シンガポールで『ゼンレスゾーンゼロ』プロデューサーに直撃取材! 痺れるビジュアル&アクション開発秘話と“スイッチ版の可能性”についても訊いた【インタビュー】

シンガポールで『ゼンレスゾーンゼロ』プロデューサーに直撃取材!

シンガポールにて、HoYoverseが2024年7月4日にリリースを予定しているアクションRPG『ゼンレスゾーンゼロ(以下、『ZZZ』)』のメディア向け発表会が開催されました。

海外レビューハイスコア『Alan Wake 2』DLC「ナイト スプリングス」―密接に絡み合った筋書きを思いもよらぬ方法で拡張した

シンガポールはHoYoverseブランドのグローバルパブリッシングを行うCOGNOSPHERE PTE. LTD.が本社を構える土地。日本メディアにとどまらず世界中のゲームメディアを呼んで行われた非常に大規模なイベントはHoYoverse初となるとのこと。

本稿では、本発表会中に行われた『ZZZ』プロデューサー李振宇(リ・ジェンユー)氏へのインタビューをお届けしていきます!

編集部では、2024年1月にも李氏にメールインタビューを行っていましたが、直接インタビューをするのは今回が初めて。リリースを間近に控え「料理人が料理を作って、お客様にお出しする直前」に似たプレッシャーを感じているという同氏が、『ZZZ』の要となるアクションや個性的なアートワークに関する“こだわり”、さらには「スイッチ版の可能性」についても語ってくれました。

◆アクションが苦手でも楽しめる作品を目指した『ZZZ』

――李さんにとって本作が、プロデューサー初挑戦と聞きました。配信に向けて、プレッシャーは感じましたか?

李振宇さん(以下、敬称略):正直なところプレッシャーは感じ続けていましたね。開発初期は「面白いゲームが作れるか」、「作ったものがプレイヤーにとって面白いか」という点において強く感じていました。しかしリリースを目前に控えた今は違うプレッシャーがあります。たとえば“料理人が料理を作って、お客様にお出しする直前”のような緊張とでも言いましょうか……。

もちろん「ユーザーに満足してもらえるだろうか」という心配もありますが、私たちの立場(プロデューサー)からすると、どこまで作り込んでも「もっと時間をかければゲームの質を高められる」と感じてしまうわけです。「良いものを、時間をかけてさらに良くする」ということは永遠に続けられるのです。しかしそうした気持ちをグッと堪えて、7月4日に緊張感をもって『ZZZ』をリリースします。

――2020年から『ZZZ』を開発されていたとのことですが、その時期は『原神』リリースや『崩壊:スターレイル』が開発されていた時期だと思われます。そうしたタイトルラインナップの中で、どのように『ZZZ』が作られ始めたのでしょうか?

李:まず、『ZZZ』は開発者である私自身が作りたかったタイトルです。そのため、HoYoverseからかなりの自由度を与えられつつゲーム開発を進められました。企画当時もHoYoverseでは『崩壊3rd』というアクションゲームを展開していました、もっと幅広い層にもHoYoverseのアクションを楽しんでもらいたいという想いがありました。

――「幅広い層が楽しめるアクション」において意識された点を教えてください。

李:まず意識したことは「アクションの難易度」ですね。アクションゲームというジャンルはプレイヤースキル次第で「遊びやすさ」が変わっていくわけですが、こればかりは時間をかけて習得していかなくてはならず、アクションゲームを楽しむためには「一定の習熟期間」が求められるのです。

“幅広い層が楽しめるアクション”のためには、その「楽しさを感じられる習熟ライン」に到達するまでの過程にも、魅力を出す必要がありました。『ZZZ』を始めたばかりでまだ複雑な操作ができないプレイヤーでも、アクションを楽しみながらテクニックを磨けるようなゲームデザインを意識しています。

そうしたことを念頭におきつつ、『ZZZ』ではプレイヤーが面白いと感じる「アクションゲームとしての楽しさ」をゲーム開始から早い段階で感じられるようにしました。初期段階から「アクションの面白さ」を味わいながらも、プレイしていくうちに様々な技を含めた「アクションのテクニック」を学んでいけるでしょう。

吸音テスト時のスクリーンショット

具体的に言うと、たとえば『ZZZ』のアクションには「攻撃」と「回避」がありますが、やはり攻撃より回避のほうがアクション的にはハードルが高いですよね。そのため、ゲーム開始直後はハードルの低い「攻撃」をQTEや連携技などを中心として楽しんでもらえるようデザインしました。そうして楽しんでいるうちに回避などを含めた“アクションの魅力を感じられるプレイテク”を習得できるようにしています。

そういったゲームデザインもあり、『ZZZ』ではシーンによってはバトルが簡単だと感じる場所も存在しているため、その点をもって「アクションとして奥が深くない」と勘違いしてしまう人もいるかもしれません。

しかし私の理念はそれとは相反する所にあります。それは「プレイヤーがゲームシステム・アクションに慣れるまで、複雑なテクニックを要求してはならない」ということです。『ZZZ』にはこの理念に基づいた“プレイスキルを学習するサイクル”が存在していているため、「幅広い層が楽しめるアクション」になったと自負しています。

――複数回にわたるCBTでは、舞台となる新エリー都で日常生活をたっぷり体験できました。リリース後はどのような形でこの世界が広がっていくのでしょうか?

李:「新エリー都での日常生活」は、リリース時にも様々な要素が追加される予定です。各キャラの物語が展開されていくと同時に、新たな日常が拡大していく方針です。メインストーリーの進行とともに、主人公たちの生活範囲も徐々に拡大していきます。

――CBTでは白祇重工の拠点ともいえる工事現場が登場し、陣営のバックグラウンドが掘り下げられました。リリース後は「キャラクター、陣営ごとの生活」が伝わってくるような部屋・拠点も増えていくのでしょうか?

李:それもチームとして考えていたことです。「家」であれ「集いの場」であれ、今後はそういったキャラクターの背景を伝える要素を増やしていくことを想定しています。白祇重工の工事現場と全く同じではないですが、他の陣営の特徴が見られるストーリーをそこで展開していく予定です。

◆アートワークのカッコよさはデザイナー出身の李プロデューサーだからこそ!?

――ニコ・デマラの容姿はCBTの度に変わっていることが話題を呼んでいます。その理由についてお教えください。

李:『ZZZ』はCBTのたびに、様々な進化を遂げてきました。プレイヤーの好みもありますが、リリース時には我々の思い描く最大限のビジュアルにしたいと思います。

――それでは、ニコ・デマラのビジュアルの変化は「規制」ではなく、「進化」ということなのですね!

李:そうなりますね!

――『ZZZ』のユニークなアートワークは、前衛芸術をはじめとした様々なアート作品から影響を受けていると感じています。本作のビジュアルは、どのようなカルチャーから影響を受けているのでしょうか。

李:私は昔の工業デザインが好きなんです。例えば今現在のスマートフォンはシンプルなフォルムですが、ひと昔前の様々な製品は複雑なデザインで、そういうものに魅力を感じるのです。そのため『ZZZ』では現代では忘れられそうなスタイルやアートを作中に入れこむことで、逆に“都市ファンタジー”として「今のユーザーにとっての新しさ」を提供できると考えました。

――具体的には、どういった時代の文化に影響されているのでしょうか。

李:世界中の時代、デザインに影響を受けているので「これ」と断定することはできません。しかし、1920~1930年代の欧米の自動車や、瓦礫のみで作られた古代中国の建築でなどからもインスピレーションを得ています。そして『ZZZ』は都市を舞台にしているので、「様々なものをミックスさせていくこと」を大事にしています。デザインコンセプトにおいて重要視しているのは、“融合させること”です。

昔は緻密で複雑なディティールが流行り、今はシンプルで分かりやすいデザインが流行っています。それを『ZZZ』にて融合させることで、ユニークなアートデザインが実現できたと感じています。

――だから『ZZZ』ではレトロでありながらも未来的な印象が感じられるのですね。先ほど『ZZZ』は李さんが自ら企画して作り上げたタイトルと伺いましたが、なぜアクションジャンルで他作品とは独立したものを作ろうとしたのか、その狙いを教えてください。

李:シンプルなのですけれど「HoYoverseの他作品と差別化したい」という想いがありました。今までのHoYoverse作品と少し異なるスタイルのゲームを作りたかったのです。私はデザイナー出身で、現代の美術デザインが一番の得意分野です。自分が持っているスキルを最大限に活かしたいと考えて『ZZZ』を開発しました。

――「ゲームセンター」のミニゲームにも多くの新要素が追加されていて、驚かされました。各種ミニゲームはCBT段階でも完成度の高さを感じられましたが、このような細かな部分に新要素を追加していくことにも、やはりこだわりがあるのでしょうか?

李:『ZZZ』を常に進歩させていくということは、私たちの基本姿勢です。美術やその他のもの、ディテールまでチームとして最適化を進めていて、ミニゲームもそのひとつです。ぜひリリースを楽しみにしていてください!

――今回メディアに配布されたギフトの中に、ニンテンドースイッチのカードケースがありました。これはつまり、「ニンテンドースイッチ向けのリリース」を想定されているということですか?

李:ニンテンドースイッチで展開する可能性はゼロではないと思いますし、私自身も任天堂のファンなので実現したら嬉しいですが、あくまで「異なるプラットフォームでも同じように優れたゲーム体験を提供する」という前提をクリアできることが条件です。

もちろん開発の優先度としては、“今すでに発表しているプラットフォーム”のゲームプレイを重要視するので、あくまで開発が進むにつれて「実現できればいいな」という可能性の話になりますね。

――今回は、ありがとうございました!


『ゼンレスゾーンゼロ』は、PS5/スマホ/PC向けに2024年7月4日11時配信予定です。

提供: COGNOSPHERE PTE. LTD.

© 株式会社イード