NEXT STAGE、住宅の製造品質を〝ガチンコ〟で競う業界初のアワード

全国の住宅事業者を対象に、木造戸建住宅の「製造力」を〝ガチンコ〟で競う業界初のアワードを開催した。住宅性能向上の要求は高まる中で、いかに設計通りの性能を現場で確保するのか。住まいの新たな価値を評価する試みとして注目される。

業界初となる木造住宅の「製造力」を競う「Japan Housing Quality Award 2023」を開催した。

大阪市中央公会堂で開催された第1回のアワードには、85社、185人が参加した

同社は17年以上にわたり第三者品質監査サービスを展開してきた実績を持つ。22年2月には、ヒンシツアナリティクスクラウド「QualiZ(クオリツ)」の提供を開始した。設計工程、製造工程、維持管理工程で品質確保に影響を与えるチェック項目を体系化し、住宅事業者ごとの施工品質基準の作成から、住宅製造工程の各セグメントで施工品質を分析、評価し、課題を見つけ改善をサポートする業務を行っている。こうした独自のノウハウを活用し、業界初となる住宅の「製造力」を競うアワードを実現した。

アワードのエントリー期間は23年4月1日~23年12月31日。対象物件は、在来工法および2×4工法の、3階建以下の木造戸建住宅。住宅事業者の工法に応じた建物評価項目、評価基準に沿って、全10回の現場監査を「法令適合」、「性能適合」、「評価タイミング」、「不備範囲」、「不備改善」の5つの評価軸で行う。評価項目は、法令、各種共通仕様書、メーカー推奨基準などを含む約250項目。適合・不適合・施工前・未確認での判定を基本とし、指摘箇所の是正や施工推進における段取り精度を総合的に判定する。

建物単体を評価する「建物部門」、および1社が手掛けた3棟以上の建物の総合点を評価する「会社部門」の2つの部門を設定。また、それぞれの部門で、一般推奨基準で10工程を評価するコース「推奨基準コース」、詳細に決まった自社基準で10工程を評価するコース「自社基準コース」の2つのコースを設定し、高スコアを表彰した。第1回のアワードには、175棟のエントリー(※エントリー会社数は非公表)があった。受賞企業一覧は、下記の表の通り。

同社の小村直克代表取締役社長は、「アワードの趣旨には賛同いただきながらも、今回、エントリーを見送られた企業の多くは、現場に課題は山積しており、まだまだアワードに参加できるような実力ではない、という判断であった。一方で、今回参画された企業は、各地域で住宅事業を展開する中で、全国レベルで自分たちの製造力は、どの位置にあるのか、ポジショニングを確認したいという声が多かった。また、現場で働く大工、現場監督などの製造関係のメンバーに、仕事への前向きな動機づけを持って帰りたいとの要望も多かった」と話す。

なぜ今、住宅の製造力、製造品質が問われているのか。脱炭素化を背景に、住宅・建築物の省エネ対策の動きが加速している。25年4月には、すべての住宅・建築物へ省エネ基準の適合が義務化され、30年までに省エネ基準をZEH水準に引き上げ、適合が義務付けられる。また、省エネ基準の適合義務化と合わせて、4号特例の縮小も予定されており、住宅事業者には新たな対応が求められる。その一方で、現場の大工・職人の減少に歯止めがかからない。こうした背景がある中で、果たして設計性能が現場で本当に確保されているのか、という問題がクローズアップされ始めている。

小村社長は、「現状、住宅の価値は、設計性能で判断されている。設計性能が、製造時に実現しているのか、実質性能には誰も触れない。設計上の品質だけでなく、それを実現させる製造品質の重要性を、業界全体に認知させることを趣旨としてアワード開催を計画した。住宅の製造プロセスの可視化することで、これからの『ヒト・モノ』の価値を変えていきたい」と話す。施工に係わる技術者や技能者のやりがいの醸成、さらに、ユーザーが安心して購入できる良質な住宅ストックの形成にも寄与する取り組みとしても注目を集めそうだ。


〈会社部門〉推奨基準コース 最優秀賞

ハルサ建築設計(島根県出雲市)

専務取締役 坂野富一 氏

住宅の建設には、30業種100人が携わり、部品の数は10万点以上と言われている。その100人の大半は社員ではない。我々経営者からすると社員教育でも大変なのに、社員ではない人たちが集まり、家をつくっている。そして試作品をつくらず、ぶっつけ本番でつくる。普通に考えたらうまくいくはずがない。そうした前提を踏まえて、どうしたらうまくいくのかを考え、家づくりに取り組んでいる。

工務店の多くは、売りが先行して、施工は後ということになりがちだが、当社では、施工品質を上げていくことができたときに、他社が真似できない、当社ならではの強みになっていくと考え、売るのは営業で、つくるのは工務と分けていない。

家づくりは、お客様の絶頂期に寄り添うことができる、やりがいのある仕事。難しいことも多いが、そうした価値観を社員間で共有して家づくりに取り組んでいる。今回の最優秀賞の受賞はまったく想定していなかったが、自分たちの誇りを持てる家づくりを再確認できる良い機会になった。


〈会社部門〉自社基準コース 最優秀賞

アーキテックス(福岡県大野城市)

代表取締役 栗山浩 氏

私は最初、今回のアワードへの参加には消極的だったが、工務の社員2人から「自分たちの施工品質がどれだけのものか試してみたい」と熱心に言われ、彼らのモチベーションアップにつながるのならば、と参加を決めた。

現場の施工品質を高め、いい建物をつくるということが工務店の本質であるはずなのに、住宅業界全体の傾向として営業がクローズアップされて、おざなりにされてることは多い。そこをしっかりやる必要があるだろうと、6年前からNEXT STAGEのサービスを活用している。

職人不足の解消、施工品質の向上に向けて、社員大工の育成にも取り組んでいる。ベテランの大工を3人社員化し、その下に高卒の見習い大工2人をつけて育てている。今後も若手大工の採用は続けていく。施工品質の向上の一環として、基礎工事の職人2人も社員として迎えた。ゆくゆくは、電気、設備関係の職人も社員化していくことを計画している。そうすると本当にいい建物ができていくのではいかと思う。インスタなどSNSでの情報発信も積極的に行っている。今回の最優秀賞を受賞したことも積極的に発信し、集客につなげていきたい。

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