「練習しろ」「まぐれだ」女子ゴルファーに容赦ない誹謗中傷 河本結が「気にしない」境地に至るまで

河本結【写真:Getty Images】

昨季までの不振を脱却、今季好調の河本に聞く

国内女子ゴルフツアーで今季好調の一人が河本結(RICOH)だ。昨季までの不振を脱却。前週のニチレイレディスを終えて15試合に出場し、トップ10入り8度、リランキングも堂々の1位につけている。5年ぶりのツアー2勝目に期待もかかる25歳だが、SNS上での心無い意見に気持ちが揺れ動いた時期も。悲痛な声を上げる女子ゴルファーも少なくない中、吹っ切れた彼女の思いを聞いた。(取材=THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂)

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多くのスポンサー、ファンを抱える女子プロゴルファーにとって、SNSでの発信も今や重要な仕事の一つ。しかし、そんな背景を理解しないコメントに悩まされる選手は少なくない。

「練習しろ」「まぐれだ」。プレーだけでなく、中には体型や容姿を貶す投稿も。やむなくコメント欄を閉鎖し、ファンとの交流を絶つプレーヤーもいる。日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)も、誹謗中傷に対して異例のメッセージを公式サイトに掲載したほどだ。

今季好調の河本も、かつては心を乱されることがあった一人。2019年アクサレディスでツアー初優勝をマーク。1998年度生まれの“黄金世代”では畑岡奈紗に続いて米女子ツアーに出場権を手にした。だが、再び国内を主戦場にしてからは低迷していた。

「何も知らない世界から色々と言われて、昔は腹が立っていた」

どこか懐かしそうに振り返る。「アンチはあんまり気にしない」と今でこそ受け止められているが、達観した考えに至るまでに辛い経験もしてきた。

米ツアー撤退を決めた20年、拒食症のような症状に苦しんだ。「ダサい」。心身ともに病んでしまう自分が嫌になった。スイング改造に失敗して成績も振るわず。「どん底」と表現するここ数年、SNS上でアンチからの容赦ない“攻撃”は止まなかった。

誹謗中傷に悩むゴルファーの姿に「思うことはある」

ゴルフの楽しさを忘れてしまっていた昨年、転機となる出会いがあった。メンタルトレーナーの兼下真由子氏を紹介されたことだ。

瞑想を取り入れたトレーニングで、他競技の一流アスリートも受講する「WINメディテーション」を始めた。最初は「赤いリンゴ」と鮮明に思い浮かべることからスタート。地道に自分の心と向き合い、ショット、パッティングが思うままに打てる姿を明確にイメージできるようになった。

次第に周囲の雑音も気にならなくなった。「怒ることもなくなった。今は努力しているという感覚がないです。無理して頑張っているのではなくて、やりたいからやっている」。酷い時には7キロほど落ちてしまった体重も、ベストに戻った。

過去に対する悲観的な感情はない。ただ、辞めることを選んでもおかしくない精神状態になった時期もあるから、誹謗中傷に悩むゴルファーの姿には心を痛める。

「私にはこれ(ゴルフ)しかない。ここにいる人はみんなそうだと思います。みんな、きつい中で良いも悪いも命を懸けてやっている。当の本人でなくても思うことはある」

ツアー会場では選手の応援ボードやタオルを掲げ、目の前のプレーに選手を問わず拍手やエールを送るギャラリーが目立つ。ネット上を通じた交流も、そうあってほしいと願う。

THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe

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