仙台城跡石垣修復工事の現在 2度の福島県沖地震で被害 熊本城修復にも関わった仙台市職員が手掛ける

仙台城跡の石垣で、地震被害からの修復が進められています。修復工事は、熊本城の石垣修復にも携わった仙台市の職員が手掛けています。

豊かな自然に囲まれた仙台城跡で、総事業費10億円をかけた大規模な修復工事が進められています。2021年と2022年に相次いだ福島県沖地震では、伊達政宗の騎馬像が傾く被害が出ました。仙台城跡の石垣も大きく2カ所で崩落したほか、広い範囲でゆがみやひび割れが起きました。

2025年3月の完了を目指す修復工事は、崩落した775個を含む約5800個の大きな石をいったん外して1つ1つ積み直していきます。
石垣の修復工事の責任者を務める仙台城史跡調査室長の関根章義さんに、修復現場を案内してもらいました。最も大きな被害を受けた本丸跡北西側の石垣では、石は既に取り除かれています。露出した盛り土は、特殊なシートで覆われ水をかける作業が行われていました。
仙台城史跡調査室関根章義室長「シートは水を含むと固まるので水をかけています。比較的柔らかくて動かせますが、水をかけると固まります」

修復工事が進む

シートは、石垣を再び積むまでの間に盛り土が崩れないようにするためで、東日本大震災の時には無かった新しい技術です。別の場所では、石を取り除く作業が行われています。
仙台城史跡調査室関根章義室長「酉門石垣という仙台城の本丸の一部ですが大きく変形してしまったので、石垣の背面の裏込め石と呼ばれる所の解体作業を行っているところです」

石垣は3層構造になっています。表面の外側は築石という大きな岩が積まれた層で、その裏は裏込め石、ぐり石と呼ばれる小さな岩が詰まった層で、最も内側が盛り土になります。
国の史跡で大事な文化財である石垣は、修復する際には基本的に伝統工法で元の通りにしなければなりません。解体作業ではいったん、全てのの築石とぐり石を取り除き、解体した築石は山のふもとにある別の場所で大切に保管しています。石垣の場所ごとに区分けされ、1つ1つの石に番号を振って管理しています。

福島県出身の関根さんは、静岡県で学芸員をした後に東日本大震災の翌年2012年に出身地に近い仙台市の専門職員に採用されました。当時、仙台城跡の石垣は大規模な震災被害を受け修復工事が進んでいました。関根さんは採用直後ながら、修復の現場担当に抜擢されました。

「どの石垣を直し、どこの部分まで解体するのか」5年もの長期にわたる修復プロジェクトで、関根さんは業者や石工に指示を伝え、全ての作業を記録をする日々が続きました。
震災からの修復作業が完了した2016年には、熊本地震が発生しました。熊本市の中心部にそびえる熊本城も、広い範囲で石垣が崩れました。文化庁の呼び掛けで、全国から石垣修復の経験がある職員が集められました。関根さんもその1人でした。

熊本城修復にも関わる

関根さんは仙台城跡の石垣修復で培った経験を生かし、熊本城の天守閣と奇跡の一本石垣で知られる飯田丸五階櫓の石垣の調査と修復作業を任されます。1年の予定だった熊本派遣は2年に及び、関根さんは熊本城の修復は熊本県の人たちの誇りを取り戻すことだと気づかされ、仙台城跡や仙台市民にとっても変わらないと感じています。

今回の石垣修復には、関根さんの元上司も携わっています。嘱託職員の工藤哲司さんは、震災で修復した石垣がまた崩れたことに責任を感じていると話します。
工藤哲司さん「当時の色々な経験をここで生かせれば恩返しと言いますか、東日本大震災の経験が役立てられるのかなと思っています」

17日からは、いよいよ石垣を積み上げる作業が始まりました。石工と呼ばれる職人が、1つ1つの石を元の場所に積んで石垣の姿に戻していきます。一部の石垣の裏側には、地震などによる崩落を防ぐため石垣の強度を補強するネットを使用します。このネットは東日本大震災後の修復でも使われ、その部分は今回の地震で崩れませんでした。

石垣の修復工事

仙台の誇り復活に向けて、工事は本格的に動き出しています。
仙台城史跡調査室関根章義室長「仙台城跡の象徴でもある、石垣は。しっかり直ることが一番。
完全な状態で、ちゃんとした状態をまた市民の方に見ていただければ」

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