日本人女性がイギリス暮らしでギョッとしたこと 鼻をかむときの日本では信じられない行為とは

鼻をかむときのマナーが、日本とイギリスではまったく違う(写真はイメージ)【写真:Getty Images】

文化や国が違えば、常識とされるマナーが異なるのは当たり前。では、どのようなときに違いを感じることが多いのでしょうか。ひょんなことから英国に移住、就職し、海外在住歴7年を超えたMoyoさんが、外国暮らしのリアルを綴るこの連載。26回目は、英国やフランスで実際に暮らして感じた、鼻のかみ方に関するマナーの違いを紹介します。

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音への認識の違い

春や初夏は花粉症やアレルギーで、冬場は風邪などで、鼻水が止まらなかったり、鼻詰まりになったりする人も多いのではないでしょうか。幸い私には花粉症などの症状はないのですが、イギリスの冬場は寒い日は本当に寒いので気をつけていても風邪にかかることもしばしばありました。そこで厄介なのが「鼻をかむ」という行為です。

日本だと人前で鼻をかむことがマナー違反だったり、恥ずかしい行為ととらえられたりすることが多く、外で豪快に鼻をかむ人はなかなか見ませんよね。しかし、驚くべきことにイギリスやフランスではまったくその逆。学校や職場、外出先で、ウェブ会議中に、至るところで鼻をかんでいる人を見かけます。

「Excuse me(すみません)」と一言断って鼻をかむことは、失礼にあたらないのです。逆に不快、失礼に思われるのは音が汚く聞こえる鼻すすり。長年の癖でちょっとした鼻詰まりなら、すすったほうが早いし、別にそんなに変に思われることもないかな、と考えがちですが、逆に周囲の人に心配されてティッシュを差し出されることも。まったく別の価値観を持っています。

くしゃみをなかなかしない?

また、よく日本の街中で見かけるものといえば、くしゃみ。コロナ禍でだいぶ様相が変わったと思いますが、日本だとついうっかり口をおさえずに出てしまったり、豪快に大きな音を立ててしまったりしても、そこまで変な目で見られることはないかもしれません。

しかし、こちらではくしゃみもしっかり抑えるか、我慢するのが一般的。それこそコロナ禍で普及した、腕でしっかりおさえる行為をよく見かけますが、几帳面にも音をあまり立てずに「クチュンッ」のようなかわいらしい音が響きます。

ここでおもしろいのが、実際にくしゃみをした人が発する言葉と、その人に向けていう言葉です。イギリスでは「Excuse me(すみません)」に対して、「Bless you(神のご加護を)」、そしてもちろん「Thank you(ありがとう)」と返事するまでがセット。

フランスでは「Pardon(すみません)」に対して「A tes souhaits(望みが叶いますように)」(※間柄によって変わります)、そして「Merci(ありがとう)」と返すまでがセットになっています。ちなみに、フランスではくしゃみをした回数によって、かける言葉が変わってくるという興味深いルールも。

日本にもある、くしゃみを1回したら誰かが噂話をしている、2回は誰かに笑われている、3回なら誰かに惚れられている……という言い伝えみたいですよね。

9枚入りのポケットティッシュ8個セットで、なんと約400円。ボックスティッシュは40枚入りで、約450円もする。イギリスの格安スーパーマーケットのオンラインストアにて(画像はスクリーンショット)

何度も同じティッシュを使い続ける

さて、そんなふうに日本とは異なるマナー違反がいろいろとあるわけですが、私たち日本人が逆にギョッとするこちらの習慣もあります。

まず、先ほど挙げた鼻をかむ行為についていえば、鼻をかむアイテムに驚きます。なぜならハンカチや、使用済みティッシュを使い続けるから。日本のように一度鼻をかんだティッシュをすぐにゴミ箱へポイなんてする人はまずいません。

日本のティッシュは薄くて柔らかく、何枚も入っていますよね。しかし、欧州のティッシュは分厚くて、サイズが大きいのが一般的。ひとつのポケットティッシュに入っている枚数は、だいたい7~9枚くらいでしょうか。さらに、値段もそこまでお安くないため、もったいない精神が働くのかもしれません。

次から次へと少しでもきれいなところを探して(あるいは明らかに同じ場所を使ってでも)、ボロボロになるまで使ってから捨てるのです。つまり、ポケットに使いかけのティッシュ(やハンカチ)を入れっぱなしにするという習慣があるのです。明らかにティッシュがもうくたびれていても、最後の最後まで使い切ろう、という執念すら感じます。

日本のように道端でポケットティッシュが配られているわけではないので、資源へのハードルが全体的に高いのかもしれませんね。所変わればマナーが変わるのは当たり前ですが、豪快にくしゃみをしても大丈夫な日本がちょっと恋しい気分です。

Moyo(モヨ)
新卒採用で日本の出版社に入社するも、心身ともに疲弊し20代後半にノープランで退職。それまでの海外経験は数度の旅行程度だったが、イギリスへ語学留学ののち移住した。そのまま、あれよあれよと7年の月日が経ち、現在はフランスに在住。ライター、エディター、翻訳家、コンサルタントとして活動している。最近ようやくチーズのおいしさに少し目覚める。

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