「米粉」広がる需要、グルテンフリーにニーズ 県内メーカーは設備増強

JA鹿本の米粉製品「米の粉」。山鹿市内の物産館などで販売している=山鹿市

 輸入小麦価格の高止まりが続く中、国内で調達できる米粉の需要が高まっている。熊本県内の製粉メーカーは製造設備を増強し、需要増に対応。農林水産省は食料自給率の向上も視野に輸入小麦から米粉への「置き換え」を進める方針で、食品事業者や消費者へのアピールを強めている。

 農水省が国内の製粉メーカーに聞き取った米粉の需要量は、2024年度で6・4万トン。14年度の2・2万トンからおよそ3倍になった。22年3月のロシアのウクライナ侵攻で輸入小麦の価格が高騰したことで米粉が注目され、23年度は前年度比18%増、24年度は20%増と大きく伸びた。

 米粉需要の伸びについて、農水省の担当者は「輸入小麦価格の高止まりに加え、健康意識の高まりでグルテン(小麦に含まれるタンパク質)の摂取を減らす食生活が浸透した」と説明する。

 農水省は30年度に米粉用米の消費量を13万トンまで増やす目標を掲げている。達成に向けて省内にプロジェクトチーム「米粉営業第二課」(通称コメニ)を設置。今年4月から活動を本格化させた。職員が飲食店を訪問して米粉の利点を説明したり、食品加工事業者と意見交換したりして利用を促している。

 「訪日客が増え、グルテンフリーなど多様な食のニーズに対応する必要性が高まっている」として、米粉活用に前向きな事業者も多いという。 熊本製粉(熊本市西区)は昨年、米粉の製造設備の一部を増強した。小麦粉との違いを尋ねる製パン事業者などからの問い合わせも増えている。23年度の販売量は「前年度比2桁の伸び」だといい、企画マーケティング部の林いずみ部長は「国産志向の高まりもあり、販売は好調に推移している」という。

熊本製粉の米粉製品の保管倉庫。業務用と家庭用に約40種を製造しており、販売量は伸びているという=熊本市西区

 熊本製粉は04年に米粉製品の開発を始めた。パンや菓子向けを中心に製麺用、天ぷら粉など種類を増やし、現在では業務用と家庭向けに合わせて約40種の米粉製品を製造・販売する。原料のコメは熊本県産を含めすべて国内産だ。

 米粉は和菓子やパン、菓子など用途によって求められる品質が異なる。林部長は「製粉技術や原料へのこだわりが当社の強み。これからも、加工品がおいしく仕上がる米粉を製造していきたい」と力を込める。 JA鹿本(山鹿市)が製造・販売する米粉にも事業者からの引き合いが強まっている。コメの加工・販売所の敷地内に自前の製造施設を持ち、組合員が生産したコメを製粉。山鹿市内の物産館や道の駅で販売するパン店などに販売している。

道の駅「水辺プラザかもと」内のパン工房で販売している米粉パン。JA鹿本が生産した米粉を使っている=山鹿市

 ここ数年、市内外の和菓子やパンを作る事業者からの購入依頼が増えているという。担当者は「施設が小規模で製造量を増やすのは難しい。〝現状維持〟で安定した生産を続けていきたい」と話す。

 米粉を使ったパンや麺はもっちりした食感が特徴。揚げ物の衣に使うと油の吸収が少なくカロリーを抑えられるほか、サクサクした歯応えも持続する。農水省はホームページ内で料理のレシピを公開しており、穀物課は「家庭でも日常的に使ってほしい」とPRする。(山本文子)

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