議場での呼称「○○君」から「○○議員」へ…女性議員倍増の鹿児島県議会、ジェンダー平等や多様性への取り組み加速 議会棟に授乳スペース、男女のトイレにおむつ交換台も

 ジェンダー平等や多様性の観点を踏まえ、鹿児島県議会は9月から、議長や副議長が本会議で議員を指名する際の呼称を、男女共に「君」から「議員」へ変更する方針を固めたことが18日、関係者への取材で分かった。子育て中の議員や傍聴者に配慮し、議会庁舎に授乳スペースやおむつ交換台も初めて設けた。

 「君」は性別を問わない呼称とされるが、一般的に男性に対して使われることが多い。県議会では、2023年4月の県議選で女性議員が5人から11人に倍増したが、呼称は男女ともに「君」呼びが慣例だった。全国的に22年以降、呼称変更が進み、今年3月までに半数近くの都道府県議会で「議員」になっていた。

 関係者によると、3月の会派代表者会議で県民連合が変更を提案。「君呼びの方がシャキッとする」「何がいけないのか」との声もあったが、社会で性別によらない呼称が浸透する現状を受け、意見がまとまった。

 ある女性議員は「違和感があると声を上げられるようになったこと自体が進歩」。別の女性議員は「言葉は文化。ジェンダー平等への意識改革のために呼称変更は重要だ」と評価する。

 誰もが参加しやすい議会を目指しハード面の整備も進む。議会事務局によると3月、傍聴席のある議会庁舎7階に授乳スペースを設置。休憩所をパーティションで区切り、授乳中を知らせるスライド式のプレートを用意した。おむつ交換に車まで戻る傍聴者もいたことから、7階の男女トイレにおむつ交換台も設置した。

 初当選前の22年、5カ月の乳児を連れて県議会を傍聴した宇都恵子議員は「子どもが泣きそうになり席を離れようとすると警備員に注意され、子育て中の傍聴にハードルを感じた。ハード面の整備が進み、最近は席を立っても注意される風景を見なくなった」とソフト面の変化も実感する。

 昨年から、息子を連れて県内外の行政視察に出向く。「周囲の理解と協力がなければできない。当事者が訴えるだけでなく、周りがどれだけ意識を変えられるかが問われている」と訴えた。

おむつ交換台を備えた男子トイレ=17日、県議会庁舎7階

© 株式会社南日本新聞社