大谷翔平の桁違いの集中力の根元は「他人への興味のなさ」か 10年間追う番記者が分析「唯一足りない部分」

取材に対応する大谷翔平選手 写真/編集部

「野球に関しては投打でメジャートップクラスの才能を持ったもう2度と見られないレベルの選手ですが、人間性もある意味、特別な才能を持っている選手だと思います」

そう取材に語るのは現在、ロサンゼルス・ドジャースでプレーする大谷翔平選手(29)の番記者を日本ハムファイターズ入団時の2013年の冬から務めて11年目となるスポーツニッポンMLB担当の柳原直之記者だ。

「日本ハム時代終盤からテレビへの露出は極力避けていましたし、先輩に誘われて夜の街へと飲みに出かけることもありませんでした。野球に関することに24時間365日集中しようという姿勢は今も一貫しています」(柳原記者)

大谷選手本人は「四六時中、(野球のことを考えている)というわけではない」とも漏らしているそうだが、その集中力は桁違い。現在、並いる猛者が集うMLBで打率、本塁打、打点の3部門すべてで上位10人に名前を連ねる。その根元にあるのは「他人への興味のなさではないか」と、今年3月に『大谷翔平を追いかけて−番記者10年魂のノート−』(ワニブックス)を出版した柳原記者は分析する。

「15年と16年にダルビッシュ有投手(37)と自主トレをして以来、大谷選手が他の選手とトレーニングをしたという話は聞きません。日本ハム時代には、沖縄県名護市のキャンプ地の海岸沿いの道のりで栗山英樹監督(63)が囲み取材を受けている近くを黙々とランニング。“普通の野球選手”なら絶対に選ばないルートです」(前同)

大谷選手の“他人に興味がない”性格を象徴するような出来事の1つとして柳原記者も挙げるのは、今年3月に発覚した水原一平元通訳(39)による巨額の横領事件だという。

「野球に全力を注いでいるから、自分の口座のお金の動きを何年も確認していなかったということなんだと思います。野球以外のことに関心がないという大谷選手らしいエピソードでもありますよね」(同)

そんな大事件が起きたにも関わらず、今シーズンの大谷選手は絶好調。6月16日(日本時間・17日)に行なわれたカンザスシティ・ロイヤルズ戦では今季18号と19号となる1試合2ホームランの大暴れを記録。その翌日も1番打者として出場すると3安打の猛打賞で打線をけん引したのだ。

「気持ちの切り替えが他の選手と比べても抜群に上手いのだと思います。事件直後は“ちょっと睡眠が足りていませんでした”と語っていたことからも明らかなように、事件がプレーに影響を与えていたのは事実でしょう。それでもロッカールームでは山本由伸投手(25)やほかの選手と談笑したりと、オンとオフの切り替えはできている様子でした。若い頃から注目を集めるという特殊な環境にいたことも影響しているのだと思います」(同)

■番記者が見た、大谷翔平に足りない唯一の部分

水原元通訳による一大事件が自身の身に降りかかった一方で、その困難にも動じない精神力。そんなスーパースターを番記者として身近で眺めてきたからこそ、大谷選手から感じる成長の余白もあるという。

「メディア対応が他の選手と比べて少ないのは事実です。アメリカの野球記者協会も“取材対応の少なさ”を問題視し、キャンプ前にはMLB、ドジャース、日米記者がそれぞれ話し合いの場を持っています。

メジャーリーグではどんなスター選手でもクラブハウスでマンツーマンの取材ができます。大谷選手の場合は数日に1回、囲み取材があるかどうか。二刀流で多忙とは言え、30球団全選手が同じ条件で取材を受けてプレーしているのに大谷選手だけ特別扱いというのは、周囲からも奇妙に映るでしょう」(柳原記者)

また、アメリカではトップアスリートがスポーツだけをしていては評価をされない文化的な側面もあるそうだ。

「アメリカではNBAプレイヤーであるレブロン・ジェームズ(39)やテニス選手のセリーナ・ウィリアムズ(42)が積極的に人種差別に反対する発言を繰り返していますよね。大谷選手はメジャーリーグを代表するプレイヤーですし、影響力もある。まだ大谷選手は望まないかもしれませんが、今後はその影響力を、社会のために使うのも一考かもしれません」(前同)

シーズン前には真美子さんとの結婚も発表し、大人のプレイヤーへの階段を駆け上がる大谷選手。フィールド上では走・攻・守の三拍子が揃ったプレーを披露しているが、フィールド外での発信力も身につけ、さらなるスタープレイヤーの地位を確立するか。

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