「#俺たちの轟」「#イマジナリー優三」「#発芽玄米」 『虎に翼』を盛り上げたハッシュタグ

従来の朝ドラファンだけではなく、これまで朝ドラを観てこなかった人たちからも視線を浴びている『虎に翼』(NHK総合)。女性初の弁護士となった寅子(伊藤沙莉)を主人公とする骨太の社会派リーガルドラマであると同時に、キャラクター描写や展開にエンタメ性が溢れている本作は話題に事欠かない。朝ドラとの親和性が高いX(旧Twitter)では、ドラマに関連するハッシュタグが頻繁にトレンド入りを果たしている。

特によく目にするのが、「#俺たちの轟」というハッシュタグだ。これは寅子の明律大学時代の同期・轟(戸塚純貴)に向けたもので、その人気は留まることを知らない。当初は典型的な男尊女卑の考えを持つキャラクターかと思いきや、実は誰よりもフラットで、男女関係なく誠意を持って人と接する轟。女子生徒たちに悪態をつくも梅子(平岩紙)が差し入れしたおにぎりを美味しそうに頬張っていたり、その梅子が夫からこき下ろされている時も一切笑顔を見せなかったりと細やかな描写や、コミカルな役もシリアスな役もこなす戸塚純貴の好演も相まって、どんどん目が離せない存在となっていった。そんな轟と同じく寅子の同期・よね(土居志央梨)とのコンビ感も抜群。戦後、2人が法律事務所を開いていることが明らかになると、「#轟法律事務所」というハッシュタグもトレンド入りを果たした。

ちなみに「#俺たちの○○」というハッシュタグは、2021年度前期放送の朝ドラ『おかえりモネ』で誕生。同作では坂口健太郎演じる医師・菅波光太朗が「#俺たちの菅波」として視聴者に親しまれた。菅波も“嫌な奴かと思いきや良い奴”パターンであり、「#俺たちの○○」は今後の朝ドラでもギャップで視聴者の心を掴んだキャラクターに向けられる恒例のハッシュタグとなるかもしれない。

5月14日に放送された第32話では、「#一握りの男」なるハッシュタグがトレンド入り。同回では、寅子がかつて思いを寄せていた花岡(岩田剛典)の司法修習後の試験合格を2人きりで祝うというのに通常の仕事着で行こうとしたところ、義姉・花江(森田望智)が「本当に殿方のことが分かってないのね。些細なことにお気づきになりそうな、気の利いた殿方なんてほんの一握りなんだから」と力説。アドバイスを受け、珍しく華やかなワンピース姿で出かけた寅子の変化に職場の男性陣は気づかなかったが、花岡は「その服とてもよく似合ってるよ」とすかさず褒めた。尾野真千子が担当するナレーションでも「出た、一握りの男!」とツッコミが入り、上記のハッシュタグが広まったのである。演じる岩田剛典も自身のXアカウントで「一握りの男」と投稿し、1万超えの“いいね”がついた。

放送開始から現在まで約3カ月とは思えないほど濃い内容で、その間にもたくさんの別れがあった本作。特に、寅子の夫・優三(仲野太賀)の戦死が明らかになるとお茶の間には哀しみが広がった。もともとは猪爪家の下宿人だったが、密かにずっと寅子を思っていた優三。気弱だけど頼りになる存在で、寅子の父・直言(岡部たかし)が贈賄疑惑で逮捕された時も家に押しかけてきた検察相手にも毅然とした態度で対応していたのが印象深い。そんな優三は「寅ちゃんが後悔せず、心から人生をやりきってくれること。それが僕の望みです」という言葉を残し、天国へと旅立ってしまう。だが、以降も優三はことあるごとに幻影となって現れ、寅子を励ます存在に。その度に「#イマジナリー優三」というハッシュタグとともに、優三の再登場を喜ぶ声が挙がっている。最近は姿を見せていないが、あの温かみのある微笑みがまた見たいものだ。

他にも頻繁に上がるのが、「#発芽玄米」というハッシュタグ。これは主演の伊藤沙莉がトーク番組『土スタ』(NHK総合)に出演した際、寅子の同期・小橋(名村辰)のぴょんと跳ねた前髪から着想を得て、“発芽玄米”と呼んでいることを明かしたことに端を発する。さらには戦後、司法省で働くことになった寅子が同僚として小橋と再会した際に発芽玄米なる前髪がアップで映し出され、「つづく」の文字が表示されたことでハッシュタグは一気に広まった。このように思わず投稿したくなる要素が満載で、SNS上でもムーブメントを巻き起こしている『虎に翼』。まだまだ続く放送の中でどんなハッシュタグが生まれるのか、注意深く見守っていきたい。
(文=苫とり子)

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