米原論「火消し」に躍起 与党整備委で委員長

北陸新幹線の敦賀以西ルートを議論した与党の整備委員会=国会内

  ●具体的な工費、工期焦点に

 「米原の問題は、もう決着済みの話だ」。北陸新幹線の大阪延伸を議論するため開かれた18日の与党整備委員会は冒頭、公明党の委員長代理がこう発言するなど、「米原転換論」への警戒感があらわになった。沿線の石川、富山に加え日本維新の会も米原への再考を求める状況に、「小浜」を推す西田昌司委員長は「この先、米原は議論しない」と火消しに躍起。ただ、「小浜」には財源に加え、京都の同意という障壁が残る。早期に解決できなければ、ルート見直しを求める声はさらに大きくなりそうだ。

 「米原ルートは、工期が短く、工費が安い。それはその通りだ」。18日、日本維新の会が米原転換を求める提言書をまとめたとの情報は与党整備委メンバーに瞬く間に伝わり、西田氏も委員会後、提言書に目を通した上でこう語った。

 ただ、西田氏は強硬な「小浜」論者。「米原」のメリットに一定の理解を示してみせた後は、北陸新幹線が東海道新幹線に乗り入れできないといった課題を次々と挙げ、「過去に我々が検討した域を出るところは何もない」と、小浜の優位性をまくし立てた。

 そもそも「米原」は、2016年の与党整備委で「小浜」と共に最終候補に残った。ただ、当時の試算では、料金や所要時間で「小浜」に劣る点があるとされ、さらには北陸新幹線と東海道新幹線では脱線・逸脱防止装置に違いがあることから安全上の課題が指摘され、見送られた経緯がある。

 この日の委員会では、委員長代理を務める公明党の佐藤茂樹衆院議員が「さまざまなところで米原という声があるが、なぜ断念せざるを得なかったかをしっかりと確認したい」とあいさつ。西田氏の差配により、「米原」での整備が難しい点を国土交通省側があらためて説明した。小浜を前提に議論を加速化させていくことに、石川の岡田直樹自民参院幹事長代行、佐々木紀衆院議員を含むメンバーから異論は出なかった。

 だが、石川をはじめとする沿線の議会や経済団体からは、「米原が現実的」との意見が吹き出しつつある。これについても取り上げられ、事務局長に就いた佐々木氏は「米原の声が上がるその心は、早く関西につないでほしいからだ。とにかく小浜の工費や工期の調査結果を早く示すことが重要だ」と訴えた。

 「小浜」は長大トンネルをはじめ、難工事が想定されることから、岡田氏は「不確定要素が多い。入念に素早く調査してほしい」と国交省に注文を付けた。

  ●酒造エリアに影響

 この日の委員会では、地下を想定する京都駅やトンネル工事により懸念される地下水への影響が、京都の酒造エリアに広がる可能性が鉄道建設・運輸施設整備支援機構から再度示された。機構の担当者は、京都駅だけでなく新大阪駅も「難工事になる」と述べるなど、技術的な課題の大きさもあらためて突きつけられた格好となった。

 西田委員長は、あくまでも与党が掲げている「2025年度着工」を目指すとし、次回会合で詳細なルート案を提示できるよう調整を急ぐ考えをにじませている。しかし、財源をどう確保するかの議論もいまだ始まっておらず、与党にとっては乗り越えなければならないハードルは少なくない。

 日本維新の会の馬場伸幸代表は18日、北陸新幹線の整備は日本全体に影響をもたらすプロジェクトだとした上で「ごく少数の与党メンバーで物事を決め、後戻りができないという状況に追い込まれていくことを懸念している」と語った。

 岸田政権の下、自民党の支持率が低迷を極める中で与党は沿線が納得できる整備プランを示せるのか。資材や労務単価が高騰する今、「小浜」の工費は16年当時に試算された2兆1千億円からかなりの増大が不可避とされる。工期と共に具体的な工費がいつ示され、一体いくらになるのかも、これからの焦点となる。

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