三井寿は「ひさちん」と呼ばれるはずだった?『SLAM DUNK』ちょっとビックリだった「アニオリ展開」

『SLAM DUNK』Blu-ray Collection VOL.5(TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D))

2022年12月3日に公開され、世界的大ヒットとなった映画『THE FIRST SLAM DUNK』。その待ちに待った配信が、6月10日よりNetflix独占でスタートした。

本作ではポイントガード・宮城リョータを中心にアニメオリジナルのバックストーリーが追加されており、原作でも一番の山場であった「湘北VS山王」が、よりドラマチックに描かれていた。

一方、1993年から1996年にかけて放送されたアニメ版も、原作漫画にないアニメオリジナルの展開がかなり多い作品だった。そこで今回は『SLAM DUNK』ちょっとビックリだったアニメオリジナル展開を紹介していく。

■三井寿のあだ名が「ひさちん」に!?

主人公の桜木花道は三井寿のことを「ミッチー」と呼ぶ。原作でもお馴染みのあだ名だが、実はアニメ版では、一瞬だが「ひさちん」という微妙なあだ名になりかけていたのをご存じだろうか。

アニメ第31話「宿敵三浦台の秘密兵器」、インターハイ県予選初戦である湘北VS三浦台でのこと。三浦台戦自体は原作の漫画でも描かれているが、アニメ版ではそこにオリジナル要素が追加されており、そこに三井のあだ名に関するやり取りも描かれていた。

この試合は、桜木と流川楓にとって高校公式デビュー戦となる大事な一戦だった。華麗なプレイで会場の注目を集める流川に対して、まったくプレイに集中できない桜木はフラストレーションをため込みファールを連発してしまい、審判にまで食ってかかる始末。

そこで三井が「いちいち突っかかるな! 試合に集中しろ!」と諭すも、桜木は「だけどなミッチー」と言って、いつも以上に反抗する。そんな桜木の態度に三井も「ミッチーって言うのはやめろ」と、苛立ちを見せる。

そこで出たのが、花道の「じゃあ“ひさちん”、三井寿だから」というセリフだ。危なくあだ名が「ひさちん」になりかけた三井……。彼自身もこのあだ名が相当イヤだったのだろう。即座に「ミッチーでいい...」と、恥ずかしそうに“ミッチー呼び”を受け入れていた。

三浦台戦中、アニメオリジナルで展開されたコメディ要素の強いやり取りだった。

■アニメオリジナルの超大型選手・内藤鉄也

さらに、この三浦台戦では、内藤鉄也というアニメオリジナルキャラが登場している。

スキンヘッドの姿から、作中では桜木から「バスケをやる坊さん」「スキンヘッドナットー」と変なあだ名を付けられていたが、その正体は、三浦台の監督が秘密兵器としてラグビー部から引き抜いてきていた逸材だった。

内藤は、身長196cm、体重155kgの超大型パワーフォワードだ。本作の代表的な巨漢、名朋工業・森重寛が199cm100kg、山王工業・河田美紀男が、210cm130kgであることから、それと比較しても内藤の体格の良さが分かるだろう。

しかも、内藤はただ大きい訳ではない。100mを11秒フラットで走るフィジカルモンスターでもあり、実際、試合中、彼はジャンプボールで赤木を力でねじ伏せ、桜木を体当たりで吹き飛ばしていた。

しかし、バスケ歴が浅いことからミスも多く、最後は桜木のダンクを脳天に受け、泡を吹いて失神するという可哀そうなものとなっていた。内藤はアニメオリジナルキャラとはいえ、作中でもトップクラスの逸材であったことは間違いないだろう。できればもう少しいい環境でバスケをやらせたかった……。

ちなみに原作で脳天ダンクをされるのは、三浦台キャプテンの村雨健吾だったことは有名すぎる話だろう。

■不良に絡まれる鉄男……そのピンチに現れたのは?

本作と言えば、湘北高校の体育館で起きた“バスケ部襲撃事件”も印象深いエピソードだろう。三井の不良仲間のなかでも無類の強さを見せたのが、タンクトップ姿の鉄男だ。騒動後、バスケ部に復帰した三井と街で偶然出会った彼は三井を応援するかのように「じゃな スポーツマン」と言い、バイクにまたがり渋く去っていく。

原作においては、それ以来登場していない鉄男だが、実はアニメオリジナル展開で再登場している。アニメ第34話「ゴリ直伝・眼で殺せ!」、第35話「男たちの熱き想い」でのこと。

インターハイ神奈川予選3回戦・高畑戦前。三井が会場に向かっていると、不良集団に追われバイクで逃げる鉄男の姿があった。三井がそれを追うと、かつての不良仲間・竜とその連れである鑑別所帰りの鬼頭を中心に、鉄男が集団リンチを受けているところに出くわしてしまった。さすがの鉄男も多勢に無勢……三井もすかさず止めに入るが、バスケ部に戻った彼には何もできず、大事な試合前に逆に絡まれてしまう。

そのピンチに現れたのが桜木と桜木軍団である。襲撃事件から桜木軍団の株は爆上がりだ。その後、鉄男も復活。最終的に「急がねえと試合が始まっちまうぜ」と、三井と桜木を試合に向かわせるのだった。

かつて騒動では敵同士であった桜木軍団と鉄男が背中を預けるシーンには、シビれるものがあった。最後は、竜をボコボコにして決着がついた、アツいアニメオリジナル展開だった。

■シュート2万本の練習期間に起きていた青春エピソード

最後は、桜木のシュート2万本の練習期間に起きていた、アニメオリジナルの青春エピソードを紹介する。

インターハイを10日後に控え、静岡へ合宿に向かった湘北メンバー。一方、桜木は安西先生とともに神奈川に残り個人練習をすることに。晴子や桜木軍団の協力もあり、桜木がシュート2万本をやり遂げるという展開は、原作の漫画でも描かれていた名エピソードだ。

アニメ第95話「花道の最も熱き一日」、個人練習の過酷さに倒れ込む桜木、それを見かねた晴子は、気分転換に桜木を夜の縁日に誘う。こうしてこの話数では、縁日で起きた出来事を含めたアニメオリジナルの展開が続いていく。

縁日で晴子と二人っきりになり、ここぞとばかりに告白しようとする桜木。さらにはチンピラに絡まれたところを桜木軍団が駆けつけてくれるアツい展開、そして最後には、安西先生が差し入れしてくれたスイカをみんなで楽しむという夏の思い出が描かれていた。

アニメオリジナル展開によって、桜木のシュート2万本の裏側にはこんな素敵な青春の1ページがあったことが分かった甘酸っぱいエピソードだった。

今回は、アニメ『SLAM DUNK』で描かれたちょっとビックリだったオリジナル展開を紹介してきた。いずれも原作にはない描写の数々で、筆者を含めた当時の視聴者たちを楽しませてくれた。

近年ではここまでの追加要素をアニメオリジナルで展開するのは少なくなっているが、それでも時折見られる原作にはない展開を見るとワクワクしてしまうものだ。今後も素敵なアニメオリジナル展開を期待している。

© 株式会社双葉社