唐沢寿明、浅野ゆう子に託されたチャンス生かし走り続けたスター街道

唐沢寿明 撮影/有坂政晴

16歳で芸能界に足を踏み入れた唐沢寿明のプロフィールは、THE CHANGEに満ちている。『仮面ライダー』シリーズなどのスーツアクターを経て、ミュージカル『ボーイズレビュー・ステイゴールド』でデビュー。NHK朝の連続テレビ小説『純ちゃんの応援歌』、大河ドラマ『春日局』(NHK)で注目を集め、『愛という名のもとに』(フジテレビ系)でブレイク。以来、代表作を並べるだけでページが埋まってしまうほどのキャリアを重ねてきた。最新作の映画『九十歳。何がめでたい』で、昭和気質満載の編集者を演じる唐沢のTHE CHANGEとは──。【第2回/全4回】

映画『九十歳。何がめでたい』は、90歳の女優・草笛光子が主人公の佐藤愛子を演じていることでも話題になっている。現在60歳の唐沢寿明は、90歳の自分を思い描くことはあるのだろうか?

「ないですね。だって90歳まで生きてないから(笑)。生涯現役とかいう人がいるけど、ぼくには無理だよ。俳優……特に男性俳優は、どこかで諦めをつけないとかっこ悪いというのがぼくの考え方なんだよね」

諦めというのは、例えばセリフを覚えるのが難しくなるとか、体力的にということなのだろうか?

「そういうことはある程度、努力でなんとかなると思っているけど、どこかのタイミングで〝もういいや〟と思う瞬間は必ずやってくるんじゃないかな。それがいつなのか、わからないけど。ぼくはまだ60歳だけど、ありがたいことにいわゆるヒット作にたくさん出させていただいたし、これ以上のことはもうないと思う」

──未来よりも、いま現在を精一杯生きるということ?

「うーん、そういう熱さはないんだよね。熱い人間は苦手なの。だからこれまでも、熱く演技論を語るとか、そういうことはいっさいやったことがない。デビューしたときから、いただいた役を一生懸命にやらせていただいてきただけで」

浅野ゆう子に誘われたことが今につながるチェンジ

大河ドラマ『利家とまつ〜加賀百万石物語』(NHK)の前田利家、『美味しんぼ』(フジテレビ系)の山岡士郎、『白い巨塔』(フジテレビ系)の財前五郎……誰もが夢中で見た作品の中で、唐沢寿明は常に、彼にしか出せない圧倒的な魅力を放ってきた。彼の俳優人生において、大きくかじを切った瞬間はいったいいつだったのか。

「1990年に『男について』(TBS系)というテレビドラマでご一緒した浅野ゆう子さんから声をかけていただいて、いまのプロダクションに入ったときですね。あれがなかったら、どうなっていたかわからないし、いまに通じる一番の分かれ道だったね」

唐沢がプロダクションを移ったのは、大河ドラマ『春日局』(NHK)で主人公であるおふくの息子・稲葉正勝役を演じて話題になった直後のことである。その2年後、唐沢はドラマ『愛という名のもとに』(フジテレビ系)で爽やかな好青年の高月健吾を演じ、実力派人気俳優の座を射止めた。

「俳優というのは、役をいただかないことには力を発揮できない仕事で、役と巡り合うのは、人との出会いなんだよね。ぼくは、この出会いに恵まれていると思う。もちろん、自分で頑張ったこともたくさんあるけど、みなさんに愛される作品に出演してこられたほとんどが、人との出会いに恵まれたおかげだと思ってる。ラッキーな人間なんだよ、きっと」

唐沢寿明 撮影/有坂政晴

唐沢寿明(からさわ・としあき)
1963年6月3日生まれ、東京都出身。’87年に舞台『ボーイズレビュー・ステイゴールド』でデビューし、映画、テレビドラマで活躍。主な出演作は、大河ドラマ『利家とまつ〜加賀百万石物語』(NHK)、『白い巨塔』(フジテレビ系)、『ルーズヴェルト・ゲーム』(TBS)、『フィクサー』シリーズ(WOWOW)、映画『ラヂオの時間』、『20世紀少年』シリーズなど。声優としてはアニメ映画『トイストーリー』シリーズでウッディの声を務める。

■【画像】唐沢寿明さんを事務所に誘った浅野ゆう子さんの貴重な若かりしころの姿

※浅野ゆう子さんのインスタグラム @yukoasano_officialより

© 株式会社双葉社