「天才ですかっ!」 リコーダーが驚愕の変身 オリジナル楽器の演奏に17万“いいね”

音楽の授業で親しまれているリコーダー(写真はイメージ)【写真:写真AC】

多くの人が音楽の授業で演奏した経験があるリコーダー。そんななじみのある楽器が驚きの変身を遂げ、美しい音色を奏でる動画がX(ツイッター)で大きな反響を呼んでいます。投稿者の創@自作楽器(@kajiisou)さんに、詳しいお話を伺いました。

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「リコーダーの音色もやさしくノスタルジックで素敵」

「リコーダーでパイプオルガンっぽいものを作りました!」

そんな一文を添えた動画には、不思議な楽器が映っています。棚状の天板に開いた穴には、逆さに突き刺されたリコーダーが。手元には、管につながった鍵盤のようなものがあります。

足元のポンプを踏むと、左右にある風船が膨らみました。どうやら踏んでいたのは、空気入れのようです。

風船が十分に膨らむと、両手が鍵盤に置かれ、バッハの名曲「主よ、人の望みの喜びよ(Jesu, Joy of Man’s Desiring)」の一節が演奏されます。どこか懐かしさを覚えるリコーダーの音色が優しく響きますが、素敵な演奏の最後は風船がしぼみ、コミカルなエンディングを迎えました。

この動画がXで公開されると、17万件もの“いいね”が集まり、再生回数は760万回を超えました。リプライ(返信)には、「すご! 天才ですかっ!」「物体としても魅力的ですし、リコーダーの音色もやさしくノスタルジックで素敵です~」「発想、組み立てがすごいし演奏もすごい」「塩ビ使ってパイプオルガン すごーい 音色も良いですね」「こんな楽器作るなんて、オリコーダーw」など絶賛の声が上がっています。

日用品演奏ユニットでミュージシャンとしても活躍している創さん(右)【写真提供:創@自作楽器(@kajiisou)さん】

海外からのオーダーを受けて制作した作品 試し弾きが大反響に

この楽器を制作したのは、日用品演奏ユニット「kajii」でミュージシャンとしても活動し、オリジナルの楽器制作を行っている創(そう)さんです。今回の作品は、カナダの音楽系YouTuberからオーダーを受けて制作したといいます。完成品の試し弾きの様子を公開したところ、思った以上に反響が広がりました。

もともと変わった楽器が好きで、「音響彫刻のようなマニアックなものを使っていた時期もありました」という創さん。

「kajiiの相方がある日、音階の鳴る食器を5個持ってきたことで、誰でも知っている材料で不思議な楽器を作るおもしろさに気づき、オリジナル楽器の制作をするようになりました」

ちなみに、「楽器オーダーについては、かなりリスキーなので普段は受けないのですが、今回はクライアントがとてもおもしろい方だったので、引き受けることにしました」と、話題になった作品の制作背景を明かします。

組み立てられる前の材料の一部。リコーダーなどのほか、大量の塩化ビニール管が【写真提供:創@自作楽器(@kajiisou)さん】

制作工程も詳細に公開 うれしい反響も

短い動画だけでも作品のすごさを感じますが、反響を受けて、創さんは投稿のツリーに制作工程を詳細に公開。36工程を写真付きで解説し、「実験も色々同時並行だったので、結局70時間くらいかかってしまいました」と綴っています。

かなりの大作で、どの工程も技術と根気が必要そうです。どんな工夫や大変さがあったのでしょうか。

「もっとも工夫した点は、『笛ごとの空気量調整』です。リコーダーは、低音は少ない空気量で、高音は多めの空気量で鳴らすのですが、チューブの中に削った木片を入れることで一本一本、微調整しています。この調整は0.1ミリ単位になるので、とても苦労しました」

0.1ミリ単位の微調整でチューニングを重ねて完成した作品(画像はスクリーンショット)

作品が大きな話題を呼んだことについて、「好意的な反響が多く、とてもうれしかったです。また、今回の投稿を見てパイプオルガンの構造を理解したという方が多く、わかりやすく伝えられたのは良かったなと感じました」と話す創さん。

コメントのなかには、息子さんが小学生だった頃に夏休みの工作で制作したというコンセプトの近い作品も写真付きで寄せられました。「うまく完成したかどうかわかりませんが、斬新なデザインで僕もとても参考になりました」と、印象に残ったそうです。

そんな創さんは、kajiiとは別の音楽ユニット「あの空によせて」で、「狼」 という楽曲を発表したばかり。反響を呼んだリコーダーの音色のように優しい歌声は、YouTubeのほか多くのサブスクリプションサービスでも聴くことができます。

「ミュージシャンとしてはまったく無名ですが、映像作品の主題歌や、大きなフェスに出るのが目標です。楽器制作については趣味と実益を兼ねていまして、今後もひとつでもおもしろいものを作っていきたいと思っています」

素敵な音楽とともに、どんなユニークな楽器が生み出されていくのか、これからも楽しみですね。

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