紙印刷は減ってもTOPPANホールディングスは3期連続増収 エレクトロニクスが牽引役に

東京都文京区の新本社(C)日刊工業新聞/共同通信イメージズ

【企業深層研究】

TOPPANホールディングス(下)

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TOPPANホールディングスの本社は長らく東京・千代田区の秋葉原駅近くにあった。しかし2021年4月、文京区のトッパン小石川ビルに本社機能を移した。飯田橋から江戸川橋に向かっていくと右側に見える近代的なビルが新本社だ。

この本社ビル内にあるのが「印刷博物館」。ここには奈良時代印刷された「百万塔陀羅尼」という、現存する世界最古の印刷物が収められている。それ以外にも歴史的印刷物があり、ここに来れば印刷の歴史を目の当たりにすることができる。

このように日本の印刷業を牽引してきた凸版印刷から、「印刷」を外してTOPPANホールディングスに生まれ変わったのは昨年10月のこと。これは、印刷の枠にとらわれず事業領域を大きく広げていくとの会社としての意思を示している。

前回(6月19日付)、記したように、TOPPANの売り上げの中で、出版物の印刷はむしろ少数派。チラシなどを含めても紙印刷は全体の3割に過ぎない。人々の活字離れ、そしてメディアのデジタル化が進み、印刷需要は減る一方。しかしTOPPANの売り上げは、前3月期まで3期連続で伸びている。

家の床、壁、家具の表面シート、食品パッケージなどに使われる包装資材などの需要が増しているほか、半導体部材などが拡大している。

特に半導体を中心としたエレクトロニクス事業は、規模は全体の15%に過ぎないが、利益は半分を占め、業績の牽引役となっている。

具体的な製品としては、ディスプレーやイメージセンサー用のカラーフィルタ、ディスプレーの反射防止用などの機能性フィルム、半導体製造のためのフォトマスク、さらには半導体パッケージ基板などで、今後も成長が期待できる分野だ。

印刷とはまるで関係ないように見えるが、いずれも印刷で培ってきた微細加工技術がベースとなっている。このように印刷技術をデジタルやIT化に応用したのが今のTOPPANであり、それは今後ますます加速する。社長人事を見てもそれは明らかだ。

1981年以降、TOPPANには5人の社長が誕生している。そして現在の麿秀晴社長以外の4人はすべて文系。営業部門で頭角を現し、社長にまで上りつめた。

しかし麿社長は山形大学工学部出身。入社後しばらくは営業部門に配属されるが、その後、GLバリアという食品パッケージに使われるフィルム開発に携わる。現在、このフィルムは世界シェア3割を誇るヒット商品となっている。

研究・開発部門を経て、役員となってからはICT部門を統括し、5年前に社長に就任、そして昨年、社名変更に踏み切った。

「印刷テクノロジーをさらに進化させる」と麿社長。社長のトップダウンのもと、TOPPANのデジタル化はさらに進んでいくのは間違いない。いずれTOPPANが印刷会社であることを認識しない世代が入社する時代がくる。その時、TOPPANはどんな会社になっているのか。

(真保紀一郎/経済ジャーナリスト)

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