加害者が親族「犯罪被害者給付金の減額は違法」 神戸地裁に提訴 伯父が放火、小学生兄弟殺害

神戸地裁=神戸市中央区橘通2

 2021年11月、兵庫県稲美町の自宅に火を付けて小学生の兄弟2人を死なせたとして、殺人罪などで伯父が有罪判決を受けた事件で、被害者と加害者が親族であることを理由に犯罪被害者給付金を減額した県公安委員会の裁定は違法だなどとし、兄弟の両親が取り消しを求めて神戸地裁に提訴したことが分かった。18日に地裁で第1回口頭弁論が開かれた。

 事件は21年11月19日に発生。伯父の松尾留与被告(54)は自宅に火を放ち、おいの侑城さん=当時(12)=と眞輝さん=同(7)=を殺害した罪に問われ、今年2月に神戸地裁姫路支部で懲役30年(求刑死刑)の判決を受けた。検察側は控訴している。

 訴状によると、兄弟の両親は22年8月に犯罪被害者等給付金支給法(犯給法)に基づき給付金を申請。支給額を決める県公安委は同10月、加害者と被害者の間に「3親等内の親族関係がある」とし、同法の施行規則で兄弟1人当たりの算定額(320万円)をそれぞれ3分の1に減額する決定を出した。

 原告側は給付金制度の「例外規定」により、親族関係が破綻していたと認められる事情がある場合などには減額されないとし、「19年5月以降、家族と加害者は全く交流がなかった」と主張。県公安委の決定は違法だとし、減額に関する施行規則についても、憲法が保障する法の下の平等に反するなどと訴えた。

 神戸新聞の取材に原告側は「給付金制度が遺族に対して平等でなく、怒りの気持ちがある。事件で被った苦しみに寄り添う支援制度であってほしい」と話した。県警監察官室は「法令にのっとり適正に判断が行われたと考えている」とした。

© 株式会社神戸新聞社