仏様しばらく留守に 奈良市の興福寺北円堂の本尊「弥勒如来坐像」修理へ搬出作業

搬出のための作業で動かされる弥勒如来坐像=19日、奈良市登大路町の興福寺北円堂(代表撮影)

 奈良市登大路町の興福寺(森谷英俊貫首)で19日、北円堂の本尊「弥勒如来坐像(みろくにょらいざぞう)」(国宝・鎌倉時代)の修理に向けた搬出作業が行われた。同像本体の修理は1983(昭和58)年以来約40年ぶり、光背と台座を含めた修理は約90年ぶりとなる。

 美術院の作業員ら7人が本体、光背、台座上部・下部に分け、白い布に綿布団を巻き込んで保護した後、トラックで奈良国立博物館にある美術院の修理工房に運ばれた。本体の金箔(きんぱく)の剥落止めや光背の緩み補正、台座の虫食い修復などを行う。2025年3月に修理を完了し、北円堂に戻る予定。

 同像は仏師運慶の晩年の作とされ、高さ約142センチの寄せ木造り。1934(昭和9)年に行われた修理では、胎内で年号(1212年)を記す納入品が見つかった。

 同寺学芸員で境内管理室次長の多川文彦さんは「無事に修理を終えて戻られることを願っている」と話した。本尊の修理に伴い、毎年10月の北円堂秋の特別公開は実施しない。

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