韓国で中国への懸念が台頭?

宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2024#25

2024年6月17~23日

【まとめ】

・日中韓「三国協力」が始まったのは25年前で、13年前にはTCS(三国協力事務局)という国際機関まで出来ている。

・日韓関係改善には目覚ましいものがあるが、いつまで続くのかが最大の関心事。

・韓国内でも中国への懸念を公言する向きが増えていると報じられてきたが、本当にそうなのか。

この原稿は未明のソウルFour Seasonsホテルで書いている。韓国の首都は久しぶりだが、今回は2024IFTC(日中韓三国協力国際フォーラム2024で何か喋るよう招待されてやって来た。そう言えば、コロナ禍のためにもう何年も来ていないなぁ。幸い、韓国の国立外交院でも講演をさせてもらうことになった。誠に有難いことである。

IFTCって何だ?日中韓三国協力なんてやっているの?という人も少なくないだろう。実は「三国協力」が始まったのは25年も前の話で、13年前にはTCS(三国協力事務局)という国際機関まで出来ている。その本部はソウルにあり、事務局長は持ち回りで日中韓の外交官が務めている。あまり目立たないが、重要な国際機関だ。

そこでの議論は来週ご紹介するとして、今回はソウルでの筆者の関心事について書いておきたい。やはり第一は日韓関係最近の両国関係改善には目覚ましいものがあり、実に有難いとは思うのだが、これが一体いつまで続くのかが今の最大の関心事だ。続いては、米韓関係、特に、安全保障面での韓国の役割の変化も気になる。

第三は、中韓関係の行方だ。最近は韓国内でも中国への懸念を公言する向きが増えていると報じられてきたが、本当にそうなのか、それはどの程度戦略的なものなのか。安全保障面での日米韓の連携強化との関連でも気になるところだ。といっても滞在は2泊3日で、今回はそこまで手が回らないかもしれない。

実は今回最も期待しているのが、韓国の若者の動向を皮膚感覚で知ることである。筆者の持論は「韓国の386世代=日本の70年安保反対・新左翼」であり、日本では後者が「後期高齢者」となり既に第一線を退き始めているのに、前者はまだ50代が元気いっぱいだから、今後20年間は日韓関係改善はない、というものだ。

これまでは、こうした仮説で何とか説明できたかもしれないが、今は自信がない。特に、韓国の若い世代が何を感じ、何を求め、どう行動するかにとても興味がある。とは言っても、こちらは70歳を過ぎた「ジジイ」だから、誰も相手にしてくれないかもしれないな。今晩か明日の晩には、若者の生態を「物見遊山」しに行こうと思う。

偶然ではあるが、18日から露大統領が国賓として北朝鮮を訪問するらしい。露政府はプーチン大統領と朝鮮労働党総書記との首脳会談が19日に行われ、「包括的戦略パートナーシップ」を結ぶと発表、早速内外メディアは「軍事面や経済面の協力深化が盛り込まれる可能性」があると報じている。

報道によれば、今回の訪朝には外相・国防相など主要閣僚も同行、安全保障、経済、エネルギーなどを議題に閣僚を含む拡大会合のほか、通訳だけを交えた首脳同士の1対1の会合も行い、会談後、報道向けの声明を発出する予定だという。ふーん、それにしてもロシアも落ちぶれたものだ。戦争はかくも国家を疲弊させるのか。

続いては、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。

6月18日 火曜日 米国務長官、ワシントンでNATO事務総長と会談

中国首相、4日間の豪州公式訪問を終了

露大統領、北朝鮮訪問?

6月19日 水曜日 アルゼンチン大統領訪仏、首脳会談

カナダ首相、NATO事務総長と会談

ブラジル中央銀行、 金利決定

露大統領、ベトナム訪問(20日まで)

6月20日 木曜日 インドネシア中銀、金利決定

6月21日 金曜日 独首相、訪独中のハンガリー首相と会談

6月23日 日曜日 独首相、訪独中のアルゼンチン大統領と会談

6月24日 月曜日 欧州評議会、夏季セッション開始

最後にいつもの定番のガザ・中東情勢を書いておく。先週はガンツ前国防相が戦時内閣から離脱したが、今週ネタニヤフ首相はその戦時内閣を解消したそうだ。では戦争に関する決断は誰がするのかと思ったら、安全保障内閣が引き継ぐのだという。バカバカしい、それでは、結局、何も変わらないではないか。

  • ガンツの戦時内閣離脱でも、ネタニヤフは政策変更の構えを見せていない
  • 先週書いた通り、連立政権を壊したくないネタニヤフは頑張るつもりのようだ
  • 停戦合意案についての期待は消えつつあるのか、「悪魔は詳細に宿る」のだ
  • 最終的には、誰がガザを統治するのかが最大のポイントであり続ける
  • 「期待すると裏切られる」のが中東である

今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

トップ写真:日韓首脳会談 令和6年5月26日 韓国・ソウル

出典:首相官邸

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