豊田章男会長の「信任率」は71.93% トヨタ株主、不正に厳しい視線…過去にはスズキ会長の6割台も

トヨタ自動車の株主総会で取締役に再任された豊田章男会長の「信任率」が急落している。今年の結果は71.93%で、前年に比べて12.64ポイント低下した。グループで相次いだ認証不正がトヨタでも発覚する中、10人いる取締役で最も低い数字となった。

トヨタ自動車が19日に関東財務局に出した臨時報告書で、前日の株主総会で賛成多数で可決された取締役選任議案の結果が判明した。豊田会長以外の9人は90%台後半が多く、佐藤恒治社長は95.44%だった。豊田会長への「信任率」が大きく下がるのは、約11ポイント低下した2023年(84.57%)に続き2年連続となる。 トヨタが5月に発表した2024年3月期決算は、好調な販売の伸びなどを背景に、売上高が45兆円、営業利益は5兆円を超えるなど、空前の好決算だった。 絶好調の経営数字をたたき出しながらも信任率が急落した背景には、ダイハツ工業や豊田自動織機などグループ各社で相次ぎ明らかになった「型式指定」をめぐる認証不正問題の広がりがある。

議決権行使助言会社が「再任に反対」

株主に影響力のあるアメリカの議決権行使助言会社2社は5月、グループで相次ぐ不正を背景に、豊田会長の再任反対を相次ぎ表明。このうちの1社のグラスルイスは「豊田氏は経営トップを2009年6月から務めており、一連の問題に責任を負っている」と指摘。「トヨタグループ全体で問題が多発していることを考えると、豊田氏のリーダーシップのもとで培われた企業文化に疑問が生じる」と反対理由を明らかにしていた。 追い打ちとなったのが、今月3日に発覚したトヨタ自身の不正だ。国土交通省の調査指示をきっかけに、トヨタは少なくとも2014年以降に出荷した7車種で、型式指定をめぐる認証不正があったと公表。エアバッグを衝撃ではなくタイマーで作動させていた事案や、エンジン出力のデータを意図的に改ざんしていた事案が明らかになっていた。

「グループ責任者」の手腕に注目

経営の安定する日本の自動車メーカーでは、株主総会の信任率が100%近くになることが珍しくない。ただ、車の安全にかかわる不正には、厳しい視線が注がれる。 2018年に車の完成検査をめぐる不正が発覚したスズキでは、翌年の株主総会で、経営のかじ取りを約40年にわたり担った鈴木修会長(当時)に批判が集中。取締役選任議案の信任率は65%台にとどまった。翌年は93%台にまで回復したものの、スズキの経営陣には苦い教訓となっている。 18日に愛知県豊田市であったトヨタの株主総会では、集まった4千人以上の株主に対して、佐藤社長が「心からおわびする」と改めて不正について謝罪した。企業ガバナンスについて問われた豊田会長も「正しいものづくりでモビリティカンパニーへの変革を目指すトヨタグループの航海をリードしたい」と語り、立て直しへの意欲を示した。 傷ついたものづくりへの信頼をどう回復し、株主に応えていくか。突き付けられた信任率は次の飛躍のバネとなるのか。「グループの責任者」を自負する豊田会長の手腕に、今後も注目が集まることになる。 今回の取締役選任議案の結果について、トヨタは「本年の株主総会での賛成比率は昨今の認証問題や取締役会の独立性、政策保有株など様々な背景をもとに、トヨタ自動車という法人に対し、主に機関投資家の皆さまが各運用機関の議決権行使基準に従って、率直なご指摘をいただいているものと受け止めております」としている。 (メ~テレ 山本知弘)

トヨタ自動車の取締役10人の「信任率」は…

▽豊田章男 71.93% ▽早川茂 89.53% ▽佐藤恒治 95.44% ▽中嶋裕樹 97.48% ▽宮崎洋一 97.42% ▽サイモン・ハンフリーズ 97.54% ▽菅原郁郎 94.12% ▽フィリップ・クレイヴァン 92.64% ▽大島真彦 94.47% ▽大薗恵美 97.65% ※株主総会で決議された選任議案の賛成率。敬称略

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