甲南大生の自殺、上級生2人による名誉棄損認める 神戸地裁が慰謝料命令 自死との関係は認めず

神戸地裁=神戸市中央区橘通2

 2018年10月に当時甲南大学2年の男子学生が自殺したのは、大学のクラブ内で誤った情報が流布されたのが原因だったとして、男子学生の母親がクラブの上級生2人に5千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が19日、神戸地裁であった。河本寿一裁判長は名誉毀損を認め、2人に慰謝料計100万円の支払いを命じた一方、自殺との因果関係は認めなかった。

 上級生は当時クラブの部長と前部長だった女性2人。判決などによると、部長らは18年3月、「(男子学生が)学園祭の模擬店の売上金を横領した」とする誤った情報を無料通信アプリLINE(ライン)に投稿し、クラブ内に伝えた。

 学生は横領を否定したにもかかわらず強制退部させられ、他のクラブからも「ブラックリスト入りしている」などとして入部を拒まれた。

 男子学生は学生部に相談し、部長らの投稿内容が事実でないことを確認。学内のハラスメント防止委員会に申し立てたが、ハラスメントと認められなかった。

 判決理由で河本裁判長は部長らの投稿について、模擬店に参加した他の学生から詳しい事情を聴き、真偽を確かめる裏付けが足りていなかった点などから「違法性は阻却されない」と指摘し、「社会評価を低下させた」と述べた。

 「精神的打撃を与えた上、学生生活にも影響を与えた」として名誉毀損を認めた一方、「投稿により自死することを予見することができなかった」などとして自殺との因果関係は認めなかった。

 判決後、母親は「息子の命や信用などかけがえのない財産は失われたまま」とし、「大学はハラスメント否定したが、今回の裁判で名誉毀損が認められたことに意義を感じる」と語った。

© 株式会社神戸新聞社