【宝塚記念】Sadler’s Wells内包のブローザホーンを高評価 京都ならスレンダーな長距離実績馬が好相性

ⒸSPAIA

傾向解説

ディープインパクトが制した2006年以来18年ぶりに京都芝2200mでの開催となる宝塚記念。阪神芝2200mからは競馬場だけでなく、内回り→外回りにも替わるため、当然全体のペースも大きく変わってきます。本記事では京都芝2200mと阪神芝2200mの違いも含め、宝塚記念のレース傾向を整理していきます。

京都芝2200mと阪神芝2200mの大きな違いは前後半のペース差。これは過去10年のエリザベス女王杯を比較すると違いが明白で、京都芝2200mで行われた計7回、2014~19年と2023年の前後半1000m平均は61.4-59.4の後傾2.0秒。それに対して、阪神芝2200mで行われた2020~22年の3年間は同59.5-60.1の前傾0.6秒を計時しています。つまり、京都芝2200mではスローペースからの末脚勝負、阪神芝2200mではハイペースでの消耗戦が基本というわけです。

そして、これは馬体重にも大きな影響を与えています。データの通り、京都開催時は軽量馬の活躍が目立ち、逆に阪神開催時には馬体重510kg以上の馬が3戦で2勝。ここから、京都開催時の方が追走スピードが求められないためスレンダーな長距離馬が走りやすい、と考えることができ、同様の理由から長距離実績馬にも注目したいところです。

<京都開催のエリザベス女王杯 馬体重別成績(過去10年、単勝99.9倍以下)>
~439kg【1-2-0-9】勝率8.3%/連対率25.0%/複勝率25.0%/単回収率126%/複回収率126%
440~459kg【1-3-4-16】勝率4.2%/連対率16.7%/複勝率33.3%/単回収率28%/複回収率71%
460~479kg【4-2-1-26】勝率12.1%/連対率18.2%/複勝率21.2%/単回収率63%/複回収率73%
480kg~【1-0-2-17】勝率5.0%/連対率5.0%/複勝率15.0%/単回収率27%/複回収率26%

<阪神開催のエリザベス女王杯 馬体重別成績(過去10年、単勝99.9倍以下)>
~439kg【0-1-0-3】勝率0.0%/連対率25.0%/複勝率25.0%/単回収率0%/複回収率290%
440~459kg【0-1-1-5】勝率0.0%/連対率14.3%/複勝率28.6%/単回収率0%/複回収率155%
460~479kg【1-0-0-10】勝率9.1%/連対率9.1%/複勝率9.1%/単回収率73%/複回収率30%
480kg~【2-2-1-13】勝率11.1%/連対率22.2%/複勝率27.8%/単回収率378%/複回収率141%

血統面ではSadler's Wellsなど、欧州の主流血統に注目。京都芝2200mは直線距離が長いコースでの芝中距離戦のため、ディープインパクトなどのサンデーサイレンス系が強いことは間違いありません。ただ、前述の通り長距離馬が走りやすい条件でもあるため、欧州の主流血統からスタミナを強化された馬に向くレースというわけです。

コース改修後の京都競馬場においても優秀な成績を収めており、重賞でも2023年エリザベス女王杯では5番人気のルージュエヴァイユが2着と好走し、今年の京都新聞杯でも該当馬が2~3着。宝塚記念でも大注目の血統といえるでしょう。

<京都芝2200m Sadler's Wells内包馬の成績(2023年以降、単勝99.9倍以下)>
該当馬【3-4-3-14】勝率12.5%/連対率29.2%/複勝率41.7%/単回収率143%/複回収率119%

血統解説

・ドウデュース
母ダストアンドダイヤモンズはダート短距離の北米重賞勝ち馬で、父ハーツクライにスピードを強化した典型的な成功パターン。ただ、その分500kg強の雄大な馬格を有しており、馬体が完成した現在はスピードを発揮しやすい舞台の方が持ち味が生きそうです。京都芝2200mも苦にすることはないでしょうが、相対的には高速馬場の方が良いでしょう。

・ジャスティンパレス
母パレスルーマーはアメリカで2013年ベルモントS勝ち馬パレスマリスを出し、日本でも2023年ステイヤーズS勝ち馬アイアンバローズなどを出すスタミナ豊富な繁殖牝馬です。本馬は父にディープインパクトを配し、470kg前後の馬体重からも超長距離適性の高さは現役屈指。今回は距離短縮が課題ではありますが、京都芝2200mの宝塚記念なら無理なく脚をタメることができそうです。

・ブローザホーン
母オートクレールはデュランダル×フォーティナイナーのスピードタイプで、現役時代には1600m以下で4勝を挙げた活躍馬。ただ、エピファネイアを父に配した本馬は馬体重420kg台の小柄な馬体で、前走の天皇賞(春)では上がり最速の末脚で2着まで追い込みました。注目血統Sadler’s Wellsの血も内包しており、ジャスティンパレス以上に京都開催の宝塚記念はプラス材料となるピュアステイヤーです。

ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。



© 株式会社グラッドキューブ