UiPathが新たなLLMを発表――AI搭載自動化製品のアップデートにて

by 藤本 京子

UiPath株式会社は19日、AI搭載の自動化製品アップデートに関する説明会を開催し、同社の新たな大規模言語モデル(LLM)や生成AIベースの新機能などを発表した。

UiPath プロダクトマーケティング部 部長の夏目健氏は、「オートメーションに生成AIを導入するにあたって重要な要素は、自社のビジネスに特化したコンテキスト、AIモデルの柔軟性、AIから返された結果に対するアクション、そして信頼性だ」と述べ、「UiPathではこれらの要素に合わせて製品開発を強化している」とした。

UiPath プロダクトマーケティング部 部長 夏目健氏
オートメーションに生成AIを導入する際の成功の鍵

新LLM「CommPATH」と「DocPATH」

今回UiPathが発表したアップデートのひとつに、同社独自の新たなLLM「CommPATH」と「DocPATH」がある。CommPATHは、コミュニケーションを分析する「UiPath Communications Mining」向けのLLMで、複雑なコミュニケーションを分析する。一方のDocPATHは、ドキュメントを処理する「UiPath Document Understanding」向けのLLMで、非構造化データや表などを含め、あらゆる文書をほぼ事前学習なしに処理するという。

CommPATHは6月中に一般提供の開始を予定しており、DocPATHは7月にパブリックプレビューを予定している。日本語対応については、「両LLMともに、現在日本のメンバーが検証を進めている。グローバルリリースからは若干遅れる見込みだ」(夏目氏)という。

UiPath Document Understandingの機能としては、200以上の言語に対応するOCRエンジン「UiPath Extended Language OCR」の日本語読み取り精度も大幅に改善された。同エンジンも近日中に一般提供が開始される予定だ。

新LLMの「CommPATH」と「DocPATH」

生成AIベースの機能「UiPath Autopilot」

「UiPath Autopilot」は、プラットフォーム全体にわたって生成AIを活用した機能群だ。今回UiPathでは、開発者向けの「Autopilot for Developers」と、テスター向けの「Autopilot for Testers」を7月にリリースすると発表した。

Autopilot for Developersは、プロの開発者や市民開発者が自然言語を活用し、自動化やコード、式を作成できるよう支援する。Autopilot for Testersは、手作業によるテストの負担を軽減し、テスト担当者がより多くのアプリケーションを迅速にテストできるよう支援するものだ。

夏目氏によると、両機能ともにすでに日本でのテストを終えており、「グローバルでのリリースと同時に日本語対応したAutopilotを提供する」という。

このほかにもAutopilotには、自動化の可能性を見つけ出す「Autopilot for Business Analysts」や、日常業務を支援する「Autopilot for Everyone」などが用意されており、今後登場する予定だ。

UiPath Autopilot

ハルシネーション対策となる「Context Grounding」

生成AIの利用において課題となるのが、存在しない情報をあたかも本当のように提供するハルシネーションだ。「企業が生成AIの活用をちゅうちょするのも、これが要因のひとつ」と夏目氏も指摘する。

そこで今回UiPathが新たに発表したのが、UiPath AI Trust Layer内の新機能となる「Context Grounding」だ。Context Groundingは、企業特有のデータで生成AIモデルを最適化し、レスポンスを改善する。

夏目氏はContext Groundingについて、「例えば、生成AIが学習していない社内のポリシーに関するデータや、業界に特化した専門的なデータなどを生成AIが検索できるようにし、その検索結果と生成AIが持つモデルの情報とを組み合わせることで、より信頼性の高い回答が得られるようになる」と説明する。Context Groundingは、現在プライベートプレビューとして利用可能だ。

Context Grounding

テーラーメイドなオートメーションを目指して

UiPath カントリーマネージャーの南哲夫氏は、「UiPathでは、『発見』『自動化』『運用』の3つのレイヤーで構成されるBusiness Automation Platformを提供している。発見の部分では、継続的にプロセスを最適化して自動化し、AIを活用して最も効果的な改善ポイントを特定する。自動化の部分では、AIを搭載したオートメーションにより、人とシステムをシームレスに連携し、仕事の変革を促進する。そして運用の部分では、信頼性の高いプラットフォームで、ミッションクリティカルなオートメーションプロジェクトを大規模に実行し最適化する」と、同社のプラットフォームを紹介する。

南氏は、UiPathがAIを搭載した自動化プラットフォームのリーディングカンパニーだと主張。この分野で顧客も含めさまざまなパートナーと協力し、「業種や業界に根ざしたテーラーメイドなオートメーションを提供できるよう、体制を強化する」と話す。また、同社が提供するオートメーションにより、「業務生産性向上を通じた労働力不足に貢献したい」と述べた。

UiPath カントリーマネージャー 南哲夫氏
UiPath Business Automation Platform

© 株式会社インプレス