【保健師監修】予防接種ってそもそも何?~2024年は「予防接種拡大計画」(EPI)が始まって50年~

2024年は「予防接種拡大計画」(EPI: Expanded Programme on Immunization)が始まってから50周年となります。

予防接種拡大計画(EPI)とは

「予防接種拡大計画」(EPI)とは、世界保健機関(WHO)と国連児童基金(UNICEF)による、予防可能な感染症から世界中の子どもを守るためにワクチン接種を推進するプロジェクトです。
プロジェクト開始から50年の間には、地理的な位置や社会経済的地位にかかわらずすべての子どもたちがワクチンを平等に利用できるようにするための取り組みが行われてきました。
近年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、インフルエンザ、はしかなどの流行により、予防接種に関心が高まっています。
そんな今こそ、世界中で多くの命を守っている予防接種について見識を深めてみましょう。

予防接種ってそもそも何?

予防接種とは「病気に対する免疫をつけたり、免疫を強くするために、ワクチンを接種すること”」いいます。
ワクチンとは、予防接種の際に用いる投与物(薬剤)のことです。毒性を弱めた病原体(ウイルスや細菌)そのもの、または毒素(病原体を構成する物質)などをもとに作られています。
「ワクチン接種」という言葉が用いられることもありますが、「予防接種」と同じ意味でつかわれます。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の際には、ファイザー社、モデルナ社などで作られたワクチンを接種した、つまり予防接種した方も多いですよね。

予防接種はなぜ必要?

では、こうした予防接種はなぜ必要なのでしょうか。
予防接種は、病気にかかることを予防したり、重い症状になることを防ぐことができます。
また、社会に病気がまん延してしまうのを防ぐためにも必要です。
日本では、終戦直後の感染症まん延や死亡率上昇に伴い1948年に予防接種法が制定され、これにより特定の疾病を対象に公費負担で予防接種を受けることができるようになりました。
予防接種法によって、接種が勧められている定期接種はほとんどが20歳未満に行われています。
どの予防接種を受けたかは、母子手帳などに記載されていることが多いですのでご自身で確認してみましょう。
なお、定期接種の対象となっている麻しんは、近年流行している感染症の一つですが、現在50歳代以上となる人は、定期接種が始まっておらず、ワクチンを接種していない可能性があります。
海外出張がある、仕事柄子供と接する機会が多い方などは、母子手帳や抗体検査などで確認していただくのがお勧めです。
麻しんについては、以下の記事でも詳しくご紹介していますので、チェックしてみましょう。

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予防接種には副反応がある

予防接種は、病気を予防したり、重い症状になることを防ぐという大きなメリットを持っています。
一方で、予防接種後に赤みや腫れがでたり、発熱するなど、体調不良が起こる場合もあります。
まれに、アナフィラキシーやけいれんなどの重い症状が起きることもあります。
こうした好ましくない体調は、有害事象と呼ばれており、この有害事象のうち、ワクチンとの因果関係が否定できないものが副反応です。
ワクチンは医薬品であり、副反応をゼロにすることはできません。
接種前に副反応について十分確認し、接種後に心配な症状があるときには、医療機関へ相談を行うことが大切です。

予防接種に関する世界的な取り組み

冒頭にもご紹介した「予防接種拡大計画」(EPI)の取り組みにより、過去50年間で推定1億5,400万人(毎年1分間に6人)の命が救われています。
14の感染症(ジフテリア、B型肝炎、風疹、結核など)に対する予防接種は、乳幼児の死亡を世界全体で40%、アフリカ地域では50%以上減少させることに貢献しています。
もちろん、貧富の差や地域差による接種率の違いや、発展途上国での接種率の水増し報告など課題はまだまだあります。今後の50年は子どもたちだけでなく年齢、国籍、人種あらゆる垣根を越えて感染症から命を守っていく必要があります。
今年は50週年という節目の年となり、より一層取り組みの促進が期待されます。

監修:根本裕美子(ドクタートラスト 保健師)

<参考>
・ 厚生労働省「感染症情報」
・ 厚生労働省「ワクチンの供給状況について」
・ 公益社団法人日本医師会「予防接種にまつわる歴史」
・ ユニセフ「予防接種拡大計画発足50周年 半世紀で1億5,400万人以上の命守る ユニセフ事務局長「すべての子どもに予防接種を」」

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