野澤大志ブランドン「規則」逸脱と味スタで起きた「深刻」事件【Jリーグに「改善してほしい」色ルール違反】(2)

黄色いユニフォームが良く似合う野澤大志ブランドンだが…。撮影/原壮史(Sony α1使用)

サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回のテーマは「これはルール違反ではないのか?」。ベテラン記者がJリーグ、そして日本サッカー界に一石を投じる――。

■味の素スタジアムで「深刻な事態」

さて、その翌日、6月16日に味の素スタジアムで見た試合では、もっと深刻な事態が起こっていた。公衆の面前で裸になるのが可か不可かというような問題ではない。「ルール違反」状態で試合が行われていたのだ。

試合はFC東京×ジュビロ磐田。ユニフォームはFC東京が青赤のシャツに青パンツ、青ストッキング、磐田は全身白。こうした配色は非常に見やすくていい。問題はGKだった。FC東京の野澤大志ブランドンが全身黄色、磐田の川島永嗣は全身黒のウェアを着用していた。何が問題かって? 山本雄大主審。五十嵐泰之副審、船橋昭次副審、そして酒井達矢第4審判の4人が、黄色のシャツを着用していたのである(パンツとストッキングは黒だった)。

ファンやメディアの目には触れないが、スタジアム外の専用車両に設けられたVOR(VARオペレーションルーム)でVARを担当する2人のレフェリー、鶴岡将樹氏と熊谷幸剛氏も、ピッチ上の4人のレフェリーと同じ黄色のシャツを着ていたはずである。

■野澤大志ブランドンの「黄色」はルール逸脱

競技規則第4条(競技者の用具)の第3項に「色」に関する規定があり、3項目の規定が明記されている。

・両チームは、お互いに、また審判員と区別できる色の服装を着用しなければならない。

・それぞれのゴールキーパーは、他の競技者、審判員と区別できる色の服装を着用しなければならない。

・両チームのゴールキーパーのシャツが同色で、両者が他のシャツと着替えることができない場合、主審は、試合を行うことを認める。

上記文章は現在発行されている日本語版の「サッカー競技規則2023/24」のものだが、すでに発行されている英語版の「2024/25」版のこの項目はまったく変更がないので、当然のことながら、これから発表される「202/25」の日本語版も、同じ表現が使われることになるはずだ。

すなわち、両チームのGKは、両チームのフィールドプレーヤー、レフェリーとかぶらず、なおかつ互いに違う色のウェアを着用しなければならないというのが、ルールなのである。文面を素直に解釈すれば、優先順位はレフェリーのほうが高い。これを厳格に解釈するなら、FC東京の野澤は「青赤」でも「白」でも、「黄色」でも、そして「黒」でもない、たとえば「水色」などのウェアを着なければならなかったのである。「黄色」は明らかにルールを逸脱している。

■簡単な解決方法は「レフェリーの黒シャツ」

私は野澤やFC東京を非難するつもりはない。もっと簡単な解決方法があったはずだからだ。とてもシンプルな解決法である。レフェリーが黒のシャツを着ればよかったのだ。

Jリーグのレフェリーには、シーズン前に何色ものシャツ(パンツとストッキングはどのシャツ色でも黒を着用する)が配布され、試合のときには指定された色のシャツを持参する。同時に各クラブにも予備のウェアが配布されており、万が一の場合には、ホームチームが用意したものを着用する。当然、黒のシャツも用意されている。

そもそも、サッカーの審判員のウェアは全身黒が定番だった。これは、レフェリーというものが、そもそも観客席のしかるべき紳士に「このプレーはどう判定を下せばよいのでしょうか」と問い合わせをしたことから始まっている。19世紀後半の英国で紳士と言えば着用しているのは「フロックコート」であり、フロックコートといえば「黒」と決まっていたのである。

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