日本のAIを広げるグーグル 無料で1万人にAI資格受講・各県の課題解決AI

by 臼田勤哉

Googleは19日、AIを中心に日本における同社の取り組みを紹介する「Google for Japan 2024」を開催した。日本における課題解決にAIを活用するとともに、AIトレーニングプログラム「Google AI Essentials」を開始するなど、AI人材の拡大などにも取り組む。

AI人材の裾野を広げる「Google AI Essentials」が1万名無料に

Google AI Essentialsは、仕事で生成AIを活用し、キャリアアップを目指す人のためのGoogle独自の資格認定プログラム。

生成AIに関する事前知識は不要で、生産性向上のためのAIスキルを習得できる。AIの基礎知識から実際の仕事の場面を想定したビジネスへの応用まで、10時間以内で学習できるオンラインのプログラム。通常は有料だが、Googleが主幹事を務める日本リスキリングコンソーシアムの新規会員を対象に、同プログラムを無料受講できるアカウントを先着1万名に配布する。プログラムを修了すると、修了証書が発行される。

AIを活用して日本の経済や社会に貢献するには、「活用する人」のスキルアップも必要となる。Googleでは2023年以降、Grow with Googleや日本リスキリングコンソーシアムなどを通じて、AIやテクノロジーを活用に向けたトレーニングプログラムを展開してきたが、その中でも入門者向けの新たなプログラムとして「Google AI Essentials」を実施する。

東大松尾・岩澤研と47都道府県の課題解決で協力

また、東京大学 松尾・岩澤研究室とパートナーシップを結び、2027年までに日本全国47都道府県における地域課題の解決をサポートする生成AIモデルの実装とAI人材の育成を支援する取り組みを発表した。

東京大学 松尾 豊教授

同研究室のコース修了生とGoogleのエンジニアが協力して、県の課題解決を支援する生成AIモデルを構築。その実装を通してAI人材育成に貢献していく。第1弾として、雇用のミスマッチ解消を目指し、大阪府との取り組みを開始。次いで広島県など各地での取り組みをすすめる。

東京大学の松尾 豊教授は、2023年9月に大規模言語モデル(LLM)の専門的な講義を開催し、そこに学外を含めた2,000名が応募し、660名が修了した。これにより、600名以上のLLMを作れる人が誕生し、講義資料も2万以上のダウンロードが行なわれた。

こうして誕生したLLM開発者に対し、計算資源の提供をGoogleに依頼したことが今回の取組のきっかけという。また、松尾研は政府の基盤モデル開発思念プロジェクト「GENIAC」に参加し、10Bモデルを8つ、それぞれ別チームで開発し、一番性能が高いモデルが50Bに進むというテーマで採択され、「めちゃくちゃ出来が良い」とのこと。松尾教授は、日本でも環境が整えば、人はどんどん育ち開発が進むと述べ、こうした仕組みを、今回のプロジェクトで幅広く日本中に広げていく。

また、Googleとがん研有明病院は、AIを活用した乳がん検診の研究に向けた共同研究の成果を発表。AIモデルを用いたスクリーニングシステムは、乳がん検出の精度を7.6%向上させることがわかったという。

大胆でありながらも責任あるAI

グーグル日本法人の奥山真司代表は、この2年間の生成AIの「予測できない変化」とともに、技術からインフラまでGoogleが幅広く投資し、「AIの民主化」を進めてきたと言及。「大胆でありながらも責任あるAI」として、AIの可能性を、健康や社会全体の経済的な成長、気候変動などの社会課題への対応などに活用するために、企業だけでなく政府や市民が協力する必要があると述べた。

グーグル 奥山真司代表

Googleは日本における責任ある推進に向けて、「日本におけるAIの可能性に向けた提言」も公開。インフラ投資や、AI人材育成、誰もがAIの恩恵を受けられる環境整備などに取り組むとした。

その他のGoogleの発表については、別記事で紹介している。

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