序盤戦のカギ握る予選には注目 新人2人にとっての大きな分岐点、SUGOで迎える第3戦が今週末開催【スーパーフォーミュラ】

開幕戦を鈴鹿サーキット、第2戦をオートポリスで終え、スーパーフォーミュラは今週末、2024年シーズン第3戦を宮城県のスポーツランドSUGOで迎える。開幕戦を制したのは野尻智紀(MUGEN)で、ここ数年の戦績を考えれば実力通り。

第2戦では牧野任祐(ダンディライアン)がキャリア初優勝を飾ったが、昨年後半戦の安定した戦いぶりから筆者個人的にはチャンピオン候補だと思っていたので、特に驚くべき結果ではなかった。だたし牧野は開幕戦で1ポイント、野尻は第2戦で2ポイントしか獲得しておらず、選手権をリードしているわけではない。トップ5のポイント差はわずか4。つまり第3戦で5人の中の誰かが優勝すれば、1歩抜け出した存在となる。

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■今季初参戦の日本人ドライバー

その舞台がSUGOというは、実に興味深い。コース幅もエスケープゾーンも狭いSUGOでは、オーバーテイクシステムを搭載するスーパーフォーミュラでさえもオーバーテイクは難しい。したがって予選順位はいつも以上に重要。そしてその予選は、コース全長が約3.5kmと短いゆえタイム差がつきにくく、かなりの接戦となるはず。ちなみに昨年の予選Q2では、トップと8位との差はわずか約0.5秒だった。セッティング、アタックともにわずかなミスで順位は大きく落ちる。いつも以上にスリリングであり、序盤戦のカギを握る可能性もある今回の予選は必見だ。

そんな中、注目するドライバーのひとりが今季初参戦の岩佐歩夢(MUGEN)。日本人ドライバーだが、F1の強豪レッドブルチームの次期レギュラードライバー候補として、そのステップアップのためにスーパーフォーミュラでチャンピオンを獲得しようと日本に一時帰国した。つまり、2017年のピエール・ガスリーや昨年のリアム・ローソンと同じ立ち位置ということだ。2人はともに肩書通りの実力を発揮し、慣れない日本のサーキットを苦にすることなく複数勝利を挙げチャンピオンを争った。当然岩佐にも同等の活躍を期待したが、開幕戦では予選11位、決勝9位と見せ場を作れなかった。

だが、そこからの修正ぶりはさすが。第2戦では予選で2位に約0.3秒差をつけポールを獲得すると、決勝ではスタートでトップを譲ることになるも2位に最後まで踏み留まり、初表彰台を獲得。開幕戦ではまだスーパーフォーミュラのマシンに対する理解度が低かったようだが、その1戦で理解度を一気に高めた。岩佐は現在、3ポイント差のランキング3位。第3戦で引き続き速さを見せランキングを上げるのか、これまでとは特性の異なるサーキットが再び壁となるのか、チャンピオン獲得のためには重要な1戦となるだろう。

■SUGOという舞台で得るチャンス

そしてもうひとりの新人、開幕前から最もメディアが注目する女性ドライバーのJuju(TGM)。シーズン前のテストの状況から思えば開幕戦での戦いぶりには着実な成長が見られたが、第2戦でその流れはストップ。予選ではトップと約3秒差、決勝ではラップダウンを喫してしまった。“国内最高峰フォーミュラに参戦する実力に至っていない”という声が上がるのも致し方ない成績である。第3戦では起死回生を図らなければならないが、その舞台がSUGOというのは彼女にとってチャンスだといえる。

前述の通り、予選ではタイム差がつきにくい。セッティング、アタックともに100%を出し切ることができれば、自身最高位グリッドが獲得できる可能性はある。決勝ペースも同様にタイム差がつきにくいので、前にしっかりとついていけば相手のミスに乗じてオーバーテイクのチャンスも生まれるだろう。たとえ1度でも、真っ当に競り合った上でオーバーテイクを決めることができれば、筆者は少なくとも評価する。勝負強さは実戦でのみ培われる。彼女に関しては特に今、それが最も見たいシーンである。

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