絶対に避けたい「夏のお弁当の食中毒」 落とし穴はポテサラ・卵・手作り冷凍品 オススメは梅干しおにぎり

美味しそうな梅干しおにぎり 梅干しは食中毒対策に有効 ※画像は森崎友紀の公式インスタグラム『@morisakitchen』より

6月半ばにして、最高気温30度以上の真夏日となる日が続いている。6月12日には東京都心でも30.1度をマークし、今年初の真夏日を観測。さらに6月14日には全国的に真夏日が続出し、茨城県・大子町では35度超えを記録。関東甲信越地域でも今年初となる「猛暑日」を記録し、都心でも31.2度と真夏の暑さになった。

「最高気温が30度前後となる暑さが続く影響もあり食中毒による被害も増えています。6月15日には長野市内にある高専の寮で食中毒が発生。125人が下痢や腹痛などの症状を訴えました。全員快方しているそうですが、原因は施設で調理された食事だと見られています」(夕刊紙記者)

例年、気温が上がる夏場にかけて増加する食中毒の被害。そんな中、警戒が必要となるのは長い時間カバンに入れて持ち歩くことから、気温変化の影響や衛生面での管理が不安視される子どもたちへのお弁当づくりだろう。そこで弊サイトでは、数多くのテレビ番組でも活躍してきた、管理栄養士で自身も7歳、5歳、2歳と3児の子育て真っ最中の森崎友紀さん(44)に、夏場“お弁当づくりでやりがちだけど、気をつけたい”ポイントについて聞いた。

食中毒の原因として挙げられるのは、黄色ブドウ球菌やサルモネラ菌といった細菌であるケースが多く、これらは気温が20度~37度の温度という環境下で繁殖しやすくなるそうだ。森崎さんは、「前提として、“お弁当は何時間か後に食べる”ものだと意識すること」が重要だと話す。

「まず大切なのは、絶対に素手で食材をさわらないこと。どんなにきれいに手を洗ったと思っても、少しでも手に黄色ブドウ球菌が残っていたりすると、その手で触った食材で菌が増えてしまいます。調理器具も、お肉を切ったまな板でそのまま野菜を切ったりせず、常に清潔に。お弁当に詰めるものに、極力菌をつけないことが肝要です」(森崎さん)

■「マヨネーズ」や「和え物」が怖いワケ

長い時間カバンに入れて持ち運ぶこともあるお弁当。特に気温が高くなる夏場は、傷みやすい生野菜の扱いには注意が必要だが、意外な落とし穴があるそうだ。

「彩りや“仕切り”としてキュウリやレタスを挟みたくなりますが、生野菜は腐りやすいので、特に夏場、屋外に何時間も置きっぱなし状態になるお弁当への使用はNGです。プチトマトもヘタの裏に菌が残っていたりするので、扱いには気をつけたい食材です。

また生野菜でなくても、味付けとしてマヨネーズやソースで食材を和えると、調味料には塩分が入っているので浸透圧で素材の水分が出てしまい、お弁当箱のなかで菌が増殖してしまいます」(前出の森崎さん)

弁当にマヨネーズで和えたポテトサラダを入れると、どうしても時間の経過とともに“べちゃっ”としてしまう。これはサラダの具材から水分が出てくるためなのだ。

「ポテトサラダはただでさえきゅうりやたまねぎなど生野菜を混ぜがちなので、夏は本当に危険です。どうしてもお弁当に入れたい場合は、アルミカップなどに入れてピザ用チーズを乗せ、トースターで焼いてグラタンふうにアレンジすると、水分が飛んでしっかり加熱されるので安心です。

ほうれん草でも、水分たっぷりのお浸しではなく、ゴマや鰹節で和えて水分を吸わせれば大丈夫。とにかく水分を入れない、食材から水分を出させないことに気をつけてほしいです」(前同)

■「卵」と「冷凍」に潜むワナ

弁当の定番食材と見られていたプチトマトにポテトサラダに危険性が……。加えて、前出の森崎さんが弁当の具材には“危険”と警鐘を鳴らすのは、一見手軽で使いやすそうな「卵」である。

「“ポテトサラダ事件”という事例があります。研修所で集団食中毒が発生、原因を突き止めるとポテトサラダ、さらには調理に使ったボウルだったんです。

ボウルはその日の別メニューだった茶碗蒸しを作る時の溶き卵に使われていて、そのままそこでポテトサラダを和えてしまったということでした。卵にはサルモネラ菌があるリスクもあり、しかも怖いのは殻にもついている可能性があること。殻をなにげなく触った手でほかのものに菌をうつす、ということもあり得ます。卵は手軽だからこそ、より注意して扱ってほしい食材です」(森崎さん)

忙しい朝に作る弁当。“時短”対策として便利な冷凍食材だが、これにも危険が潜むという。

「市販で、厳しいチェックを通っている商品はよいのですが、自分で冷凍したものには注意が必要です。 “お弁当に冷凍のまま入れておいて、食べる頃にはちょうどよく解凍されている”というお弁当づくりの技がよく紹介されますが、家で冷凍したものは菌が“冬眠状態”なだけというケースがあります。そのままお弁当に入れると雑菌が“蘇って”しまう可能性がありますし、解凍による水分もお弁当箱の中で発生します。レンジでいいので、とにかく加熱しましょう」(前同)

加熱により殺菌することも大事だが、ご飯もおかずもフタをするのは必ず冷めてから。これは密閉空間で食材の熱による水蒸気、つまり水分が発生するのを避けるためだ。

「水分が菌の餌になるので、しっかり加熱してしっかり冷ましてからお弁当のフタはしましょう。神経質になるぐらいでちょうどいいです」(同)

■森崎友紀さんオススメの乗り切りメニュー

弁当箱の中身を見てみると、そこに並ぶ多くの食材は、本来なら「冷蔵品」として家庭では扱われている素材ばかり。そんな食材を何時間も弁当箱の中に閉じ込めておいて、何もないわけがない、ぐらいに思っておいたほうがいいのだ。

「ハムやちくわ、かまぼこなんかも、手軽ですがもともと冷蔵品です。それを30度前後にもなる気温の下に何時間も……と考えるとこわいですよね。前日のおかずを活用する方も多いと思いますが、やはりもう一度加熱して冷ましてから入れましょう」(前出の森崎さん)

とはいえ、あれもこれも注意が必要となると、子どもに食べてもらうお弁当づくりにますます悩みが増えそう。そんな森崎さんがこの時期オススメしたいメニューとは。

まずは見た目にも楽しくかわいい、梅を使ったおにぎり。

「梅干しは殺菌効果があるので、食中毒対策には有効です。ただ一つを入れるよりは、こまかくしてご飯全体に混ぜたほうが効果は高い。じゃこやごまと合わせたりすると目先も変わっておすすめです。酸っぱいものが苦手な子には蜂蜜入りの梅干しなど、今は梅干しにもいろんなバリエーションがあるので利用してほしいです」(前同)

また、手軽ながら最近子どもたちに好評だった“ヒット”メニューは、はんぺん焼きとカップに詰めた彩りスクランブルエッグだという。

「はんぺんの間にハムとチーズを挟んで焼くだけなんですが、彩りも綺麗だし、食感もふわふわして食べやすいのが良かったみたいで、すごく喜んでくれました。

あと、卵料理では人参とかブロッコリーを混ぜたスクランブルエッグをカップに詰めたもの。もちろん焼き炒めのようにしてしっかり火を通すんですけど、卵焼きよりもラクに作れて野菜も摂れるし、彩りもいい。これは“使える”なと思いました」(同)

使い捨ての小分けカップやピックなどを活用すれば、仕切りと彩り問題の両方を解決する。便利グッズを上手に使いながら、日々の弁当づくりを乗り切りたい。

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