【大岩Jのパリ五輪メンバー予想】OA枠は遠藤航と板倉滉の2人か。“ラストピース”佐野航大は重宝されるはず

大岩剛監督が率いるU-23日本代表は、現地時間7月24日にパリ五輪の初戦を迎える。本大会メンバーの発表まで残り2週間。発表前最後となる遠征も終わり、18人を巡る登録枠の争いは佳境を迎えている。

すでに大枠となる50人の予備登録リストの提出は済んでいると見られ、6月末と言われている最終メンバーの選定に向けて折衝作業を進めている段階だ。

インターナショナルマッチウィーク外に行なわれるパリ五輪は代表チームに拘束権がなく、ベストメンバーを組める保証は一切ない。同じくインターナショナルマッチウィーク外に行なわれた4月のU-23アジアカップ(パリ五輪のアジア最終予選)でもメンバー構成に苦戦したように、本大会も直前まで誰を招集できるかは不透明だ。

「交渉は引き続き行なっている」と大岩監督が明かした通り、欧州でプレーする面々の招集可否や24歳以上の選手を起用できるオーバーエイジの3枠は、依然として流動的な状況が続いている。

特にOAの選定は苦戦しており、一部報道ではOA枠で遠藤航(リバプール)や板倉滉(ボルシアMG)の名前が上がっているが、簡単な話ではない。前者は監督交代初年度のシーズンとなり、後者は移籍の可能性があるため、交渉は一筋縄ではいかないだろう。OA枠を全て使い切れないケースがあっとしても不思議ではない。

一方でパリ五輪世代の招集に関して、国内組は1チーム2名でそれ以上の選手を招集する場合は交渉となるが、現時点で海外組はOA枠の選手と同様に確定事項がない。先日のアメリカ遠征に参加した面々が現状で本大会に呼べる可能性が高いと言われているが、こちらも最後の最後までどうなるかは分からないだろう。

その前提条件を踏まえたうえで現状のベストメンバーを探っていくと、まずGKは小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)と鈴木彩艶(シント=トロイデン)が有力だろう。前者はレギュラーを務めたU-23アジア杯で目覚ましいプレーを見せ、後者はA代表で経験値を積んできた。どちらも甲乙つけがたい力を有しており、レギュラー争いは混沌としている。コンディションを見極めながら、最後の最後までポジション争いは続いていくはずだ。

ただ、この2人は海外クラブの所属で今夏に移籍の可能性もある。その場合は1月のアジア杯でA代表を経験した野澤大志ブランドン(FC東京)が候補に上がってくるだろう。

最終ラインは6名で構成するのが濃厚だ。3枚と見られているSBは右に関根大輝(柏)、左に大畑歩夢(浦和)が入ると予想し、残る1枠は半田陸(G大阪)に託したい。アメリカ遠征で右サイドに加えて本職ではない左SBでもプレーしており、複数ポジションができる強みは登録人数が限られた五輪ではプラスに働くはずだ。

CBはOAで板倉を招集できた場合、残る枠は2つ。アジア杯で評価を高めた高井幸大(川崎)と、同大会で副キャプテンを務めた西尾隆矢(C大阪)が最有力と見るが、怪我の回復次第ではアメリカ遠征に参加していない木村誠二(鳥栖)の抜擢もあるかもしれない。チェイス・アンリ(シュツットガルト)も含め、ギリギリまで状態を見極めながら選定を進めていくことになりそうだ。

セントラルMFの枠は5枚とみる。遠藤を招集するとなれば、アンカーのポジションを任せる可能性が高い。その場合、大岩ジャパンで発足当初から中盤の底でプレーしてきた藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)を配置転換するはず。1列前のインサイドハーフで起用する構想があってもおかしくない。

その状況下で考えれば、残る枠は3つ。アジア杯で主軸を務めた松木玖生(FC東京)、山本理仁(シント=トロイデン)の信頼度が高く、Jリーグで好調を維持している荒木遼太郎(FC東京)もアジア杯同様に攻撃の切り札として手もとに置きたい。

ウイングは現状でオランダ組の力が図抜けている。左サイドの斉藤光毅と右サイドの三戸舜介(ともにスパルタ・ロッテルダム)はアメリカ遠征で昨年11月以来となる代表復帰を果たし、圧倒的な力を示した。

斉藤は得意のドリブルで次々にチャンスを演出し、「12日のアメリカ戦は我々の代表でプレーした中でも過去一番良かった」と指揮官も賛辞を送るほどのパフォーマンスを披露。三戸は個で局面を打開しつつ、インサイドのポジションをとってゲームメイクにも関わった。後半途中からはインサイドハーフでもプレーし、両サイドに加えて中央で機能する多様性を発揮。アメリカ遠征のパフォーマンスを考えれば、所属クラブからのGOサインが出れば彼らも当確だろう。

最前線はチーム発足当初からエースの座を守ってきた細谷真大(柏)が一番手で、サブにはJ1の舞台で結果を残している藤尾翔太(町田)が控える。藤尾は右ウイングでもプレー可能で、ポリバレント性も含めてこのチームに必要な人材だ。

現状で17名をピックアップしたが、ラストピースの18人目の選手として佐野航大(NEC)に期待したい。昨夏に欧州へ渡り、オランダリーグ1部では25試合で5ゴールをマーク。その活躍が認められ、アメリカ遠征で大岩ジャパン初招集となった。

12日のアメリカ戦は終盤に出番を掴み、インサイドハーフでプレー。大柄の相手をいなし、持ち前の技術力でチャンスをクリエイトした。現状ではボーダーライン上の選手かもしれないが、ユーティリティ性を考えれば是非ともスカッドに加えたいタレント。インサイドハーフに加え、両ウイングでもプレーでき、所属クラブではSBでスクランブル起用された経験もある。センターフォワードとCB以外に対応できる点を考えれば、18人という少ない人数で中2日の連戦を戦う五輪では重宝されるはず。ウイングのバックアップを削ったとしても佐野の力にかけたい。

果たしてどのようなメンバーで臨むのか。1人の招集可否で人選が大きく変わる可能性があるだけに、多くの選手にチャンスがあるのも事実。残された時間は少ないが、パリ五輪行きを懸けた戦いから目が離せない。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

© 日本スポーツ企画出版社