【天風録】姫路城の入場料

 人が多くて暑い街中を離れ、木陰で一息つきたくて広島城に向かう。ところがここにも外国人観光客の姿が目立った。天守閣に続々登っていく。原爆で吹き飛ばされたこの城の歴史にも思いをはせるのだろうか▲日本の城は外国の人に人気が高い。中でも白壁が美しく、シラサギが舞う姿にも似た「白鷺城」は特別らしい。国宝で世界遺産でもある姫路城への外国人来場者は昨年、過去最多45万人に。全入場者の約3割を占めた▲兵庫県姫路市にとってはインバウンド(訪日客)を見込める「財産」でもある。18歳以上は千円で天守に登れるが「30ドル(約4700円)くらいに」。外国人に限って入場料の値上げを検討したいと、市長が語った▲大勢が登ると木造建築物は傷み、壊れやすくなる―とオーバーツーリズム(観光公害)を指摘。ごみ対策もあるのだろう。「市民と、10年に1回来るかどうかの外国人観光客は違う」とも述べ、料金差に理解を求める▲エジプトのピラミッドなどは周辺国とそれ以外の国の人で、入場料に9倍もの差があるという。料金差の受け止めはさまざまだろうが、世界遺産は人類共通の財産だ。国境を超え、理解し合う場であってほしい。

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