なぜ巨人・ヘルナンデスは日本の野球に対応できているのか シーズン途中の緊急補強 珍しい成功例

 日本野球に適応し、活躍をみせるヘルナンデス

 巨人の歴史をひもといても、珍しい成功例と言っても過言ではないだろう。緊急補強で入団したエリエ・ヘルナンデス外野手(29)のことだ。交流戦で打線の中心に君臨し存在感を発揮した。巨人がシーズン途中に獲得した入団1年目の外国人野手が活躍するのは“レアケース”。日本の野球に対応できている理由に迫った。

 いい意味で期待を裏切った、と感じている。巨人が5月に獲得した新外国人のヘルナンデス。メジャー通算14試合の出場で打率・182、0本塁打。年俸は高額とは言えない5000万円(金額は推定)だが、抜群の成績を残している。5月28日・ソフトバンク戦(東京ド)で来日初出場を果たすと交流戦で全18試合に出場し3本塁打、10打点。打率・342はセ・リーグトップ(交流戦全体は5位)の数字だ。

 巨人がシーズン途中に緊急補強したケースで、投手では昨年のバルドナードという成功例もあるが、野手では歴史的にも珍しいケースだ。チームでは今年、メジャー通算178本塁打の大砲として期待したオドーアが日本で全く結果を残せず、開幕直前に電撃退団するショッキングな事態も起こった。それを払拭(ふっしょく)するほどの存在感を発揮している。

 新助っ人について、阿部監督は「対応力はすごくいい」と褒めている。日本の野球に順応できているのは、その性格面も無関係ではない。来日にあたり、ヘルナンデスは「いろんなチームメート、一人一人に日本の野球はどういう野球か聞いてアドバイスをもらっている」と語った。

 「スモールベースボール」といわれる小技を含めた日本の野球を学んだだけではない。「野球に関すること全て聞いたつもりです。特に日本のピッチャーの特徴であったりとか、いろんな話をした」。レベルが高いといわれている日本の投手。その情報を同僚から熱心に収集した。

 ヘルナンデスについて巨人の関係者やスタッフは「真面目でナイスガイ。研究熱心」と口をそろえる。そして球団が用意した日本野球のデータも「受け入れている」とし、視野が広く、柔軟な発想に感心する声も上がっている。

 多くの同僚とコミュニケーションを取っている中、「坂本選手から『チームへ、ようこそ』と声をかけていただいた。それが一番、印象に残っています」と笑顔で明かした。ドミニカ共和国出身の助っ人は言う。「(日本は)初めての環境だったので最初から質問は、いろんな人に何でも聞いて、一日も早く適応しようという心構えで来ました」。常に貪欲な姿勢で取り組む男。今季は貧打に苦しんできた巨人だが、その中で今後も“カンフル剤”になる可能性は高い。(デイリースポーツ・伊藤玄門)

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