官民で「航空燃料不足」対策検討開始 インバウンド増加も海外航空会社が増便断念 需要増・人手不足解消への構造改革を

インバウンド需要の増加にもかかわらず、航空燃料の供給が追いつかず、海外の航空会社が増便を断念する事態が続いているとして、政府と民間が共同対策の検討を始めた。
専門家は、構造的な問題として、政府が需要を増やす対策をとる必要があると指摘する。

燃料供給不足に官民が対策検討へ

インバウンド需要に水を差しかねない航空燃料不足を改善しようと、国と民間が協力して検討を始めた。

航空燃料をめぐっては、製油所の統合や閉鎖のほか、輸送の担い手不足などで空港での燃料供給に支障が出ている。

このため、インバウンド需要が増えているにもかかわらず、海外の航空会社が増便を断念するなどの事態が相次いでいるという。

検討会は、経済産業省と国土交通省に、航空会社や石油元売り業者なども含めたメンバーで構成され、18日に第1回の会合が開かれた。

会合では、「燃料を運びたくても運べないという現状がある」などの意見が出されたという。

みんなの最適な選択が構造的問題に

「Live News α」では、働き方に関する調査・研究を行っているオルタナティブワークラボ所長の石倉秀明さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター: ーー航空機の燃料供給の不足、どうご覧になりますか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
航空機の燃料不足は、あくまで単体の問題ではなく、構造的な問題だと思う。

具体的にいうと、脱炭素の流れの中で、省エネなどが進み需要が減少した結果、石油元売り会社は製油所の統廃合を進めてきた。

製油所が少なくなったので、燃料を運ぶ船は長距離移動になるなど、供給が逼迫する状態が起きている。

加えて、ドライバーの人手不足や、残業時間の規制により、内陸部で空港に燃料を運ぶ人手も足らない。この問題の解決が難しいのは、誰も悪くないということだ。

堤キャスター: ーー石油元売り会社としては、自社の利益を優先した結果なんですよね?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
一企業として、需要が少なく採算が合わなければ、製油所を閉めるのは当然だし、ドライバーを必要以上に長い時間働かせないことも必要な処置。

みんなが最適な選択をした結果として、構造的にどんどん苦しくなってしまっている。短期的にはタスクフォースを通じて対策していくしかないのだと思うが、ただ、これを抜本的に解決するには、やはり需要が増え続けていく状態を作るしかない。

政府が担うべき売り上げ維持への策

堤キャスター: ーー具体的には、どういうことなんでしょうか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
需要が増えていく、つまり採算が取れると思えば企業は投資する。石油元売り会社は国内で製油所を増やし、設備が老朽化している場合は、その改修も行う。

さらには、ドライバーの給与も上げて、人手不足に対応することで、航空機への燃料供給も強化される。そうならないのは、今すでに需要が減っており、これからも減り続けていくと思っているから。

そう考えると、いかに経済がよくなるか、これから人口が増えない中でも、どうやって需要を増やしていくかが問われる。

もっと言えば、企業からすると、売り上げを上げ続けていけると思える状態を作ることこそ、本質的に政府がやらないといけないことではないかと思う。

堤キャスター:
航空燃料の供給不足という短期的な課題にとどまらず、人員の不足など、さまざまな面において、もっと戦略的な体制の見直しが必要なのかもしれません。
(「Live News α」6月18日放送分より)

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