76歳・キャディ界のレジェンドに突撃!松山英樹のキャディがその凄さを語る

ツアーキャディに定年退職はないが“力仕事”のような一面もあるため高齢になるとキツい。しかしPG Aツアーには、76 歳でもバッグを担ぐレジェンドキャディがいる!

いまだ現役! 76 歳のレジェンドキャディ

フラフとC.T.パン(左)。ゴルフファンなら、この白い口髭を見るとすぐに思い出すだろう。C.T.パンは台湾出身の32歳。19年「RBCヘリテージ」でPGAツアー初勝利を飾り、今季は2月のメキシコオープンで3位タイに入った

今年のPGAツアーがハワイで開幕して以来、台湾のC・T・パン選手(以下、CT)に注目が集まっている。その理由は、CTのバッグをマイク・コーワン、通称〝フラフ〞が担いでいるからだ。

フラフは、タイガー・ウッズが1996年にツアーデビューをしたときの初代キャディで「白い口髭がトレードマークのおじいさん」といえば、覚えている人も多いだろう。最近は、ジム・フューリックのキャディを務めてきたが、フューリックが今シーズン戦線離脱したため、過去に何度かバッグを担いだ経験があるCTのキャディをしている。

現在76歳のフラフは、キャディ界のレジェンドとして日本人キャディからも一目置かれている。ザ・プレーヤーズ選手権3日目、松山英樹はCTと同組になった。松山は68、CTは70でプレーを終了したラウンド直後、松山のキャディである早藤翔太を取材。

早藤キャディに「ちょっと話を聞かせてくれるかな?」と声をかけると「プロ(松山)が練習場に行くかもしれないので、歩きながらでもいいですか?」とのこと。「もちろん。質問は、今日一緒にプレーしたCTのキャディ、フラフについてなんだけど……」と説明すると、早藤キャディは急にうれしそうな表情をして、その場で立ち止まって話をはじめた。

「あれ? 練習場は?」と思いつつも、同じキャディ、しかも76歳という高齢ながら第一線でキャディをするフラフに対するリスペクト(尊敬)から、話すのがうれしいのかもと思い、そのまま話を聞いた。

「失礼なことをいってしまいますが、フラフと同組になって最初は『僕がCTのバッグも担いでいかないといけないのかな?』なんて思いました。でも、いざプレーに入ったら全然違う。ほかのキャディなんかよりもむしろ動きがいい! すごいです」(早藤)

CTにフラフと並んでの写真をお願いすると「フラフにOKをもらわないとダメなんだよ」と、ジョークをいいながら、うれしそうに記念撮影に応じてくれたが、その直後には、早藤キャディも記念撮影をお願いしてきた。

2021年のマスターズで松山英樹が優勝したとき、最後にオーガスタナショナルの18番グリーンでコースに向かって深々と頭を下げた早藤の姿をマネておじぎするフラフ

するとフラフは、早藤キャディがマスターズで松山が優勝したときに見せた〝おじぎ〞をやってみせた。

そんな和気あいあいな雰囲気のまま練習場へと向かうフラフの背中(写真左)を見ながら、自分の親や、早藤のような若いキャディや選手なら自分のおじいちゃんよりも年上の人が、まだまだ現役でバッグを担ぐ姿をこれからも見続けたいと思った。

フォトグラファー 田辺安啓(通称JJ)
●たなべ・やすひろ/1972年生まれ、福井県出身。ニューヨーク在住。ウェストバージニア大学卒業後、ゴルフコース、テレビ局勤務を経験し、ゴルフを専門とするフォトグラファーに転身。ツアーのみならず、コースやゴルフ業界全般に関わる取材も行なっている。

取材・写真=田辺安啓
TEXT & PHOTO Yasuhiro JJ TANABE

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