本当に食品サンプル!? 躍動感あふれる鮎が「もう芸術作品ですね」「博物館の展示品にしても良いレベル」と大好評

もはや、食品サンプルというよりも生物のジオラマ!?

川の一部を空間ごと切り取ったかのような、あまりにもリアルすぎる鮎のサンプルが、SNSで注目を集めています。これはもう、芸術品……!

躍動感あふれる鮎 / 株式会社いわさき公式アカウントより / Via Twitter: @IWASAKI_SAMPLE

話題になっているのは、食品サンプル製造会社「いわさき 」(大阪市東住吉区)が6月6日、「食品サンプルの領域を超えた作品です」とX(旧Twitter)に投稿した1枚の写真。

「もう芸術作品ですね!!!!」「博物館の展示品にしても良いレベル」「これはもうアートとして売れるのでは」など、絶賛の声が寄せられました。17日現在、約2万1000件の「いいね」が集まっています。

実際に写真を見てみると、絶賛されるのも納得の出来栄えです。

川面から飛び出した鮎の生き生きとした躍動感を、水しぶきごと表現するダイナミックさ。それと対比するかのように、川底を優雅に泳ぐ2匹の鮎が良い味を出しています。

いわさきの公式アカウント は、別の角度から見られる4枚の写真も投稿しています。

どの方向から見ても、クオリティの高さにうなるばかり。食品サンプルの領域を超えた、リアリティあふれる作品です。

BuzzFeed Japanは、株式会社いわさきにお話を聞きました

――食品サンプルを超えた鮎が話題となっていますが、どのようにして作られたのか教えてください。

「食品サンプルを製作するときと同じような技法・素材を使って作成しています。魚は実際の鮎から型を取り、跳ねている魚はアクリルの棒で固定し、アクリル板に透明の樹脂でコーティングして作成した水しぶきと一体化させて目立たせないようにしています」

「着色については通常の食品サンプルを作成するときの技法、跳ねた魚については持ち上げ食品サンプルを作る時の技法、水泡については炭酸のドリンクを作成するときの技法…といった感じです」

食品サンプルの技法で作られた跳ね方や水泡の表現

鮎が跳ねている表現 / 株式会社いわさき公式アカウントより / Via x.com
炭酸の表現と同じ技法で作られた水泡 / 株式会社いわさき公式アカウントより / Via x.com

――製作者さんは、今回の食品サンプルをどのような意図で作られたのでしょうか。

「毎年、コンクールには『季節の料理』や『あつい料理』などのテーマがあるのですが、2023年については『食品サンプルの可能性』というテーマでした。料理に限定されないテーマだったので、何を作ろうかなと考えたとき、スーパーで鮎が売られているのを見て、子供の頃、川遊びで鮎を追いかけたことを思い出して食品サンプルにしてみようと思いました(製作者)」

――今回の鮎は「社内製作コンクール2023」の作品とのことですが、コンクール自体はいつ頃から行なわれているのでしょうか?

「『社内製作コンクール』は年1回行われており、その前身である『社内技能コンクール』は技術の向上や開発を目的に1966年に始まりました。当時は同じ料理の課題で食品サンプルを作り、技能を比較し研修するというかたちでしたが、その後、時代とともに形を変え、17年前より、現在のような製作者各自でモチーフの料理を決めて作品を作るというスタイルになりました」

「なお、『社内製作コンクール』は1年に一度の個人としての作品の発表の場となりますが、それとは別に、会社として商品のクオリティの統一を図るため、同一の食品サンプルを全製作担当者が製作するというコンテストを年に数回行っています」

――「社内製作コンクール」は前身から数えると、58年以上もの歴史があるのですね。

「普段は飲食店のオーダーに忠実なものづくりを目指している製作担当者が『つくりたいものをつくる』ことを許される場として、自由な発想のもと、持てる技術と経験のすべてを注ぎ込み、本物と区別のつかない超リアルな作品や、遊び心満載でユーモラスな『映える』作品など、毎回数々の作品を生み出しています」

「長年にわたるコンクールは多くの新技術や新しい表現方法の発見につながり、それを会社全体で共有することで新商品の開発へとつながっています」

――鮎以外にも、コンクール作品で目を引いたサンプルはありましたか?

SNSで話題になったのは『秋刀魚』の食品サンプル です。通常、コンクール作品は製作担当者本人がモチーフを決めますが、2023年度は全社的に『こういう食品サンプルがあれば面白いのではないか』という作品案を公募しました。そこで若手営業担当者から出てきたアイディアがこの作品です」

「これは『秋刀魚』に『刀』の漢字が入っていることから連想されたダジャレのような作品ですが、歴代コンクールでもグランプリ常連のベテラン製作者の作になります。鱗模様の書き込みや新鮮なサンマの特徴である『口の先が黄色い』ところまで再現しています。刀の刃物部分も食品サンプルと同じ樹脂素材で作成しており、刃物としては全く斬れるものではありません」

――これまでに、社内で最も反響があったサンプルやサービスを教えてください。

「正直、見慣れている…ということもあり、社内で話題になる食品サンプルというのはほとんどありません。社外で大きく反響があったことに対して『これがそんなに反響を呼んだの?!』と逆に驚く、というようなことはよくあります。また、芸術的な食品サンプルに対してというよりは、お客様へご納品する食品サンプルのクオリティへ反映される技術について、話題になることが多いです」

――ちなみに、Xで一番話題になった食品サンプルは覚えていますか?

「さまざまな食品サンプルをSNSへ投稿していますが、Xで最も反響が大きかったのはキーボードの上にオムライスを置いた(2021年の)『オムライスの破壊力』です。コンクール作品のようなハイクオリティな食品サンプルではないのですが、インパクトが凄かったようで、13.1万いいねがありました」

「次いで、2022年コンクールの金賞『生々しい生卵 』についても多くの方に話題にしていただきました。皆さんのお手に取っていただけるものとしては、こぼれた 味噌汁スマホスタンド チャーシューしおり スイカしおり があります」

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普段、何気なく目にしている食品サンプルですが、その1つ1つに技術を注ぎ込んで作っている職人たちが存在しています。今回の投稿をきっかけに、食品サンプルの世界へ興味を抱いた人もいるのではないでしょうか。

ちなみに、これだけ話題になった鮎の食品サンプルですが、残念ながら社内コンクールでの入賞などはなかったそうです。厳しい……!

株式会社いわさきは、ほかにもさまざまな食品サンプル画像を投稿しています。見ているとリアルさに感心しつつ、お腹が空いてきそうです。

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