広がるクーリングシェルター指定 県内8市町、他も準備急ピッチ

クーリングシェルター設置を知らせるポスター=玉野市立図書館

 災害級の暑さへの備えを促す「熱中症特別警戒アラート」の運用が今季から始まったのを受け、冷房が効いて誰でも一時避難できる「指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)」を設置する動きが岡山県内で広がっている。

 環境省が市町村に確保するよう求めており、山陽新聞社の集計によると、岡山、井原市など8市町が既に指定したほか、残る自治体も急ピッチで準備を進める。熱中症による健康被害が近年深刻化する中、住民の安全安心につなげる狙いだ。

 ただ、現時点で指定は公民館や図書館といった公共施設に偏っており、スーパーや薬局など民間施設の協力がどこまで得られるかは未知数。制度自体の周知不足も課題となっており、特別アラートが発表された場合の混乱を危惧する声も上がる。

 熱中症特別警戒アラートの運用開始に合わせ、4月24日から指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)を設置した岡山市。5月末時点で市役所や公民館、図書館といった公共施設56カ所を指定しており、開館時間内であればロビーや共用スペースなどで休憩できる。

 対象となる施設名や開放可能日、最大受け入れ人数などは市ホームページで公表し、クーリングシェルター指定を知らせるステッカーも各施設に配布予定。岡山市の担当者は「アラート発表時には、シェルターを気兼ねなく利用してほしい」と話す。

 暑さが厳しさを増す6月に入り、岡山県内の他の市町村でも指定が相次ぐ。17日までに井原市が18施設、玉野市が13施設、高梁市が5施設、瀬戸内市が4施設、久米南町が3施設、美咲町が5施設を選定した。新見市は18施設を指定し、7月から運用を始める方針。倉敷、美作市や早島、矢掛、鏡野町は7月中の確保を目指し準備を進める。

 残る市町村も本年度中の整備を検討するが、指定は努力義務のため、「庁内の調整が必要」(赤磐市)「他の自治体の事例を参考にしたい」(吉備中央町)などの理由で具体的な時期までは決まっていないという。

 また、現時点で指定されたのは全て公共施設で、岡山、玉野市などは民間施設にも参加を呼びかけるが、協力は得られていない。岡山市の最大受け入れ人数は56施設で計約1200人にとどまり、担当者は「受け皿を増やすには民間施設の協力が欠かせない」とする。

 制度の周知不足を懸念する声も少なくない。ある自治体の担当者は「周知が不十分なまま開設すると、避難が義務づけられていると勘違いされて混乱が生じる恐れもある」と危惧する。倉敷市は公式アプリなどを活用して制度の概要を知らせる方針で、担当者は「丁寧に周知を進めたい」とする。

 県健康推進課は「県内の状況を把握しながら情報共有し、必要な対策を取ってもらえるよう促したい」としている。

 熱中症特別警戒アラート 気温や湿度などから算出する「暑さ指数」が都道府県内の全観測地点で35以上になると予想される場合、前日午後2時ごろに発表する。今年は10月23日まで運用する。発表時に市町村は公共、民間施設を対象として事前に取り決めたクーリングシェルターを開放する。

クーリングシェルターを周知するのぼり=井原市役所

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