渋谷を傘のいらない街に 東急×渋谷区×アイカサ

by 加藤綾

東急不動産ホールディングスと、傘のシェアリングサービス「アイカサ」を展開するNature Innovation Group(NIG)は、渋谷区、渋谷区観光協会の後援のもと、「傘のいらない街 渋谷」プロジェクトを開始する。

7月末までに、渋谷駅半径600mに100カ所以上のアイカサの傘立てを設置するプロジェクト。街全体を巻き込みながら、アイカサがコンビニの店舗数を超えるインフラとなることで、「使い捨て傘ゼロ」を目指すとともに、環境保全に寄与しながら「雨の日も楽しく遊べる渋谷エリア」の実現を目指す。

プロジェクト始動に合わせ、雨傘と晴雨兼用傘の2種類のオリジナルデザインの傘を共同制作した。傘の取手も含め、クリアファイルをリサイクルして活用している。

雨傘は、中央から、葉や生き物が飛び交い広がっていくイメージをシルエットイラストで表現。晴雨兼用傘はビジネスシーンでも使いやすい色としてダークグレーを採用し、東急不動産HDのスローガンである“WE ARE GREEN”と社名、グリーン色をアクセントにしている。

雨傘
晴雨兼用傘

目標としている100カ所という数は、対象とするエリアにおけるコンビニの店舗数である90カ所を基準にしている。コンビニよりも身近で便利な存在となることで、急な雨でもコンビニで使い捨てのビニール傘を購入するのではなく、アイカサで傘を借りるという人を増やしていくことを目指す。

コンビニ以上の数を目指す

現在の対象エリアでのアイカサ設置数は36カ所で、設置場所は駅や、東急不動産HDの所有する物件を中心とした商業施設、オフィスビルなど。今後もこういった場所への設置拡大を進めるとともに、大学への設置も計画している。

左から、東急不動産HD グループサステナビリティ推進部 松本恵氏、NIG 代表取締役 丸川照司氏、渋谷区長 長谷部健氏、渋谷区観光協会 理事 兼 事務局長 小池ひろよ氏

リサイクル芸人・マシンガンズ滝沢さんが実感する傘ゴミ問題

NIGは大手企業などと連携し、SDGsの達成期限である2030年までに、日本で年間約8,000万本消費される使い捨て傘の廃棄をゼロにすることを目指した「2030年使い捨て傘ゼロプロジェクト」を2022年度に立ち上げた。参画パートナーとして新たに「日本公認会計士協会東京会」と「東京ガス不動産」が加わり、計13社となった。参画パートナーはそれぞれ、アイカサで貸し出すためのオリジナルの傘を制作している。

企業との連携のほか、自治体との連携も視野に入れた「2030年使い捨て傘ゼロプロジェクト for City」を6月19日に開始する。渋谷での取り組みが、その第1弾となる。今後、都内を中心に多くの自治体と連携し、街全体の「使い捨て傘ゼロ」実現を目指す。

そのほか、ペットボトルの再生素材を100%使用した「サステイナブルな傘」の本格提供を開始。再生素材の活用により、サービス全体での環境負荷低減を図る。サステイナブルな傘は順次、新規スポットに設置予定。また、傘立てのフルリニューアルも構想している。

サステイナブルな傘
フルリニューアル後の傘立て

アイカサは駅への設置も進められており、6月25日には都営新宿線19駅に新たに設置される。設置駅数は340駅となり、東京の約2駅に1駅に設置されているという。

発表会ではお笑いコンビ「マシンガンズ」の滝沢秀一さんが登壇。芸人だけでは食べていけないという理由で2012年からごみ収集会社で働き、現在では環境省のサステナビリティ広報大使、一般社団法人ごみプロジェクト代表理事を務めている。こういった経験から実感している、傘ゴミ問題について熱弁した。

マシンガンズ 滝沢秀一さん

捨て方が分からないゴミの1位は傘であることを紹介。さらに、ゴミ置場に壊れた傘が無造作に捨てられていたり、コンビニに捨てられることもあるという。

ゴミは自治体ごとに定められた捨て方があるので、ゴミ置場に捨てても収集の対象にならない場合がある。コンビニの場合は廃棄に費用が掛かり、お店の負担になる。そのほか、アイカサの傘立てに使い捨て傘が捨てられていることもあり、その数は全体で毎月数十本に及ぶ。

こういった捨て方はやめるよう呼び掛けるとともに、アイカサの普及と利用により傘ゴミが減り、廃棄の負担や環境など課題解決につながると説明した。

また自身の芸能活動について「お笑いの仕事をやってこれなかったけれども、漫才トーナメント『THE SECOND 2023』準優勝をきっかけに少しもらえるようになった。つまりTHE SECONDはマシンガンズをリサイクルしてくれた。1つのものを長く使うということを大切にして活動していきたい」と自虐気味に語った。

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