石破氏・野田元首相と考える東京都知事選と政治の自浄力…岸田政権はいつまでもつのか

東京都知事選の主な候補の公約が出揃い、国会では政治改革の論議が続く。「BSフジLIVEプライムニュース」では石破茂自民党元幹事長と野田佳彦元首相を迎え、政治ジャーナリストの後藤謙次氏とともにこれらを分析。また自民党・立憲民主党の今後についても議論した。

立憲は蓮舫氏を全面応援、自民は小池氏を“ステルス”応援

竹俣紅キャスター:
現職・小池都知事の公約「東京大改革3.0」は3つの「シティ」が柱。「セーフシティ」では災害に備える「首都防衛」など、「ダイバーシティ」では子育てや教育、女性・高齢者への支援など、「スマートシティ」では脱炭素化、暑さ対策、中小企業の賃上げ支援など。

石破茂自民党元幹事長:
さすが元防衛大臣。ミサイルに対するシェルター、富士山噴火への備えなどかなり本気の印象を受けた。

野田佳彦元首相:
プレゼンは相変わらずうまい。役所の人たちの知恵を借りながら財政の裏づけ・説明ができる政策を選んでいる。少子高齢化も押さえておりバランスがとれている。

竹俣紅キャスター:
小池都知事に挑む蓮舫氏の公約は「7つの約束」。非正規の東京都の職員の処遇改善、介護職員などの奨学金返済の支援拡充、行政事業レビューの導入、神宮外苑の再開発見直し、防災・経済・子育て支援などは小池都政から引き継いで強化する、など。

野田佳彦元首相:
本人に一番自信があるのは行財政改革。行政事業レビューを彼女ほど読み込んで質問にあたる政治家はいない。また良い政策は発展させるとしており、結構バランスがいい。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
争点は浮かび上がらず。小池さんは結局守りに入り、挑戦者の蓮舫さんも反自民・非小池と言った立候補表明時から急にトーンダウンした。

野田佳彦元首相:
「反自民」は我々が引き受ける。枝野さん、辻元さん、私も応援に行く。

反町理キャスター:
共産党も?

野田佳彦元首相:
それは別。我々の党はそうするということ。

反町理キャスター:
一方、自民党は表に出ない応援になっている。

石破茂自民党元幹事長:
自民党本部が出ると逃げてしまう票がある。残念なことだが、小池さんのマイナスとならないやり方で。

竹俣紅キャスター:
他の顔ぶれは、前安芸高田市長の石丸伸二氏、元航空幕僚長の田母神俊雄氏など過去最多の50人以上となる見通し。

反町理キャスター:
石丸さんの公約は「政治再建」「都市開発」「産業創出」。田母神さんは「災害に強い街」「日本人としての自信と誇り」「都民税の減税」「過剰な外国人優遇政策の取りやめ」など。

首相は追い詰められ、若手は立ち上がらない自民党

竹俣紅キャスター:
最終盤を迎えた国会の最大の争点は政治資金規正法改正案。衆議院を通過した改正案では、パーティー券購入者の公開基準を現行の20万円超から5万円超に引き下げ、施行1年後に実施するとした。政策活動費は項目ごとに使途・支出金額・年月を公開、1年間の支出上限を定めるとした。10年後の領収書などの公開、さらに第三者機関の設置も。

石破茂 自民党元幹事長:
基準を5万円にして何が起こるのか。若い人が金を集められず、ますます党と公的助成に頼るようになっていいのか、などの議論もある。これをやる理由が有権者に伝わらず共感を呼んでいない。

野田佳彦元首相:
何の改革にもなっていない。結局は匿名性を担保できる仕組みで、透明性に欠けたまま。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
全く内容を伴っていない。出発点から自民党の多くに当事者意識が欠けていた。

竹俣紅キャスター:
野田元総理のブログでの発信。「自民党はなぜ若手が立ち上がらないのか。30年前のリクルート事件後、岡田克也さんや石破茂さんなど多くの自民党若手が声を上げた」。

野田佳彦元首相:
当時は「ユートピア政治研究会」ができ、自分たちのお金の集め方や使途を公表して政治改革の提言も多くした。ああいう動きが今回は全く見えなかった。

反町理キャスター:
石破さんはいわゆる「政党法」で総裁選の戦い方や政党支部のあり方などを法律で定めた方がいい、という話をされている。

石破茂自民党元幹事長:
自民党総裁選は、総裁が公の存在として規定されておらず規制が全くない。だが政党助成を受けている我々は意思決定のあり方や代表の選び方などを明らかにすべき。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
必要だが憲法21条の「結社の自由」に絡んでくる。皇室典範特例法のように、全党が集まり一般の法律と違う扱いをして決めていくべき。

竹俣紅キャスター:
政治資金規正法の議論の中、旧文通費について質問を行った日本維新の会の音喜多駿政調会長が、岸田総理の政治改革の姿勢に問題ありとして岸田総理への問責決議案を提出。

野田佳彦元首相:
終盤国会の最大の山場だったが、総理は答弁の間ずっと下を向いていた。こんなに自信のない態度はダメ。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
岸田さんが追い詰められても、自民党執行部は全く動こうとせず、自分が動くしかない。孤立無援の中で無理やり辻褄を合わせようとして言い訳ばかりになったという答弁。

岸田首相が進退を語るタイミングは近いか

竹俣紅キャスター:
麻生副総裁は麻生派議員の政治資金パーティーで「将来に禍根を残すような改革だけはやってはいけない」と発言。主催者である麻生派の斎藤洋明衆院議員は「リーダーの責任も大いに議論されるべき」。

石破茂自民党元幹事長:
党内から意見が出るのはあってしかるべき。ただ副総裁は幹事長と並ぶ党のナンバー2で総理を支える存在。その方が言われるからには説明が必要。なぜこれが禍根を残す改革になるのか、世間の人はわからない。

反町理キャスター:
「岸田おろし」に入っているか。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
そうは思わない。麻生さんが今後も影響力を残すためには、岸田さんが一番イージー。総理がいずれ頭を下げてくると考えていたのでは。

竹俣紅キャスター:
最新のFNN世論調査では、内閣支持率は「支持する」が3.5ポイント増の31.2%、「支持しない」が64.4%。「岸田総理にいつまで総理を続けてほしいか」には「すぐに交代」が25.6%、「9月の自民党総裁任期まで」が55.9%。交代を望む声が合わせて81.5%にも上る。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
自民党議員も皆9月までと思っているが、次は誰か。後継者を育てなかったツケが出ている。いずれにせよ、岸田さんが進退について触れざるを得ないタイミングが近い。

反町理キャスター:
森喜朗さんから小泉純一郎さんへの例のように、トップが交代して支持率が上がり解散総選挙、そして政権が続くケースが多い。

野田佳彦元首相:
自民党の必勝パターン。だが今は党内からも退陣論が出て、外交で足元を見られることも心配。他党のことだが、9月の総裁選を前倒しするぐらいがいいのでは。

反町理キャスター:
事態の打開に向けた人事を岸田さんが行うか。石破幹事長の可能性は。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
大いに考えているのでは。

反町理キャスター:
「次の首相にふさわしい人」アンケートでも石破さんは毎回1位。支えてくれと言われたら岸田政権を支えるか。

石破茂自民党元幹事長:
仮定のことにはお答えできない。自分は4回も総裁選に出て顔と名前を知っている人も多く、支持を得やすい立場にいるだけ。それぞれが自分を殺してやっていかないと、この国の危機はどうにもならない。

野田元首相が唱える自民総裁選×立憲代表選“団体戦”のアイデア

反町理キャスター:
野田さんの前回ご出演時「補選に3つ勝った泉代表は続投か」という質問に「評価する要素がまだある」とのお答えだった。

野田佳彦元首相:
東京都知事選などもあり、会期末に向けた国会対応など仕事をしている最中に次の代表選などの話をすべきではないという意味。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
今の立憲の流れの中で「野田再登板論」は非常に強いと思う。泉さんは今のところ失点はないが、定期的な代表戦は堂々と戦うのがよいと思う。

野田佳彦元首相:
代表選は自民党の総裁選の時期にかぶせるべき。絶対に自民党総裁選に埋没しないこと。例えば双方から3人ずつが出たなら、くじ引きで先鋒・中堅……と決めてメディア上で団体戦をやればいい。もっと政治に興味を持ってもらうこと。

反町理キャスター:
石破さん、今のアイデアは。

石破茂自民党元幹事長:
実に面白い。全面的に賛成とは言わないが、山ほどあるテーマについて議論をちゃんとできる環境は必要。国民が関心を持ってくださるためなら何でもやるべき。

反町理キャスター:
野田さんの前回出演時、野田政権での教訓として「外交の基軸は日米」「官僚の知恵も使う」「皇室を大切にする」が大切だという話があった。

石破茂自民党元幹事長:
女性天皇まではいいが、女系天皇についての議論を突き詰めていない。反対の方は絶対反対だが、私たちはそのままでは皇室がなくなると思っている。もちろん男系優先に決まっているが、女系も完璧に否定してよいかという議論はすごく大切。

反町理キャスター:
野田さんは女系天皇を認める立場か。

野田佳彦元首相:
男系男子が基本。ただ少なくとも男系の女性天皇はよしとして、女性皇族が婚姻後も皇族として残れるようにすること。その先は有識者会議が逃げているテーマ。いきなり政党間で決められず、枠の中で丁寧な議論をしたい。

反町理キャスター:
「官僚の知恵を使う」ために内閣人事局に手を入れるべきか。

石破茂自民党元幹事長:
人事権を事務次官と局長に絞るなどすべき。

野田佳彦元首相:
大賛成。我々の「政治主導」は空回りし、その後は「忖度」になった。どちらも政官関係がうまくいかなかった。
(「BSフジLIVEプライムニュース」6月18日放送)

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