ロ朝条約、侵略受ければ「遅延なく全ての軍事支援」明記 全文公開

Jack Kim Ju-min Park

[ソウル 20日 ロイター] - 北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は20日、金正恩朝鮮労働党総書記とロシアのプーチン大統領が19日に署名した「包括的戦略パートナーシップ条約」の全文を伝えた。一方が武力侵略に直面した場合、あらゆる軍事的支援を遅延なく提供すると定めた。

「一方が武力侵攻に直面し、戦争状態に陥った場合、国連憲章51条とそれぞれの国の法律に従い、保有する全ての手段で軍事的およびその他の支援を遅延なく提供する」と明記した。国連憲章51条は加盟国の個別的、集団的自衛権を規定している。

ロ朝条約はまた、両国が互いの利益を侵害するいかなる条約も第三国と締結せず、自国の領土がもう一方の国の安全保障と主権を害するために利用されることをいかなる国に対しても認めないと定めた。

同時に「戦争を防ぎ、地域および国際的な平和と安全保障を実現すべく、防衛力を強化する」目的で共同措置を取るとも規定した。

原子力の平和利用、宇宙開発、食料・エネルギー安全保障、人工知能(AI)に関する協力も盛り込んだ。

日本の林芳正官房長官は20日午前の記者会見で同条約に関連し、国連安全保障理事会の決議違反となり得る北朝鮮との軍事技術協力を排除しなかったことを「深刻に憂慮している」と述べた。

韓国も条約に軍事技術協力が含まれるのは遺憾だとした。

ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は、北朝鮮の兵器開発を阻止するために課せられたあらゆる制裁措置の「最もあからさまな無効化」を国連安保理の常任理事国であるロシアが容認したと批判した。

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長はロ朝条約について、権威主義陣営が足並みをそろえていることを示していると指摘した。

元韓国政府当局者で現在はソウルの峨山政策研究院に在籍する車斗鉉氏は相互防衛規定について、北朝鮮と旧ソ連が1961年に結んだ条約に類似していると指摘する。同条約はソ連が1990年に韓国と国交を樹立したことを受けて失効した。

車氏は一方で、国連憲章とロ朝の国内法への言及は解釈の余地があり、今回の合意が同盟に当たるかは不明だとした。その上で「金総書記がこの合意に全てを注ぎ込もうとしているのに対し、プーチン氏は消極的だ」と分析した。

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