「洗脳されていた」aiko 裏切りの時期に現れていた芸能史に刻まれるエピソード【山田美保子コラム】

 aiko

 18日午後5時25分、「みなさん色々心配させてもてごめんね。私は元気です!ありがとう。」と大阪弁でポストしたaikoのXに救われたファンは多いことだろう。

 自身が代表取締役を務める所属事務所「buddy go」に約1億円の損害を与えたとして特別背任の罪に問われていた千葉篤史被告の公判で証人出廷した直後のポストは、翌19日15時現在で、いいね7.1万、リポスト3281、ブックマーク787、引用294と大反響。「私たちは大丈夫だよ」「これからも一生ついていくよ」「ありがとうはこちらのセリフ」などなど、ファンはaikoを力づけようと懸命に言葉を紡いでいるが、同時に生ワイドやニュースが“見出し”として使用した「洗脳されていた」には大きなショックを受けたのではないか。

 昨今、有名芸能人の訃報以外は扱わない生ワイドが東京地裁前から生中継したのは、aikoの知名度の高さや誰もが口ずさめる大ヒット曲の存在に加えて、長年明るいイメージで売ってきた彼女からもっとも遠い“証人出廷”というギャップにある。

 千葉被告は2016年から2019年までの間にツアーグッズなどを実際の価格より約1億円上乗せして知人の取引先から仕入れ、会社に損害を与えた罪に問われているので、aikoを裏切っていたのが約3年間だけだと思った方も多いかもしれないが、彼女にとって千葉被告は育ての親のような存在。2人の出会いは千葉被告がまだ大手レコード会社に勤務していた1995年にさかのぼるのだ。そこから二人三脚で大ヒット曲の数々を生み出してきたと言っても過言ではないため、千葉被告の罪は深すぎる。

 件の「洗脳されていた」以上に衝撃的だったのは、「悪徳ブリーダーに乱繁殖されている犬がいたとして、ずっとケージの中だけが自分の居場所で、そこで生活していた」という証言だ。

 動物愛護の末席に関わる筆者には何度か直で目にした“ブリーダー崩壊”の様子まで浮かんできてしまったが、その一方で、千葉被告がaikoを裏切っていたのが「2016年から2019年」と聞いて思い出さずにはいられないエピソードもあった。

 それは、2019年6月、「ナインティナインのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)に彼女がゲスト出演した際、「ファンの人と結婚できたらいいな~と思う」とコメントしていたことと、2021年12月、同番組で、前年に年下のファンと結婚していたと生報告したことだ。

 さらに結婚に関しては当時、「aikoはヒキが強い」とも言われていた。2019年6月、南海キャンディーズの山里亮太と蒼井優が結婚した直後の「水曜JUNK 山里亮太の不毛な議論」(TBSラジオ)にゲスト出演し、2020年10月には、ナインティナインの岡村隆史がリスナーに結婚を生報告した際の「ナインティナインのオールナイトニッポン」にもゲスト出演していたからだ。

 山里も岡村も芸能界きっての“結婚できないキャラ”だったうえ、岡村に至っては「アローン会」の初代部長だった人物。“まさかの結婚”発表の場にaikoが居て、2人の緊張を和らげ、彼らとリスナーの橋渡しをしたことは、芸能史に刻まれる“ほっこりエピソード”だった。

 やっぱり彼女に似合うのは、こうした明るいネタであり、ファンが待ち望んでいるのは彼女の笑顔と歌声である。夏のスペシャルな音楽番組で、その時を待ちたいと思う。

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