県庁や市役所の土木職、採用に苦戦 民間との競争激化で「困っている」

 中国地方の5県と県庁所在市、中核市の14自治体で、昨年度の土木職員採用の充足率が平均で6割と低迷したことが、各自治体への聞き取りで分かった。広島県呉市の充足率は約2割にとどまった。確保について、全ての自治体が「困っている」「今後困難になる」と答えた。

 5県の充足率は、広島が32人の募集に対して28人を採用し、87・5%と最も高かった。他の4県は40~60%台だった。県庁所在市は山口市や松江市で充足し、広島市で76・7%となるなど比較的高かった。一方、呉市は9人の募集に対し採用は2人で22・2%。全体的に採用の苦戦が続くここ数年の中でも昨年度は特に低かった。

 理由として「民間企業の給与・待遇面の向上で人材獲得競争が激しくなっている」(広島市)など、新卒者が減る中で、民間企業への人材流出を挙げる意見が目立った。仕事内容の周知不足▽試験のハードルの高さ▽民間企業に比べて採用が決まるのが遅い―などの指摘もあった。

 土木職員は災害発生後の復旧、復興工事に欠かせない。道路や橋などのインフラ点検の業務も増えている。人材を確保できない自治体では職員が残業でこなしたり、定年退職者を再任用したりしてしのいでいる。「このままでは災害発生時の迅速な対応が難しくなる」と不安視する声は少なくない。道路や上下水道の維持管理、ノウハウ・技術の継承が難しくなることへの懸念もある。

 呉市土木部の松川隆志部長は「自分で企画したものを形にできるのが自治体の土木の仕事。まずは若い人に興味を持ってもらうようにしたい」と話している。

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