6月も下旬に差し掛かろうとしていますが、依然梅雨入りもせず、暑い日が続いていますね。人間以上に暑さが苦手なのが、冷たい水を好む渓流魚たちです。山あいに涼を求めつつ、涼しい渓でイワナを狙ってフライフィッシングをしてきました。
■暑さから逃げるように山あいの渓流へ転身
群馬県を大動脈のように流れる利根川。連日その本流でヤマメを狙って渓流釣り、フライフィッシングをしていたのですが、朝方こそ涼しかったものの気温はぐんぐん上昇し、あっという間に30℃となってしまいました。梅雨入りどころかまとまった降水もないため、各ダムは放流を絞っています。川の水量は少なく当然魚たちの活性も上がりません。
早朝の釣りを終えると、熱中症の恐れもあるので木陰で休憩していたのですが、身体が楽になってくると、再びむくむくと“釣り欲”が頭をもたげてきます。そこで標高の高い山あいの渓流へと移動しました。
■涼しい! 気持ちいい! 緑の風が優しく撫でる渓
途中でお昼を食べてから到着したのは片品村の渓で、標高約900m。気温は26℃、水温は16.1℃。水位は低く、脛程度の流れがほとんどですが、川面まで枝を広げた木々のおかげで直射日光が遮られて暑さからは逃げることができました。
流れに沿って道路が走っていますが、ミズナラ、カエデ、ヤナギなど、緑色の森には鳥たちの囀りとエゾハルゼミの声が響き渡り、川面を吹き抜ける爽やかな風が天然のクーラーのように身体を撫でていきます。まさに避暑的なフィッシングにうってつけ! ひんやりとした水の感触を感じるウェットウェーディング(保温性は多少あるが防水性のないゲーターやタイツなどを着用、濡れながら遡行や釣りをするスタイル)が心地よい状況でした。これだけでも来た甲斐があります。
■小気味よく割れる水面! 暗い反転流からは……
前述の通り車道脇の小さな流れ、果たして魚は残っているのでしょうか? そんな心配は無用でした。道から一通り流れを観察してから入渓、最初に目星を付けたポイントにフライを流すと、パシャ! 小気味よく水面が割れました。サイズこそ20cm足らずでしたが、元気なイワナが顔を見せてくれました。その後も小粒ですが、ポツポツと魚たちが反応してくれます。
川面を覆うほど枝を広げた木の下、泡の浮いた暗い反転流で見るからに絶好のイワナポイントです。流れに合わせて長い時間フライを漂わせるために少し上流側に回り込みました。魚に気づかれないように低い姿勢でそっと移動します。浅い流れとはいえ、岩の間を水飛沫を上げながら流れる水に半身以上濡れてしまいましたが、むしろ心地いいです。
フライを落とすと、拍子抜けするくらい素早く飛び出した魚が、そのまま水底へと潜りました。期待以上の手応えに若干うろたえつつ、慎重にネットに導きました。25cmほど、青白い魚体に渓の緑を混ぜ合わせたような、美麗なイワナでした。予定していた場所まではもう少しありましたが、これで満足したので退渓することにしました。最近は1日5匹も釣れば満足するように。納得のいく釣りができれば、1本でも竿を畳みます。
河原の石に腰掛け、休憩がてら携帯を手にしました。よせばいいのに仕事のメールをチェックして、ため息をひとつ。ぽつりと水滴が腕に当たり、空を見上げると北の空が暗い雲に覆われつつありました。本当にひと雨欲しいところです。