ウォルター ヴァン ベイレンドンク 2025年春夏コレクション - 笑いと悲しみ、ピエロの顔のもとに

ウォルター ヴァン ベイレンドンク(Walter Van Beirendonck)の2025年春夏コレクションが、2024年6月19日(水)、フランスのパリにて発表された。

対照的なものの糾合

ウォルター ヴァン ベイレンドンクが今季テーマとしたのが、「I HAVE SEEN THE FUTURE...」──完了形で「すでに見た」と言われるところのものが、「未来」である。矛盾が1つのセンテンスにより合わされているように、ウォルター ヴァン ベイレンドンクは互いに対照的な要素から、劇的なコントラストを引き出してゆく──そこにヴァン・ベイレンドンクは、笑いと悲しみを湛えたピエロの姿を重ねている。

対照的な要素はたとえば、シルエットに見て取ることができる。テーラードジャケットは、一方でハリ感のあるファブリックを活かして、構築的でコンパクトなフォルムであったり、他方で素材の分量をダイナミックにとることで、誇張されたオーバーサイズであったり。また、ミニマムなシルエットのボンバーシルエットがあるかと思えば、素材の切り替えてダイナミックに仕上げたプルオーバーがあったりと、サイズ感は極端な両極のあいだを揺れ動いている。

素材もまた、それぞれの衣服に付随するイメージを裏切ることで、ある種のコントラストを描きだす。ソリッドなはずのテーラードジャケットやタフなはずのMA-1ジャケットは、透け感のあるナイロン素材、シアーで柔らかなビニール素材を採用。また、ジャケットにはパファー装飾を、ギンガムチェックのシャツやプルオーバーにはフリルなどをあしらうなど、互いに異なるイメージを持つ要素が掛け合わされ、あたかも架空の空間のごとき雰囲気が醸し出されている。

さらに、ウェアの構造自体もまた、しばしば対照的な要素から構築される──開くことと閉じること。オーバーサイズのジャケットに多く見られたこの構造は、ボディのサイドとスリーブを切り開き、そこに差し込みの部位を設けることで、1枚の平面を1つの立体へとたちどころに変化させるものとなっている。開くことと閉じること、それはまた、平面と立体というコントラストのことでもある。平面性が強いからこそ、それを身にまとったとき、身体との関係においていっそうボリューミーなフォルムを作り出すのだといえる。

ジースター(G-STAR)とのコラボレーションによるデニムアイテムも、こうしたコントラストの関係に置くことができるかもしれない。ショート丈のデニムジャケット、ストレートシルエットやショート丈のデニ右mパンツに用いたのは、ステッチを用いず、ファブリックを糊付けしてテープで留めることで作り上げたもの。そこでは、異なるものを繋ぎあわせるという操作が、いっそう強調されているようにも思われる。

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