今年の夏はどこへ出かけよう? 古今亭駒治さんと徳永ゆうきさんの「夏のおすすめ列車旅」

列車旅は色々な楽しみ方があっていい

『JR時刻表』2024年7月号(6月20日発売)「巻頭特集」にて、事前に考案いただいた旅程と時刻表を見ながら、列車旅の妄想を語り合っていただいた古今亭駒治さんと徳永ゆうきさん。誌面に載せきることができなかったエピソードを、フルバージョンとしてお届けします。

『JR時刻表』×トレたび 連動企画です。

詰め込みたい! 乗り鉄と、のんびり旅の写真好き

徳永ゆうき(以下「徳」) うわっ、駒治さんの旅程は濃密ですね〜。僕の、余白ありすぎ?

古今亭駒治(以下「駒」) 今回は、そんなでもないです(笑)。“青春18きっぷ”の旅でも、詰め込めるだけ詰め込んで朝から晩まで乗り続ける乗り鉄なんで、僕。

徳 それにコースがマニアック……。


駒 へへへ。水戸線に両毛線。鉄道好きも、あえて目指して乗らない路線ですよね。妻の実家が群馬県の伊勢崎なんで、毎年お盆に帰省するんですよ。両毛線に乗ると、前橋から伊勢崎あたりで赤城山が大きく見えるところがあるんです。関東平野のはじっこを走ってる感じが、すごく好きでね。水戸線は筑波山の反対側を走るので、下館あたりでいきなり山が現れるんですけど、それが月の裏側みたいに見えて面白いんです。

徳 月の裏側か〜。

駒 テーマは、「灼熱の関東平野から高原へ」です。正直言うと、徳永さんのゆったりプランに、僕もそろそろシフトしたい年頃です。妻も何回か僕の鉄道旅について来ましたけど、地獄みたいな顔してました。白目むいて、最後激怒。

徳 ワハハハ。僕は鉄道好き、かつ写真好きなんで、その日パッと起きて行きたいところを決めて、旅程を組むんです。デビュー当時、カピバラに似てるって言われて、カピやんってキャラを作ったんです。なんで今回は、シャボテン公園でカピバラ撮ろ!と。行きと帰りで伊豆特急の乗り比べをやって「伊豆を満喫」の旅です。

駒 伊豆は子どもの頃、熱川バナナワニ園 に行った〜。他にも撮影スポットがありそうですねえ。

徳 大室山(おおむろやま)っていう抹茶ティラミスみたいな山があるので、その夏山と伊豆高原駅の車庫でも写真を撮れたらなって。THE ROYAL EXPRESSに黒船電車やキンメ電車(いずれも伊豆急2100系)、JRの209系電車も入りましたから。車両の連結・切り離しとかも見られたら、テンション上がります!


徳永ゆうきさんの旅程では特急〔サフィール踊り子〕にも乗車(写真提供/交通新聞クリエイト)

フィーチャーされるのはいつも海。それでいいのか?


車窓からも伊豆の夏を楽しめる(写真提供/徳永ゆうき)

駒 伊豆急といえば、座席が海側を向いてる列車に落語家仲間と乗った時、「これじゃ山が、可哀想じゃねえか?」って誰かが言って。あ、確かにそうだって。それから意識的に逆の山側も見るようになりました。

徳 やっぱり海側座っちゃうんですよね。鉄道旅って海がフィーチャーされがち。でも山は山で冬は雪、秋は紅葉、夏は新緑で春は桜。季節ごとに違う顔を見せてくれる。撮影は一回では終わらないんです。

駒 そうですよね。逆に、海に絶対行かないというコンセプトで考えてみましょうか。たとえば姫新線で姫路と中国山地の真ん中だけ通るコースとか……。あと僕の個人的な活動でJRの前駅(全国の「○○前駅」に行き、○○と駅との距離を実測中)を巡るコース。どっちにしてもすごい時間かかりますね〜。できればやりたくない(笑)。

徳 僕は関西出身なんで、夏休みは、兵庫の須磨あたりでJRと山陽電車の並走とか見に行きたいですね。山電で姫路に遊びに行くと、明石海峡や淡路島も見えるし、区間によっては山電が上走ったり、JRが上走ったり、めっちゃ楽しい。ただ速度は、やっぱりJRには勝てないんですけどね。夏は海水浴場のにぎわいも見られますよ。あ、結局海の鉄道旅になってるやん。

駒 あははは。“青春18きっぷ”は使われることあります?

徳 一度、ラジオ番組の生放送で、“青春18きっぷ”で東京から大阪の実家、西九条まで帰省できるかというのをやったんです。東海道本線に乗って、中継のたびに降りるんですけど、静岡なんかは時間がかかるから、県内だけで5 回くらい途中下車。「さあ三島駅にやってきました!」とかって。間に合うかドキドキやったんですけど、無事10数時間かけて家に着き、父もラジオ出演を果たしました。


駒 僕も“青春18きっぷ”でよく関西に行くんですけど、ある時、『JR時刻表』の「さくいん地図」で関西本線ルートを発見。「あ、こっちもあるじゃん!」って。で、夏休みに乗ったら、木津川でキャンプや川遊びをしてる人たちがいっぱいいて、みんなで列車に向かって手を振ってくれたんですよ。うれしくて僕も振り返してね。以来、関西本線派です。

徳 しまった。僕も関西本線で生放送やったら、さらに「徳永マニアック」って思ってもらえたかも〜。

鉄道グルメ談義。「シウマイ弁当」への熱い希望


JR中津川駅構内の根の上そば・コーヒースタンド(写真提供/古今亭駒治)

駒 夏は、関西本線とつながる中央本線もいいですよ。多治見には秘境駅の古虎渓駅、中津川沿いには古い水力発電所がいっぱいあるし、中津川駅の構内には、レトロな立ち食いそば屋さんと喫茶店が並んであるんですよ。そこから塩尻駅を経由して、勝沼で日が暮れるようにすると、甲府盆地のすばらしい夜景も見られます。

徳 そばと喫茶をはしごしてからの夜景。いいですねえ。僕、撮るためだけに電車に乗ったりするんで、意外と食事情報は弱いんです。

駒 それなら小淵沢の丸政そばが出してる「醤油鶏弁当」は、伊勢丹新宿店でも買えますよ。あと高崎に行ったら群馬で超有名な登利平のお弁当も駅ビルで買えます。甘辛く煮た薄切りの鶏肉がご飯の上一面に乗ってるお弁当で、これがもう本当においしい。


徳 覚えとこ〜! 僕はお弁当と言えば、崎陽軒。どこか行く時は「シウマイ弁当」プラス、12個入りの「特製シウマイ」を買って、追いシウマイします。

駒 追いシウマイ!?

徳 そうなんです。ファンとしての切望なんですけど、俵型のご飯8個やから、シウマイもぜひ8個欲しい(現在5個)。せっかく入れてくれてる蒲鉾(かまぼこ)、玉子焼き、鶏の唐揚げは、僕はなくても良くて……。高校時代、おかんに下はご飯のみ、上は全部シュウマイの二段弁当をせがんで作ってもらったくらい、シュウマイ好きなんで。毎回、シウマイの数増えてへんかなあ〜って思いながら蓋開けてます。「シウマイ弁当」と名乗るのだから、シウマイのみ敷き詰めてもらっても問題ない。

駒 願ってる人、いる!

徳 と言いつつ、「シウマイ弁当」で一番最初に食べるのは甘い筍(たけのこ)煮なんですけどね。

駒 アハハ。僕も同じく。


音鉄談義。吊り掛けモーターと貫禄のディーゼル機関車

徳 ちなみに僕は撮影好き、シウマイ好き、あと鉄道のモーター音や駅メロとか鉄道全体の音が好きな音鉄でもあるんですけど、駒治さんは、鉄道で好きな音あります?

駒 僕は吊り掛けモーターの音が好きですねえ。

徳 吊り掛け〜!

駒 父の実家が東急池上線沿いだったんで子どもの頃からしょっちゅう乗ってたんです。当時は大体、3両編成の緑の電車。発車する時に、吊り掛けモーターが「う゛〜〜〜〜〜」って重低音を響かせるんです。やがて超高音になり全力で走り出す。壊れるんじゃないかって思うくらいの勢いで。吊り掛けモーターは、今はほぼないんですけど、愛媛県のJR松山駅の先、伊予鉄(伊予鉄道)が吊り掛けの宝庫なんですよ。車内の音が聞こえないくらいの大きい吊り掛けの車両が一つあって、聞くたびに胸に迫り来る感動……!

徳 うわあ、めっちゃわかります。僕はVVVF世代なんですけど、モーターは音も振動もいいですよねえ。

駒 徳永さんが一番好きな音は何ですか?

徳 僕は、国鉄型のディーゼル機関車の音。子どもの頃、父親に大阪駅に連れてってもらって何時間もディーゼル機関車が来るのを待ってました。黒い煙をはきながら、「んぐぁぐぁぐぁ〜!」っていう力強い音で現れて、出る時の加速はゆっくり。当時、ちっさい体の自分にとっては、ディーゼル機関車は堂々とした王者の貫禄なんですよ。

駒 ああ、いいなあ。

徳 大阪駅からは、鳥取方面に向かう特急〔はまかぜ〕とか特急〔スーパーはくと〕、それから当時はブルートレインも走っていたし、寝台特急〔なは〕に寝台特急〔トワイライトエクスプレス〕〔日本海〕、寝台急行〔銀河〕なんかが、時々雪つけて来ると、どっから来たんやろう!? すっごい音立ててどこ行くんやろう!?って。あの時のワクワクした感覚は今もめっちゃ残ってます。


ディーゼル機関車で牽引される寝台特急〔トワイライトエクスプレス〕(写真提供/交通新聞クリエイト、2010年撮影)

駒 東と西と、それぞれ忘れられない思い出ですねえ(笑)。音でいうと、アナウンスも面白いですよね。東京の電車は、「扉が閉まります」。関西の電車は、「扉を閉めます」。

徳 あと関西は、「○○行き快速電車〜」と先に行き先を言うけど、関東は「快速◯◯行き〜」、種別を先に言う。

駒 鉄道は、西と東の違いもまた楽しい。

徳 新大阪駅に着いて、在来線に乗り換える時、「たりらりらりらりら〜ん♪」っていうJR の到着メロディを聞くと、僕は「はい、ただいま!」ってなります。

駒 僕は、「わあ、違うとこ来たぞ! 旅してるぞ!」ってうれしくなります。



古今亭駒治

落語家。1978年、東京都渋谷区生まれ。玉川大学卒業後、古今亭志ん駒亡き後、古今亭志ん橋に移門。自作の新作落語でブレーク。中でも、「鉄道戦国絵巻」をはじめとする鉄道落語で新たな落語ファンを獲得。全国に約340あるという「◯◯前駅」の調査は9割超完了。


徳永ゆうき

演歌歌手。1995年、大阪市此花区生まれ。幼い頃から歌謡曲一直線で育ち、2013年「さよならは涙に」でデビュー。テレビ番組にも多数出演し、NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」など役者としても活躍。10周年記念アルバム「徳永がくる」を好評発売中。




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  • ※取材・構成=さくらいよしえ、撮影(特記以外)=鈴木愛子
  • ※掲載されているデータは2024年6月1日現在のものです。

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