県南の活性化へ「経済連携協議会」設立 八代・人吉・水俣の3商議所 「南北格差」是正目指す

熊本県南経済連携協議会を設立した八代商工会議所の竹永淳一会頭(左)、人吉商工会議所の岩下博明会頭(中央)、水俣商工会議所の深水康之会頭=17日、八代市

 八代、人吉、水俣の3商工会議所は17日、熊本県南全体の経済活性化と雇用確保に向け、「熊本県南経済連携協議会」を設立した。自治体単位の枠を超えた活動を増やし、経済や人口面で指摘される「南北格差」是正を目指す。複数の商議所による経済団体設立は県内初という。

 協議会は当面、3商議所で構成するが、県南地域の他の経済団体への拡大も検討する。観光や雇用など分野別の部会を設ける。県の県南広域本部や芦北、球磨の両地域振興局に加え、八代、人吉、水俣3市がアドバイザーとして参加する。

 今後の活動内容として、県の「くまもと県南フードバレー構想」強化や観光情報の共有、発信なども発表。人手不足解消や人口減少対策につながる雇用の確保でも協力する。

 この日は八代市役所で発足式があり、八代商工会議所の竹永淳一会頭(67)、人吉商工会議所の岩下博明会頭(89)、水俣商工会議所の深水康之会頭(71)ら約40人が出席。代表に就いた竹永会頭は「県南の経済浮揚に向け一丸で取り組む」とあいさつした。

 各商議所の会員数(4月1日時点)は八代2092、人吉1080、水俣820。(河内正一郎)

熊本県南経済連携協議会の発足式=17日、八代市

 ◆消費拡大や観光振興…域内25万人のスケールメリットを

 八代、人吉、水俣の3商工会議所が17日に「熊本県南経済連携協議会」を設立した背景には、県南地域の現状への強い危機感がある。県北は台湾積体電路製造(TSMC)の進出に沸き、熊本都市圏も自治体間で連携を深める。3商議所の管内を中心とした県南15市町村の人口は約25万人。スケールメリットを域内の消費拡大や観光振興などに生かす考えだ。

 民間組織「人口戦略会議」が4月に発表した「消滅可能性自治体」に県南の9市町村が該当。「消滅可能性」を脱した人吉市も3月末、住民基本台帳の人口が初めて3万人を切った。

 TSMCの菊陽町進出に伴い、県北や熊本都市圏で関連企業の進出が相次ぐ。熊本市などでつくる「熊本連携中枢都市圏」は、発足当初の16市町村から20市町村に拡大。合同の就職説明会や移住促進に取り組む。

 八代商工会議所の竹永淳一会頭(67)は「県南でも熊本都市圏のような取り組みが必要」と、3年前から構想を温めて他の商議所と準備を重ねてきた。

 まずは昨年10周年を迎えた県の「くまもと県南フードバレー構想」の活性化に力を入れる。豊富な農林水産物を生かし、食関連の研究開発を促す内容だが、商品や構想自体が県南の企業や住民に浸透し切れていないと分析。会員に地域の枠を超えた商品開発を呼びかけ、県南の食や酒を周知して消費額の増加を目指す。

 観光では、八代市の妙見祭や人吉市のおくんち祭、水俣市の恋龍祭といった行事を相互に情報発信し、交流増を狙う。雇用でも、合同の企業紹介などを検討し、若者の確保を図る。

 竹永会頭は「これまでは自治体単位の活動になりがちだった。協議会設立を機に、県南で経済が回る仕組みをつくりたい」と意欲を見せた。(河内正一郎)

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