重低音イヤホンの定番、オーディオテクニカ「SOLID BASS」シリーズ。今回紹介する「ATH-CKS30TW+」は、その完全ワイヤレスイヤホンのラインナップに今夏投入される新モデルだ。直販税込13,970円。
SOLID BASS完全ワイヤレスのラインナップはこれまで、税込9,900円の「ATH-CKS30TW」、税込18,480円の「ATH-CKS50TW」の2モデル構成だった。型番からわかるようにATH-CKS30TWベースの強化モデルとなる。
注目すべきポイントは、ずばりノイズキャンセリング機能の搭載だ。それによって本機自体が重低音完全ワイヤレスのエントリー機として強化された。
■重低音イヤホンに新たな選択肢。コンパクトボディに必須機能満載
ATH-CKS30TWは2022年10月の発売から今も、SOLID BASS完全ワイヤレスのエントリーモデルの役割を担っている。現時点においても重低音TWSとしての魅力に衰えはないが、ノイズキャンセリングは非搭載。
ではノイキャンがほしくて予算的にもいけるならノイキャン搭載の上位機ATH-CKS50TWにすればよいかというとそうでもない。両機には、前者のコンパクトさ、後者のイヤホン単体約20時間再生など、使い勝手の面での違いもあるからだ。「重低音が好きだからSOLID BASSがほしい!身軽に持ち歩きたいからコンパクトなのがいい!騒がしい場所ではノイキャンもほしい!」というユーザーは、どちらを選ぶにしても何かは妥協しなくてはいけなかったのがこれまでの状況だった。
そこでATH-CKS30TW+の登場だ。ベース機ATH-CKS30TWからの最大の強化はノイキャン搭載。それ以外での違いは、スケルトンを含む最新カラバリへの更新、後述のサウンドスケープ機能やイヤホン紛失を防止する「置き忘れアラート」機能などを備える。
数々の機能を携えたうえで、「コンパクトなのがいいけどノイキャンもほしい」といったニーズもクリアー。SOLID BASS完全ワイヤレスイヤホンの新たな選択肢となり得るモデルとして発売されたわけだ。
価格も要注目。実はATH-CKS30TWも発売当時は税込13,000円前後だった。昨今の物価上昇の中でそれと同程度の価格での登場であるから、ATH-CKS30TW+はコストパフォーマンスも向上している。既存の通話&ヒアスルー用マイクを活用するフィードフォワード方式でノイキャンを実装しつつ十分な性能を確保するなど、最小限のコストで最大限のパフォーマンス向上を引き出す設計の成果だ。
■魅力的なカラーバリエーション、アプリ機能をさらにブラッシュアップ
ではATH-CKS30TWと共通の特徴から改めて確認していこう。
ドライバーは9mm径ドライバーを搭載。その背面に設置した音響スペースとダクトで空気の流れを制御してドライバーが素直に動きやすい環境を整え、キレのある重低音とバランスの良い中高域を実現。音質は同社アプリ「Connect」のプリセットイコライザー機能での調整もできる。本体3回タップ操作でお気に入りプリセットを呼び出せるようにも設定可能だ。
使い心地の面ではケースのコンパクトさが強み。カバンや服の小さなポケットにも収めやすい。
イヤホン本体は耳にフィットするフォルムで重低音再生に欠かせない密閉度、ノイキャンの土台となる遮音性、快適な装着感を確保。IP55の防水防塵仕様での安心感もポイントだ。
「Connect」アプリから利用可能な細かな機能や設定も見逃せない。タッチ操作への機能割り当てをかなりの自由度で変更できる「キーアサイン機能」や音量上下の細かさを変更できる「ボリュームステップ」は特に要注目。
そのほかマルチポイント対応や低遅延モード、マイク配置やサイドトーンによる快適な通話性能など、完全ワイヤレスイヤホンとしての基本性能の確かさも継承されている。
その上でのATH-CKS30TW「+」としてのノイキャン以外での新たな特徴は、まずはカラバリ変更。エバーグリーン、ライトベージュ、マットブラックに加えて、トレンドを取り入れたスケルトンだ。スケルトン以外は、質感の高さと滑りにくいという実用性を兼ね備えるマット仕上げが施される。
スケルトンは、邪魔になりがちな「CE」マーク等の印字をあえてイエロー系で目立たせることで、ミリタリーあるいはサイバーな雰囲気を醸し出しているのが面白い。
機能面では、リラックス効果のある自然音などを再生できる「サウンドスケープ」、イヤホン紛失を防止する「置き忘れアラート」に対応。これらは同社完全ワイヤレス最新世代の機能であり、SOLID BASSシリーズでは初搭載となる。
ウォーム&ナチュラルな重低音、「ATH-CKS30TW+」のサウンドキャラクターに迫る
■エッジを立てず、音色や響きを際出させる「普遍的な心地よさ」
最後に実機で体験したサウンドの印象について。本機を選ぶユーザーの場合はノイキャンオンでの使用が基本となるであろうから、その状態でチェックした。
重低音イヤホンというとゴツゴツとした骨太さやジャキジャキッとした鋭さを打ち出した派手な音が想像されるかもしれないが、本機はそれとは別タイプの重低音サウンドを聴かせてくれる。ウォーム&ナチュラルな重低音サウンド。それがATH-CKS30TW+の持ち味だ。
例えば星街すいせいさん「ビビデバ」のドラムスは、ヒップホップ的なキレキレ感よりも、バンドサウンドの生ドラムのように素直な音色や響きの方を際立たせる感触で描き出される。
強引なパワフルさではなく、しなやかなドライブ感によってリズムが推進されるのが心地よい。ベースも、アタック感やクリアさを強調するバキッとした音色ではなく、アンサンブルへの馴染みのよい音色に。中間部でボーカルがローファイ処理されるところでのその汚し成分にもアナログ的な柔らかさがあり、全体を通してのボーカルもそういったニュアンスだ。おかげで声が耳から心へと自然と入ってくる。
ベースにおいては、この楽曲でも他の楽曲でも、大柄な音像を躍動させて迫力を出しつつ、その音像が崩れたり膨らみすぎたりはしないようにまとめられていることもポイント。ローミッドに適度な膨らみを持たせつつサブベースはあえて響かせすぎないことで、重低音トータルのボリュームが飽和しないように調整されている。
最新ポップスの重低音に対応しつつ普遍的な心地よさも与えてくれるサウンドだ。なので例えば1960年代から70年代のロックの生々しい迫力の表現も得意だったりと、重低音という括りを超えたオールマイティーさも備えている。試聴時はイコライザーオフを基本としたが、それも使いこなせば万能さはさらに広がるだろう。例えば重低音イヤホンとしてのポテンシャルをさらに引き出して堪能したいのであれば、超低域をさらにプッシュする<Bass Boost-Deep>プリセットが活躍してくれるはずだ。
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結局のところATH-CKS30TW+の魅力としては、コンパクトさを筆頭とした使い勝手の良さとSOLID BASSサウンドだ。
コンパクトなデザインはそのままに、カラーバリエーション、使い勝手に磨きを掛け、音質へのこだわりも妥協はない。型番が示すよう、優秀なベースモデルにさらなる要素を「+」したATH-CKS30TW+。SOLID BASS完全ワイヤレスイヤホンを手に取るユーザーへ、新たな選択肢が追加されることを素直に喜びたい。
(提供:オーディオテクニカ)