どこで出会える!?「色気ある流れから飛び出した艶っぽい山女! きめ細かな肌にうっとり」

尺には届かないものの、素晴らしい引きごたえを味あわせてくれた夏ヤマメ。きめ細かな肌に見入ってしまいます(撮影:杉村航)

梅雨入り前なのにすでに真夏日、猛暑日になった地域もありますね。降水量の格差も大きく、水系によっては異例の渇水が続いています。

流域面積が日本一の川、利根川水系もその一つです。遡上してくる“戻り”や“サクラマス”など、良型のヤマメ、銀鱗麗しい魚を狙って何度か訪ねましたが、なかなか顔を見ることができません。それでもヤマメたちの付き場を探して、再び東奔西走ならぬ上奔下走の本流フライフィッシングに行ってきました。

■上か下か? 深夜のコンビニは虫たちの溜まり場

日没の頃、川面には虫たちが飛び交っていました。目を凝らしてライズを探している時間もまた楽しい

まずは前日の午後に渋川市周辺のポイントに到着したのですが、夕方に川辺で出会った釣り人たちによると、どうも今年はそのエリアの状況が芳しくないそうでした。話しかけると、遠方(長野)から来た筆者に皆さんは場所を譲ってくれようとするのですが、日常の楽しみを横取りするのも申し訳なく遠慮させていただきました(僕自身も自分のホームリバーだと同じ行動をしますが、最近の釣り人は親切ですね)。

翌日、さらに利根川に沿って上流、沼田市の外れへと移動してみました。利根川は上流部にいくつもダムが設けられているため、雪代ですらコントロールして貯水しているようで、単純に降水量だけでは水量を推し量れない川です。積雪量が少なく、さらに小雨が続いているにも関わらず現状で貯水率がそれほど低くないのは、下流域への水の供給を制限している証でもあります。

深夜、喉が渇いて川のそばのコンビニに立ち寄ると、ヒゲナガ(カワトビケラ)が大量に集まっていました。おびただしい数で、力尽きて床に落ちた虫たちを店員が箒で掃いているほどでした。実はこのヒゲナガは幼虫(クロカワ虫)を含めて渓流魚たちの大好物で、これを模したフライパターンでいい釣りを何度となく味わっています。なんだか、明日の釣果への希望が湧いてきました。釣り人は楽観的ですね。

■色気のある流れに潜む美形ヤマメ!

本流での釣りは、コンディションに合わせたポイント選びが決め手となります。とにかく、その場所だけでなく前後(上下)の様子をある程度見て回るのが常なのですが、気がつくと上流に行ったり下流へ戻ってみたりと、釣りをするより観察に時間を割いてしまい、釣りをすることなく川見で終わる日もあります。

翌日、早朝に竿を出したのは、本流に支流が合流するポイントでした。低水位状態だからこそ、対岸寄りのヨレた流心付近まで近寄ることができました。足元の石の裏には(昨晩、近くのコンビニで大量発生していたヒゲナガの幼虫)クロカワ虫がうじゃうじゃいます。

ウグイスとホトトギスが交互に鳴く爽やかな朝、2つ結んだウェットフライをのんびりした気分で流し始めた数投目、突如やってきた鋭いアタリは確実にヤマメのものでした。流れもあって、なかなかの引きの強さに一瞬大物かとドキドキしましたが、ネットに入れてみれば25cmほどの魚でした。見事に流線型の魚体はヒレもピンと発達しており、泳力の確かさを感じさせる野趣あふれるヤマメでした。ストマックの中身は案の定、ヒゲナガラーバ(クロカワ虫)の偏食でした。

流れが収束し合う、水色が濃くなっている箇所に色気を感じました。よく見ていると沈み石が水中の流れにリズムを刻んでいます。ウェットフライがスイングし終わった瞬間、誘われたように派手な水飛沫が上がりました。ドロッパー(枝ス)に結んだド定番、ロイヤルコーチマンを口元にしっかりと咥えていましたのは、整ったウロコが麗しい完璧ボディのヤマメでした。

タイミングが良かったのでしょう、美形ヤマメに出会うことができました

■期待のイブニング! 虫よりも魚よりも釣り人多し

日が高くなり釣りをやめたら、暑くなるまで水辺の生き物の観察に力を入れます。カワトンボたちに混ざって希少なアオハダトンボも見かけました

日中は川に立つ人の姿をほとんど見かけなかったのですが、夕暮れとともに涼しくなってくるとどこからともなく釣り人が湧いてきます(かく言う筆者もその一人ですが)。

毎日のように通っているというローカルによると、この日は特別人が多かったようです。当然、釣法は様々です。ルアーフィッシングが一番多く、その次にエサ釣り、そしてフライフィッシャーは、ほとんど見かけませんでした。「もう少しフライフィッシング普及して欲しいな」 そう思いつつ、しばらく観察していましたが、誰の竿も曲がる様子はありませんでした。

少し移動して昼間に目をつけていた別のポイントへ移動しました。大型のカワゲラが飛んでいる姿はなかなか勇壮で、50代の昆虫少年の心をくすぐります。一度アタリがあって心躍りますが、その後は何もなく暗くなってしまいました。もう少し待てばヒゲナガたちで活気付くのかもしれませんが、岩場、深瀬が連続して足場の悪いところが多いので、大事をとってその場を後にしました。少しまとまった雨が降らない限り、本流の釣りは厳しそうです。

© 株式会社双葉社