタッフ「きょうは桃ちゃんパン焼いたんだよね、朝ね?それでパンでピザトースト。あとでバジルも取りに行こう」
桃さん「ナス」
スタッフ「ナス使いたい?」

【画像】うみとそらのおうち(横浜市)

うみとそらのおうちが目指すのは、子どもと家族がまた来たくなる場所です。
うみとそらのおうち田川尚登代表理事「病気の子どもだけではなくて、きょうだいや両親含め家族全体を支えていく。それにスタッフが寄り添って楽しい時間づくりをお手伝いするというような、そういう居場所であり続けたいと思います」
原孝美さん「やっぱり1日1日を大切にしてきたいし意味あるものにさせてあげたいし、悔いのないようにやってほしいので、それをかなえてくれる場所かな」

小児がんなどの生命を脅かす状態にある子どもは全国で約2万人、宮城県には約270人いると推定されています。
仙台市でのこどもホスピス設立を目指すプロジェクトの鈴木盛登さん(51)は13年前、次女の十和さん(当時9歳)を白血病で亡くした経験からプロジェクトに参加しました。
宮城こどもホスピスプロジェクト鈴木盛登副代表「3歳で発病して6年間、再発して入院して退院してってもう5回くらい入退院したんですかね。外泊OKですよ病院から出てもいいですよと言われても行く所が限られるので、髪の毛が無い女の子とかだとやっぱりすごく見られますし、本人も外に出たがらないし遊びに行く所が無いんですよ。
こどもホスピスがあれば理解してくれる人がいますし、そういう子も遊びにくる所だし普通に遊べる場所っていう所でいいなって思ったんですよね。あったら良かったなって」

鈴木さんは、病気の子どもだけではなくきょうだいの支援や残された家族の悲しみを和らげるグリーフケアの観点からも設立の必要性を訴えています。
宮城こどもホスピスプロジェクト鈴木盛登副代表「(きょうだいには)やっぱり寂しい思いをたくさんさせたんですよね。十和にばっかりついてしまうので、きょうだいとかが遊べる場所とかそういった状況を分かってくれる。そういう場所とかがあったら随分違ったんだろうなと思ったり。
十和ちゃんが亡くなった後、僕らはぽっかりと穴が開いてしまって何で頑張っていったらいいんだろうって精神的に脆弱になりましたし。僕はだから、きょうだいと親御さんのために作りたいっていう思いが強いです」

【画像】家族のために設立を

こどもホスピスの実現には課題があります。建設や運営は基本的に寄付で賄われているため、資金集めや拠点確保が難しいのが現状です。横浜市のうみとそらのおうちの場合、市が無償で市有地を30年間貸与しているほか看護師1人分の人件費を補助しています。
うみとそらのおうち田川尚登代表理事「行政と連携を取りながら、こどもホスピスの必要性をアピールして地域から支えられる居場所になっていただければと思います」

宮城こどもホスピスプロジェクトは現在、仙台市と話し合って拠点場所を模索し建設費については寄付を募っています。東北初のこどもホスピス設立を目指して。
宮城こどもホスピスプロジェクト鈴木盛登副代表「病院と家だけではなくて第3の家みたいなものとして考えているのがこどもホスピスなので、社会全体で地域全体で関心持っていただいて。一緒にこういったお子さんとご家族と共に考えていただけるような社会になったら、すごく素敵だなと思ってるんで」

こどもホスピスをめぐっては設立を求める動きが全国各地で広がっていて、こども家庭庁はこどもホスピスの取り組みに関する実態調査を2023年度に初めて実施しました。
宮城こどもホスピスプロジェクトは設立に向けた実績を作ろうと、4月から仙台市青葉区の教会で川平のおうちを開設し、毎週土曜日に病気の子どもと家族が過ごす場所を提供しています。前日までに申し込みが必要です。

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