元全米女王ラドゥカヌがケガからの復帰途上によりパリ五輪を欠場。「出場するのには、まだふさわしい時期ではないと思った」<SMASH>

女子テニス界のニューヒロインとして注目を浴びている21歳のエマ・ラドゥカヌ(イギリス/世界ランク165位)が、約1カ月後に開幕を迎えるパリ五輪の出場辞退を表明したと、海外メディア『tennishead』が伝えている。

両手首と足首のケガを克服し、今年1月に約9カ月ぶりのカムバックを遂げたラドゥカヌ。復帰後も苦戦が続いていたものの最近は徐々に復調しており、4月の「ポルシェ・テニス・グランプリ」(ドイツ・シュツットガルト/クレー/WTA500)ではベスト8へ進出。しかし予選から出場予定だった先の四大大会「全仏オープン」は「今年の残りに向けて調整するチャンスを得たい」という理由で欠場し、一足早くクレーシーズンを終えていた。

テニスツアーは早くも芝シーズンがスタート。その初戦としてラドゥカヌは先週行なわれた「ロスシー・オープン」(6月10日~16日/イギリス・ノッティンガム/芝コート/WTA250)に本戦ワイルドカード(主催者推薦)で出場しベスト4まで勝ち進んだ。

例年にはない芝からクレーへの変則的なサーフェス移行が待ち受けているとはいえ、本来のプレーを取り戻しつつある今ならパリ五輪も期待できそうだが、やはりまだフィジカル面には不安があるようだ。

21年の全米オープン(アメリカ・ニューヨーク/四大大会)を制覇したラドゥカヌは、四大大会と五輪の優勝経験者に国際テニス連盟(ITF)が設けている枠で、パリ五輪出場が認められるはずだった。だがイギリス代表のチームリーダーを務めるイアン・ベイツ氏によれば、ラドゥカヌは「夏に五輪でプレーするのは適切なタイミングではないと感じている」とのこと。まだラドゥカヌが復帰途上であることに触れつつ、こう続けた。
「今回の辞退は明らかに、彼女へのオリンピック出場の通知が遅れたことが原因としては大きいと思う。それに今年は芝からクレー、ハードとサーフェスが(目まぐるしく)変化するし、誰もが彼女の経歴や昨年の両手首の手術についても知っているからね」

SNS上では「国を代表してプレーしたくないのではないか」といった批判も上がっている中、五輪出場を見送ることにした経緯については、ラドゥカヌ本人がベイツ氏のコメントをなぞる形で次のように説明している。

「私は国のためにプレーするのが大好きで、ビリー・ジーン・カップ(国別対抗戦)でもそれは明らかだったと思う。そこで私は本当に(全力で)戦ったし、とても楽しめたわ。でもパリ五輪に出場するのには、まだふさわしい時期ではないと思った」

「次回のオリンピックには出場できることを本当に願っているわ。(変則的な)サーフェスの移行もあるし、昨年の手術から回復したばかりの現時点でリスクを冒す価値はないと思う。代表チームの幸運を祈っている。気取った態度を取っているとかではなく、自分の身体と健康を優先しているだけのことよ」

確かにラドゥカヌの年齢を考えれば、パリ五輪に無理にこだわる必要はないだろう。その代わりと言っては何だが、ぜひともツアーで試合を重ねながら調子を上げていってほしい。

文●中村光佑

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