立候補決意後に妊娠が判明 選挙区初の女性県議めざし周囲に支えられ駆け抜けた9日間に密着 選挙に込めた思いとは

今月16日に投開票された沖縄県議会議員選挙。女性候補者が躍進し、過去最多の8人が当選しました。
国頭郡区で初の女性県議を目指したのが儀保唯(ぎぼ・ゆい)さんです。立候補を決めた後に分かった妊娠、それでも駆け抜けた選挙戦を追いました。

13選挙区に75人が立候補した県議会議員選挙。県内随一の広さの国頭郡区には3人が立候補し2議席を争いました。

有志が作ってくれた応援ソングとともに地域をまわるのは、弁護士で1児の母、今回初めて県議戦に挑んだ儀保唯さんです。出発式で、弁護士をしていて感じた歯がゆい思いを訴えました。

国頭郡区に立候補した儀保唯さん
「朝から晩まで働いても、貯金が出来ない若者の声や、働きたくても保育園に預けられない、障がいのある子をもつお母さんお父さんの声だったり。みなさん自分で頑張ろうと、抱え込んでいる様に感じたんです。これは政治の問題だと、私は思います」

公約は、貧困や福祉、医療などの問題解消のため、法律を根本的に改善すること。平和外交を進めるため辺野古移設は反対。そして、女性が働きやすい社会をつくること。実は国頭郡区では初の女性候補者としても注目されているんです。

(Q:なぜ女性が候補者としてあがって来なかった?)
住民「女の人はものをいうなみたいな。その流れが、私たち世代にはまだ残っているのね」「女が出るもんじゃないみたいな。また女性も、そうだよねって。でも唯さんが当選したら、ちょっとずつ変わってくるね。『そうじゃなかったんだ』みたいにね」

出馬を決意したあと妊娠がわかり、コンディションには細心の注意で臨みたいところですが、連日あいにくの雨。

国頭郡区に立候補した儀保唯さん
「この3日間、家から出てくれた方もいたので。届いている人には届いてるんだなと」

支援者
「肩がこの辺バンバンだから。これは本当にお疲れだなって。妊娠と同時に、リラキシンというホルモンが出るから」
儀保唯さん「(支援者の方は)助産師さんなんですよ」
支援者「骨と骨のつなぎ目が緩むから相当な負担がかかっていると思いますよ」

妊娠の公表をためらう気持ちもありましたが、妊娠しているからこそ、自身を通して体現したかったことが。

国頭郡区に立候補した儀保唯さん
「女性が働きながら妊娠出産をするのを見てきて、自分もしてきたから。これが自然のあり方で、それに合わせた社会や会社の仕組みが出来たら一番いいんだろうなと思った。それを前提に社会をつくりたいなという気持ちがまた出てきたから、このままやろうと」

それでも家族の前では、感情的になってしまうこともあったようです。

儀保唯さん
「やっぱり全部冷静には出来ないし。全部がんばれない時に」
唯さんの夫・慶之さん
「感情的なことも含めてぶつけて来てくれることがあるので。1回は吐き出してもらって、(自分が)サンドバックとして受け取って。落ち着いた後の対話に期待をしているんです」

儀保唯さん
「身寄りのない方の支援も沢山してきました。しかし弁護士は依頼が無ければ、力になることが出来ません。本来であれば、そういう支援を必要とするところには、行政がもっと積極的に関わり、皆さんを支援するべきだと思っています」

毎日午後にはしっかりと休憩時間をとって。決して無理はせず。告示から9日間、選挙を闘いぬきました。

そして投開票の日の夜― 10443票獲得で当選。

唯さんの夫・慶之さん
「この広い国頭郡区を走り回って。本人も一人しか身がないが、地域の方々が本当に唯の代わりになって動いてくれていたのが見えていたので。すごく力になり結果に結びついたんだなと、当確が出た瞬間に本当に震えました」

一丸となって勝ち取った当選今後は対話により、さらに輪を広げたいと意気込みます。

(Q:今後また県政に取り組む形になるが?)
国頭郡区で初当選・儀保唯さん
「自分たちが本音でどう思っているかということを出せる様な議論の仕方を私は重要視していますので。今回投票で私に入れてくれなかった方とこそ、これから対話をしていきたいと思う」

国頭郡区初の女性県議が県議会にやんばるの新風を吹かせます。

【記者MEMO】妊娠や子育てをする女性が社会に出ることを特別なものにしたくないと語る儀保唯さん。自身も任期中に産休を取得する予定で今後の活動に注目です。

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