『七つの大罪 黙示録の四騎士』の奥深い人間ドラマ コメンタリーから紐解く名演の裏側

剣と魔法の冒険ファンタジーはいつの時代でも、私たちをワクワクさせてくれる。鈴木央原作のマンガをアニメ化した『七つの大罪』は、そんな冒険ファンタジー好きにはたまらない作品だ。その正統続編『七つの大罪 黙示録の四騎士』が2023年10月に2クールで放送された。2024年10月より第2期の放送も決定している。

本作の魅力はなんといっても、好奇心旺盛な少年が信頼できる仲間と出会い、絆を築き、悪と戦い成長し、英雄となっていく王道中の王道と言える冒険活劇としての面白さだ。

3月には、第1話から第12話を収録したBlu-ray/DVD BOX Iが発売されたが、早くも第13話から第24話を収録したBOX IIの発売が6月19日に決定。本作の魅力を振り返るとともに、BOX IIの特典の見どころを紹介しよう。

「神の指」と呼ばれる辺境の地で、祖父バルギスと暮らしてきた少年パーシバル。平和に暮らしていた彼はある日、アーサー王に使える聖騎士イロンシッドの突然の来襲によって祖父を殺されてしまう。しかも、その男はパーシバルの実の父だという。辛くも一命を取り留めたパーシバルは、イロンシッドを探し出すため故郷を離れて1人、ブリタニアの地へと冒険に出る。かつて聖騎士を目指していたが挫折し旅芸人として暮らすドニーや、薬師のナシエンス、ウソや隠し事を見抜く能力を持つアンなど、仲間たちと出会い、絆を育んでいくパーシバルだが、彼はキャメロットの騎士たちに命を狙われ続けることになる。

パーシバルは、世界を滅ぼすと言われる「黙示録の四騎士」の1人だと予言されているのだという。そんな彼に進むべき指針を示すのは、言葉を話せるキツネのシン。4人と1匹は次々と襲い掛かってくるキャメロットからの刺客を退けながら、イロンシッドが仕えるアーサー・ペンドラゴンが治めるキャメロットと敵対するリオネス王国目指して旅を続けていく。

曲がったことが嫌いで困った人を見過ごせないパーシバル、普段は臆病だけど実は人一倍正義感の強いドニー、冷静沈着なナシエンス、勝気なアン、そんな4人を導き成長を促すシンなど個性豊かな仲間たちが織りなす道中を時にコミカルに、時に迫力満点のアクションで彩り、父であるイロンシッドとの確執などメンバーそれぞれの家族や過去を掘り下げ、仲間たちの絆を深めていくさまが描かれたのが第1話から第12話までの展開だ。

BOX IIに収録される第13話から第24話では、いよいよ“黙示録の四騎士”が勢ぞろいし、キャメロットの聖騎士との本格的な戦いが始まる。また、物語の進行とともに世界観も深化していき、単純な勧善懲悪では割り切れない、キャラクター同士の関係性が深掘りされていくエピソードが揃う。さらに、この世界は人間だけのものではなく、魔神族など様々な種族によって構成されており、複雑さが徐々に垣間見えてくる展開となる。

争いを好まない魔神族と仲良くなるパーシバルたちが描かれる一方で、かつて魔神族に子どもを殺された過去を持つキャメロットの聖騎士も登場する。相対する敵側にも人情味あるキャラクターがいて、それぞれの事情が描かれることで人間ドラマに奥行きを与えている。また、キャメロットの聖騎士でありながらパーシバルを気に入るペルガルドは、敵ながら単身乗り込んできて正々堂々と勝負を挑むなど小気味いい存在感を発揮したり、パーシバルの危機を救ったりなど、どこか憎めないところのあるキャラクターも登場する。

そんな敵味方双方に魅力的なキャラクターが増していく展開の中、パーシバルたちはリオネス王国へとたどり着き、そこで“黙示録の四騎士”が勢ぞろいする。ランスロット、トリスタン、ガウェイン、そしてパーシバルの4人が力を合わせてリオネス王国の危機に立ち向かう姿は、ヒーローアニメの王道の爽快さに溢れている。

一方で、ランスロットの師匠・ジェリコが敵として登場したり、女神族と魔神族の混血であるトリスタンの危険な力、ガウェインはアーサー王の姪という間柄であるなど、一筋縄ではいかないバックグラウンドを持つ3人の人間模様も深掘りされていく。戦いもドラマも混沌としていき、毎話手に汗握る展開の連続だ。

また、前作『七つの大罪』に登場した懐かしのキャラクターたちの再登場が増えていくのもここからだ。前作主人公のメリオダスはもちろんのこと、“七つの大罪”の1人であるゴウセル、聖騎士だったハウザーやジェリコなどは今作主要キャラクターたちの師匠や家族のようなポジションで登場。その他、敵側にもメラスキュラやガランなど元“十戒”の強敵が復活しパーシバルたちに立ちはだかるなど、シリーズを見続けてきたファンには嬉しい展開も盛りだくさんとなっている。

そんな『黙示録の四騎士』の本編をさらに楽しませてくれる映像特典がBOX IIにはついてくる。32ページのブックレットも豪華だが、本作の主要キャスト陣によるオーディオコメンタリーは制作過程と芝居の背景の理解を手助けしてくれる内容となっている。

オーディオコメンタリーは、第1話、第8話、第11話、第16話、第20話の5つのエピソードで用意されている。いずれのエピソードにもパーシバル役の小村将が出演しており、話数によって主要キャストがかわるがわる出演する形式だ。

小村は本作で初めて主演を務める若手声優だが、堂々と自身の言葉で作品と芝居について語っており、若手とは思えない落ち着きぶりが垣間見られて頼もしい。だが、そんな彼もやはり初の主役という責任の中で迎えた初回のアフレコはかなり緊張したようだ。なにせ、初回は大塚明夫と森川智之と小村の3人のみしかキャストがおらず、大御所2人に囲まれての収録だったからだ。第1話のコメンタリーは、小村と音響監督の小泉紀介の組み合わせ。音響監督といえば、声優たちが最も多く接するアニメスタッフだが、初主演の小村を小泉がどう導いたのかについて2人が語っている。また、パーシバル役は男性声優と女性声優、両方がオーディションに参加し、総勢は3桁を超えたそうで、そんな中、小村はこの大役に抜擢されたという。

その後に続くキャスト陣とのコメンタリーも必聴だ。ナシエンスやアン、ドニーら「パーシバル隊」は小村と年が近いこともあってか、作中のキャラクター同様、仲のいいところが感じられる。パーシバル隊の中で年長となる内山昂輝やトリスタン役の村瀬歩とのコメンタリーでは、小村が貪欲に先輩声優から学ぼうとする姿勢を見せる。

コメンタリーでは、本作の芝居にはアドリブが多く含まれていると言及されている。一度、作品を鑑賞した後にこのコメンタリーを聞くと、何気ないシーンの芝居もより深く観ることができて、作品の楽しみ方が拡がっていく。配信全盛期となった今でも、映像パッケージの特典は作品の深い理解を促してくれる貴重な存在だということを、改めて再確認させてくれる内容となっている。本作のファンなら、是非とも入手してほしい。

また、6月30日には、『七つの大罪 黙示録の四騎士』スペシャルイベントが東京都千代田区の一ツ橋ホールで開催される。パーシバル隊と“黙示録の四騎士”を演じた声優が一堂に会する貴重な機会で、ここでしか聞けないトークもたくさんありそうだ。
(文=杉本穂高)

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